2022年の原油価格急騰と円安の関係を振り返る

近年で原油価格の高騰が印象的だったのは2022年だ。ロシアのウクライナ侵攻をきっかけに原油価格は急騰、WTIは一時120米ドル以上に上昇した。原油価格の高騰は、原油の輸入依存度の高い日本にとっては輸入額の急増など悪影響が多い。

その意味では、原油価格高騰前まで110円台で推移していた米ドル/円が、2022年11月には150円まで大きく米ドル高・円安となった背景には、原油価格の高騰を受けた輸入額の急増で円売りが拡大したことも一因としてあっただろう。ただし原油価格と米ドル/円の間に強い相関関係があったわけではない(図表1参照)。

【図表1】米ドル/円とWTI(2022年)
出所:LSEG社データよりマネックス証券が作成

後で確認するように、2022年の円安拡大の主因は金利差(円劣位)の拡大だった。つまり「原油高=輸入急増」に伴う円売り増加の影響はあくまで限定的であり、2022年に大幅な円安をもたらしたのは、金利差(円劣位)拡大に伴う資本流出の拡大だっただろう。

2022年に貿サ収支赤字が過去最高に拡大=ただ2023年以降は急縮小

原油価格と為替相場の関係では、原油価格の高騰が日本の輸入を増加させ、その結果として円売りが増える点が注目される。実際に、日本の貿易・サービス収支赤字は、2022年に過去最高に急拡大し、そうした中で米ドル高・円安は1990年以来の150円を超えるまで広がった(図表2参照)。その意味では、確かに原油価格高騰が輸入急増を通じて、日本の経常収支を急悪化させたことが、大幅な円安をもたらしたようにも見える。

【図表2】米ドル/円と日本の貿易・サービス収支(2000年~)
出所:LSEG社データよりマネックス証券が作成

ただし、原油価格高騰は2022年中に一段落する。すると、輸入額も大きく減少し、これを受けて貿易・サービス収支の赤字も2023年以降は急縮小となった。そうした原油輸入額の減少、それに伴う貿易・サービス収支赤字縮小を尻目に、米ドル高・円安は2023年以降も150円を超える動きが繰り返された。以上のように見ると、原油価格高騰を受けた輸入急増の円安への影響はやはり限定的なものだったのではないか。

2022年の大幅円安は金利差拡大と連動=異次元緩和継続が主因

改めて2022年以降の米ドル高・円安拡大について見てみると、それは明らかに日米金利差(米ドル優位・円劣位)拡大の影響が大きかったと考えられる(図表3参照)。当時、黒田総裁率いる日銀は、原油価格高騰などに伴う世界的なインフレ局面でも、日本経済はなおデフレ脱却を目指す局面にあるとして、異次元緩和を継続し、長期金利上昇の抑制策を行った。その結果、日本と米国などの金利差が急拡大し、それに沿う形で米ドル高・円安が広がったのだろう。

【図表3】米ドル/円と日米金利差(2020年~)
出所:LSEG社データよりマネックス証券が作成

以上を整理すると、2022年は、原油価格高騰とそれに伴う輸入の急増が、大幅な円安をもたらしたのではない。異次元緩和の継続により内外金利差が急拡大したことを受けて大幅な円安になったと考えられる。

原油価格高騰でも2022年とは異なる2026年の状況

内外金利差は、2025年以降むしろ大きく縮小してきた。にもかかわらず米ドル高・円安が再燃したのは、日本の財政リスクへの懸念から債券価格が下落し、債券利回りが上昇したことに市場が反応した結果と考えられる(図表4参照)。「財政懸念の円売り」ということだ。

【図表4】米ドル/円と日本の10年債利回り(2025年1月~)
出所:LSEG社データよりマネックス証券が作成

日本の長期金利上昇は1月下旬で一服し、最近にかけては低下傾向が続いている。その意味では「財政懸念の円売り」再燃の兆しは未だ見られない。そして2022年のように、原油価格高騰に伴うインフレ懸念に対して、日本だけが過度に金融緩和を続ける可能性は今のところなさそうだ。以上のように見ると、原油高を受けた円安も自ずと限られる可能性が高いのではないか。