・政策金利予想とインフレ期待にはかい離がみられる。雇用統計の結果も出て、年末に向けて利下げの見通しが固まりつつある。一方で、インフレ期待は高い水準で推移している。
・2025年後半にかけて、どのように見るべきか。名目金利は実質金利とインフレ期待から構成されている。実質金利には経済成長の鈍化により下押し圧力が続いている。一方、インフレ期待には関税、移民制限、米ドル安、商品市況などさまざまな上昇圧力がかかっている。
・関税転嫁を実施している企業の割合は一定程度あるが、現在は在庫を消化している段階であり、物価指標にはまだ反映されていないようだ。関税の影響が現れてくるのはこれからであり、一時的とはいえ、今後どのように価格へ転嫁されていくか注視する必要がある。
・不法移民の取り締まり件数は、トランプ政権移行急激に増加している。雇用統計の数値と照らし合わせるとそれなりのインパクトがある。5月、6月の雇用統計は大きく下方修正された。数字が低調な業種を見ると、建設業やサービス業など、移民労働者の多い分野が含まれている。雇用統計には推計値も含まれており、移民取り締まりの影響もあるのではないか。労働供給が減少することで、賃金が上昇する可能性に注意したい。また、農業部門でも雇用がひっ迫すると農作物価格に反映されるため、インフレ要因として注視が必要である。
・為替について。米ドル安が続く場合、物価上昇圧力が強まる。世界経済全体は堅調だが、米ドルから他通貨への分散が進む場合、米ドル安の際にはリビジョン(見直し)が上昇する傾向がある。
・世界経済は堅調に推移しており、これから年末にかけて、ピークを迎える時期に入る。そのため、商品市況(コモディティ)を通じて物価上昇圧力が高まることが予想されるのではないか。
・インフレ期待にさまざまな上昇圧力がある中、実質金利は低下しても、名目金利は高止まりする可能性がある。債券投資の観点からは、投資妙味は十分に期待できる。
・株式と債券の利回り差をみると、ゼロに近づいている。相対的に現在の債券は割安に見える。インフレ局面では債券投資には厳しい環境となるが、株式投資にとっては好ましい状況となる。債券も組み合わせることで、さまざまな経済シナリオに耐えられるポートフォリオを構築できるのではないか。
