「レートチェック」を境に急拡大した米ドル売り

CFTC(米商品先物取引委員会)統計による投機筋の米ドル・ポジション(非米ドル主要5通貨=円、ユーロ、英ポンド、加ドル、豪ドルのポジションから試算)は、1月23日の日米通貨当局による「レートチェック」が行われる前は小幅な買い越しだったが、「レートチェック」が行われた後から売り越しに転換、その後は1ヶ月程度で20万枚以上まで売り越しが急拡大した(図表1参照)。

【図表1】CFTC統計の投機筋の米ドル・ポジション(2022年~)
出所:LSEG社データよりマネックス証券が作成

この統計では、経験的に売り越しの20万枚以上は「行き過ぎ」圏となる(図表2参照)。その意味では、「レートチェック」を境に、短期間で一気に米ドルの「売られ過ぎ」懸念が強まるほど、米ドル売りが急拡大したということになる。

【図表2】CFTC統計の投機筋の米ドル・ポジション(2000年~)
出所:LSEG社データよりマネックス証券が作成

米ドル売りけん制を余儀なくされたベッセント

こうした中で、この「レートチェック」を主導したとされるベッセント財務長官自身が、「断じて米ドル売り介入を行っていない」と述べ、米ドル売り介入実施を否定した。その上で「強い米ドル政策に変わりない」と語った。客観的に見ると、米当局の「レートチェック」に対する米ドル売り反応が、ベッセント長官の予想以上だったことから、一転してさらなる米ドル売りけん制に動かざるを得なかったのだろう。

この一連の動きは、米ドルの地合いもかなり脆弱である可能性を感じさせるものだった。背景には、2025年のトランプ政権発足以降、トランプ米大統領の国際秩序を無視した言動への不信感をきっかけに「米ドル離れ」が広がっていることがある。その最初のクライマックスは、2025年4月、トランプ米大統領の相互関税発表をきっかけに起こった世界的な株価暴落「関税ショック」の最中に起こった株・債券・米ドルの「米国トリプル安」だっただろう。

この局面では米ドル暴落を回避したものの、その後も「米ドル離れ」は続き、きっかけ次第では米ドル安リスクが急拡大しかねない状況は変わっていない。そのことが、今回の「レートチェック」で再確認されたのではないか。以上のように見ると、米通貨当局が「レートチェック」から一段と踏み込んで、実際の米ドル売り介入に出動した場合、米ドル暴落のトリガーにもなりかねない。そのため、かなり慎重な判断が必要になるのではないか。

トランプ不信で広がる「米ドル離れ」=くすぶる米ドル暴落リスク

上述のように、すでにCFTC統計の投機筋の米ドル・ポジションは「売られ過ぎ」領域に達しているが、その内訳には偏りがありそうだ。足下で見ると、米ドル売りの対象の中心は対ユーロ(図表3参照)。その意味ではさらなる米ドル売り・ユーロ買い余地は限られる可能性もある。

【図表3】CFTC統計の投機筋のユーロ・ポジション(2010年~)
出所:LSEG社データよりマネックス証券が作成

一方で、豪ドルや円は対米ドルでなお買い越しが拡大する余地がありそうだ(図表4、5参照)。その意味では、対象通貨が変わる形で米ドル売りが続く可能性はあるだろう。トランプ政権が自ら招いた「米ドル離れ」が進む中、何かの拍子に米ドル暴落が起こりかねない。米当局が実際に米ドル売り介入を行えば、そのきっかけになるリスクもあるのではないか。

【図表4】CFTC統計の投機筋の豪ドル・ポジション(2000年~)
出所:LSEG社データよりマネックス証券が作成
【図表5】CFTC統計の投機筋の円ポジション(2005年~)
出所:LSEG社データよりマネックス証券が作成