先週(3月10日週)の振り返り=米ドル/円下落が146円台で一服

先週の米ドル/円はこの間の安値を更新し、146円半ばまで下落しました。ただその後は徐々に底堅い展開となり、一時は149円台まで反発する場面もありました(図表1参照)。米ドル/円は1月の158円から10円以上と比較的大きく下落しましたが、そうした米ドル安・円高へ戻す動きもそろそろ終わるのでしょうか。

【図表1】米ドル/円の日足チャート(2024年12月~)
出所:マネックストレーダーFX

これまでの米ドル/円の下落は、基本的には日米金利差(米ドル優位・円劣位)縮小に沿ったものでした。先週(3月10日週)は金利差縮小が一服となったことで、米ドル/円の下落も一息ついたことでしょう(図表2参照)。そして、もう1つ注目されたのは投機筋の動きです。

【図表2】米ドル/円と日米10年債利回り差(2025年1月~)
出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成

米ドル安・円高をリードしてきた投機筋の米ドル売り・円買いが一巡

ヘッジファンドの取引を反映するCFTC(米商品先物取引委員会)統計の投機筋の円ポジションは、最近にかけての米ドル安・円高の動きに沿う形で米ドル売り・円買いが拡大してきました。こうした中で投機筋の円買い越し(米ドル売り越し)は、3月4日には13万枚以上と、それまでの最高を大きく更新しました(図表3参照)。ただ、3月11日は前週からほぼ横這いの13万枚台にとどまりました。これを見ると、これまで米ドル安・円高をリードしてきた投機筋の米ドル売り・円買いが一巡したことで、米ドル安・円高も一服したという面もあったでしょう。

【図表3】米ドル/円とCFTC統計の投機筋の円ポジション(2025年1月~)
出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成

CFTC統計の投機筋の円買い越しは、2024年までの最高は7万枚でしたが、ここに来てその倍近くとなる13万枚以上に急拡大していました(図表4参照)。そのうえで日米金利差はなお米ドル優位・円劣位にあることを考えると、金利差的に不利な米ドル売り・円買いがさらに拡大するのは難しく、逆に「行き過ぎ」の修正が入りやすくなっている可能性があるのではないでしょうか。

【図表4】CFTC統計の投機筋の円ポジション(2010年~)
出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成

今週(3月17日週)の注目点=3月19日に日米の金融政策決定会合

日米金利差はさらに拡大に向かうか、それとも縮小が再開するのか

ここまで、なぜ先週(3月10日週)米ドル/円の下落が一息つくところとなったかについて、主に金利差と投機筋の動向をもとに確認してきました。ではこの先はどうなるかについて、金利差中心に考えてみましょう。金利差はさらに拡大に向かうか、それとも縮小が再開するのでしょうか。

最近にかけて日米金利差が大きく縮小したのは、米金利が低下傾向となる中で、それからかい離して日本の金利が大きく上昇するというやや異例といえる構図で起こったものでした(図表5参照)。その意味では、この先の日米金利差は日本と米国の金利を分けて考える必要があるでしょう。

【図表5】日米の10年債利回りの推移(2024年9月~)
出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成

日本の金利上昇の流れは続く可能性が高い

まず日本の金利上昇はまだ続くのでしょうか。日本の金利は、「世界一の経済大国」米国の金利の影響を強く受けることから、両者は連動するのが基本でした。その意味では最近にかけての両者の大きなかい離は異例と言えそうですが、異例な形での金利上昇に対しても、これまでの日銀などの見解からすると、特に懸念している感じはなさそうです。今週(3月17日週)は日銀の金融政策決定会合がありますが、それまでに日本の金利上昇が急加速しない限り、金利上昇の流れは金融当局も容認する中で続く可能性が高いのではないでしょうか。

では米金利はどうなのでしょうか。米金利については、トランプ大統領の関税政策がインフレを再燃させるとの見方が当初は強かったものの、ここに来てその不確実性への懸念からむしろ景気を減速させる可能性が高くなっているとの見方も増えてきたようです。こうした中で米国株も先週(3月10日週)にかけて大きく下落となりました。

今週(3月17日週)の米ドル/円は146~151円で予想

今週(3月17日週)はFOMC(米連邦公開市場委員会)が予定されており、また2月の米小売売上高など注目度の高い経済指標発表も予定されていますが、広がり始めた米景気への懸念が払しょくされるのは簡単ではないのではないでしょうか。そうであれば、米金利が大きく上昇に向かう可能性も低いと思います。

以上のように見ると、日米金利差拡大はまだ当面は限られるでしょう。そうであれば、米ドル/円の反発にも自ずと限りがあるでしょう。一方で投機筋の米ドル売り・円買いに「行き過ぎ」懸念も強くなっていることなどを考えると、米ドル安・円高が一段と進むのも簡単ではなさそうです。以上を踏まえ、今週(3月17日週)の米ドル/円は146~151円で予想したいと思います。

FRBは利下げ再開が早まる可能性も。今後の金融政策の見通しに注目

今週(3月17日週)は、すでに述べたように日米など金融政策を議論する会合が相次ぐ予定となっています。3月19日が日米、そして20日は英国、スイス、さらに南アフリカの会合も予定されています。

中でも大きな注目を集めるのは、やはり日米でしょう。今回、日米はともに金融政策の変更は予想されていません。ただし、ここに来て日銀は追加の利上げが早まるとの見方が広がっています。一方で、FRB(米連邦準備制度理事会)は米景気に減速の兆しが出てきたことから利下げ再開が早まる可能性が注目されています。このため、会合の結果だけでなく、会議終了後の植田日銀総裁、パウエルFRB議長の記者会見などを受けた今後の金融政策の見通しに注目が集まりそうです。