現在のファンダメンタルズ:重要イベントが終わり雇用統計に向けた動きへ
先週(8月18日週)のレンジと終値(マネックストレーダーFXのBidレート)
・米ドル/円: 146.573円~148.774円 146.945円
・ユーロ/米ドル:1.15831ドル~1.17422ドル 1.17213ドル
・ユーロ/円: 171.121円~172.696円 172.244円
先週(8月18日週)の米ドル/円:パウエル議長講演でドル売りへ
先週(8月18日週)は、ジャクソンホールでのパウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長講演を前に目立った材料はなかったものの、為替市場では全般に米ドルが底堅い動きとなり、米ドル/円は週初の147円台前半から議長講演前には148円台半ばへと水準を切り上げての講演待ちとなりました。
講演内容は慎重に言葉を選んだという印象でした。2024年ジャクソンホール前からの経済の動きを振り返りつつ緩和に動く調整を行ったこと、現在の問題点として関税によるCPIへの影響が懸念される一方で、直近の雇用とGDPの減速を挙げ、政策の調整を正当化する可能性があると、今後の利下げ再開への可能性について言及しました。
講演直後から米10年債利回りは低下し、株式市場は緩和再開の流れがほぼ確定したことを歓迎しNYダウは史上最高値を更新しました。為替市場では米ドル売りで反応し、米ドル/円は一時146.573円と週間安値を更新後に147円に近づいての週末クローズとなりました。
9月FOMC(米連邦公開市場委員会)での利下げが濃厚という見方は以前から変わっていないとも言えます。一方で9月に入ると雇用統計やCPIの発表もあるため、あくまでもそうした数字を見た上で判断するというのがFRBのスタンスであることも間違いありません。現状の0.25%利下げの織り込み度は87%と、この1週間はほとんど変化がありません。
また年末時点での利下げ回数は2回(計0.5%)がコンセンサスとなっていて、今回の講演後でも3回まで見込む流れにはなっていません。引き続きトランプ米大統領としては利下げ圧力をかけ続けるのでしょう。しかし、9月から10月にかけての雇用情勢が予想よりも悪く、かつCPI上昇が抑えられているという状態でない限り、FRBとしては大きく舵を切ることは難しいと思われます。
また、注目度は低かったのですが、植田日銀総裁もジャクソンホールで講演し賃金に上昇圧力はかかり続けると発言しました。直接的な金融政策に対する発言はなかったものの年内利上げ思惑も強く、日米金利差縮小の動きが長期的な米ドル/円の円高圧力となっていくでしょう。
今週(8月25日週)は月末ですが、重要イベントの経過後で目立った材料もないことから、引き続き為替市場は米金利(10年債利回り)の動向を見ながらの動きが続きやすいと言えそうです。
先週(8月18日週)のユーロ/米ドル:パウエル議長講演で急反発
先週(8月18日週)のユーロ/米ドルは、基本的に米ドル/円での米ドルの動きと同様で、週初からジャクソンホールのパウエル議長講演までは米ドル高・ユーロ安の流れが続きました。週初には米ウ首脳会談も開かれましたが、現状では停戦合意には程遠いこともあり、特に材料視はされませんでした。
ジャクソンホール後の米ドル安の動きからユーロ/米ドルは1.17422ドルまで上伸後、やや押しての引けとなりました。先週(8月18日週)は米ドルの動きとして米ドル/円とユーロ/米ドルが似たような動きとなったこともあり、ユーロ/円は172円水準をもみあいの中心として方向感がはっきりしない一週間となりました。
ジャクソンホールではラガルドECB(欧州中央銀行)総裁の講演もありました。ラガルド総裁は中銀の独立性について言及し、暗にトランプ大統領のFRBに対する利下げ圧力を批判、パウエル議長を側面から支援した印象でした。
米ドル/円チャート(週足)、引き続き上値が重い
長期的な判断は週足で行いますので、まずは週足チャートをご覧ください。
・上昇トレンド=週足終値が移動平均線の上にある
・下降トレンド=週足終値が移動平均線の下にある
トレンド転換の判断はダマシを排除するため、2週連続で移動平均線を上回るか、下回った時にトレンドが転換したという見方をします。
週足チャートでは、米ドル高の流れこそ変わっていないものの、7月28日週のトンカチ(上ヒゲが長く実体が短い)以降は上値が重たい流れが続いています。3週連続で比較的値幅が狭くローソク足の実体部分も短めになっていること、またトライアングル(黄色)の中でレジスタンスが効いていることから、どこかで米ドル売りの動きが強まる可能性を意識しておくべきかと思います(図表1)。
短期的には日足チャートをご覧ください。
米ドル/円チャート(日足)、8月18日にゴールデン・クロスとなるも転換しやすい地合い
短期的な判断は日足で行います。
・買いシグナル=終値移動平均線が始値移動平均線を下から上に抜くGC
・売りシグナル=終値移動平均線が始値移動平均線を上から下に抜くDC
米ドル/円は前回のデッド・クロスが2日で終わり8月18日には改めてゴールデン・クロス状態となりました。しかし、ジャクソンホールで大きく米ドル/円が下げた動きもあり、いつデッド・クロスに転じてもおかしくない地合いです。週足チャートでも移動平均線との位置関係では米ドル買いではあるものの上値が重く、当面は方向感が出にくい流れの中で、米ドル売りを仕掛ける展開が出やすいと言えるでしょう(図表2)。
テクニカルには米ドル/円は長期、短期とも米ドル高ですが、個人的には米ドル買いには動かず、様子見もしくは上がったところで米ドルの打診売りで動こうと考えています。
ユーロ/米ドルは週足、日足とも上昇トレンドが続く
ユーロ/米ドルのチャートから見ていきます。
週足チャート(図表3)は移動平均線を上回った状態を維持し、2025年3月以降の上昇ウェッジの中で緩やかな上昇トレンドを継続している状況は変わりません。しかし、最近は高値を切り下げる動きが続いているため、上昇トレンド継続のためには日足チャートでのレジスタンスラインを上抜ける動きが必要です。
その日足チャート(図表4)では、ごく短期的にデッド・クロス状態を挟み、ジャクソンホール後の米ドル売りの動きで改めて8月22日にゴールデン・クロスが発生しました。すぐ上にレジスタンスライン(青)が位置していますので、今週(8月25日週)はこのラインを上抜けられるかどうかがテクニカルな注目点です。ここを上抜いてくると改めて年初来高値更新の芽が出てきます。
ユーロ/円は動きが鈍く
ユーロ/円です。
ユーロ/円は引き続き7月28日週の大陰線の足の中で高値圏でのもみあいを続けていますが、特に先週(8月18日週)は米ドル/円、ユーロ/米ドルとも対米ドルで似たような動きとなっていたため、ユーロ/円の動きは鈍くなりました(図表5)。
日足チャート(図表6)ではユーロ/円週足でのもみあいを拡大して見ているだけという感じですが、2本の移動平均線は8月21日にゴールデン・クロスとなり、比較的底堅い流れにあると見て良いでしょう。ただ先週引いた7月31日安値と8月13日高値とのフィボナッチ・リトレースメント(緑)が短期的なレンジの目安であることも変わらず、当面は171~173円のレンジでの横方向のもみあいになりやすい地合いです。
それでは今週も良いトレードを!
