11月の振り返り=米ドル高も行き詰り、月末にかけ反落

11月の米ドル/円は、注目された米大統領選挙で共和党・トランプ氏の勝利が確定すると、米金利上昇に連れる形で156円まで一段高となりました。ただ、月末にかけては150円を割れるまで米ドル安・円高に戻す展開となりました(図表1参照)。

【図表1】米ドル/円の日足チャート(2024年9月~)
出所:マネックストレーダーFX

このような米ドル/円の変動は、基本的には日米金利差の変化に沿ったものでした。その意味では、月末にかけて米ドル/円が反落に向かったのは、日米金利差が米ドル優位の急縮小に追随したということが基本だったでしょう(図表2参照)。

【図表2】米ドル/円と日米10年債利回り差(2024年7月~)
出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成

米ドル高・円安から米ドル安・円高へ転換

次期トランプ政権の財務長官にウォール街出身のベッセント氏が指名されると、財政赤字拡大を懸念する「財政規律派」との評価から米金利は比較的大きく低下、それに伴い日米金利差の米ドル優位も急縮小となりました。

こうしたなかで、トランプ氏勝利後の米ドル高を見込んだ米ドル買い・円売りポジションの手仕舞いが広がったと見られます。ヘッジファンドの取引を反映するCFTC(米商品先物取引委員会)統計の投機筋の円ポジションは、売り越し(米ドル買い越し)が一時6万枚以上に拡大し、11月末にかけて大きく縮小しました(図表3参照)。

【図表3】CFTC統計の投機筋の円ポジション(2022年1月~)
出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成

日米金利差米ドル優位の縮小、そのなかでの米ドル買い・円売りポジションの手仕舞いに伴う米ドル売り・円買い拡大で、米ドル高・円安から米ドル安・円高へ転換したのでしょう。ではこの動きは、12月に入りさらに続くのか否か。

12月の注目点=3年連続の12月円高になるのか

12月以降も米ドル/円は下落が続く可能性が基本的には高い

11月の米ドル/円は結果的に陰線(米ドル安・円高)となりました。過去2年も11月はやはり陰線でしたが、さらに12月も陰線が続きました(図表4参照)。では、2024年の12月も3年連続の陰線となるでしょうか。

【図表4】米ドル/円の月足チャート(2020年~)
出所:マネックストレーダーFX

米ドル/円は先週(11月25日週)、10月中旬以来約1ヶ月半ぶりに52週MA(移動平均線)を割り込みました(図表5参照)。このように52週MAを上回る動きが長く続かなかったのは、米ドル/円の上昇は一時的に過ぎず、継続的な動きである「トレンド」は下落に向かっている可能性が高いと言うのが経験則の示すところになります。以上から、12月以降も米ドル/円は下落が続く可能性が基本的には高いでしょうか。そうすると、問題はどのようなメカニズムで米ドル/円の下落が続くのかということです。

【図表5】米ドル/円と52週MA(2000年~)
出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成

過去2年の米ドル安・円高と今回の違い

上述したように12月は過去2年連続で米ドル安・円高となりました。その主因は米ドル買い・円売りポジションの手仕舞いが続いたためと考えられましたが、この点は、今回は少し違うのではないでしょうか。

CFTC統計の投機筋の円ポジションは、11月末の段階で2023年は10万枚、2022年も6万枚以上と比較的大幅な売り越しとなっていました。この米ドル買い・円売りに傾斜したポジションの取り崩し(米ドル売り・円買い)が11月に続き12月も米ドル安・円高をもたらした大きな要因と考えられます。ただし、すでに見てきたように、足下の円ポジションはすでに大きく縮小したと見られるため、過去2年に比べると米ドル買い・円売りポジションの手仕舞いがさらなる米ドル安・円高をもたらす影響は限られそうです。

米ドル/円の下落が12月も続くためには、米金利がさらに低下し、日米金利差米ドル優位が一段と縮小する必要があるでしょう。12月は日米の金融政策決定会合が予定されています。日銀は追加利上げ観測もありますが、FOMC(米連邦公開市場委員会)が3回連続利下げに動くのかなどを見極めながら、日米金利差の米ドル優位が一段と縮小に向かうかが、3年連続の12月の米ドル安・円高となるかの目安ではないでしょうか。

米10年債利回りは、トランプ氏の選挙公約を織り込むことにより、9月の3.6%から一時4.5%程度まで1%近く上昇しました。その反動で4%程度まで米10年債利回りが低下するようなら、これまでの関係からすると米ドル/円は145円程度まで下落する見通しになります。以上を踏まえ、12月の米ドル/円の予想レンジは145~152円で想定します。

今週(12月2日週)の米ドル/円予想レンジ:147円から152円=米雇用統計発表などに注目

先週(11月25日週)の米ドル/円は、テクニカルに重要な分岐点の可能性がある200日MAの152円や120日MAの151円を割り込むと一段安となりました。その意味では、今週は反発してもこれらの水準を大きく上回るのは難しいのではないでしょうか。

今週は12月の第1週ということで、雇用統計など注目度の高い米経済指標発表が多く予定されています。特に雇用統計の結果は、12月FOMCで3回連続利下げになるかを考える上で重要な手掛かりになりそうです。3回連続利下げの可能性があるなら、それを手掛かりに米金利は低下が続く可能性もあるでしょう。

以上を踏まえると、今週の米ドル/円の予想レンジは、147~152円で想定します。