7月下旬以降、このところの米国市場の乱高下は、歴史的にも非常に珍しいものでした。7月末のFOMC(米連邦公開市場委員会)の結果から投資家は9月の利下げを予想していたところ、8月上旬に発表された新規失業保険申請件数、ISM製造業景気指数、雇用統計で景気後退懸念を示唆する経済指標が発表されたことで、ひょっとすると利下げのタイミングは遅すぎるのではないかという危機感が浮上しました。

日本では7月31日に日銀による利上げが行われると為替市場では急激に米ドルが売られ円が買われました。円が買われると日本株が急激に売られ、その流れが米国株の下げに拍車をかけるという展開となったのです。2つの世界主要金融市場で大きな出来事が重なったのです。

VIX指数が急騰、4~8週間は、マーケットが苦戦する可能性

このような状況下、VIX指数が先週久しぶりに急騰しました。VIX指数とは恐怖指数とも呼ばれており、将来の相場に対する投資家心理を反映する指標のことです。この指数はシカゴ・オプション取引所(CBOE)が算出、公表しており、S&P500の30日間のボラティリティ(価格変動の度合い)を基に算出されています。この数値が高くなればなるほど投資家は相場の先行きに不安を抱いていると言われており、逆張りの強気シグナルと考えられています。

【図表】VIX指数の推移
出所:ブルームバーグからマネックス証券作成

VIX指数が算出されるようになったのは1990年からですが、これまでにVIX指数が45を超えてきたのは10回だけでした。

歴史的にS&P500は、VIXが急騰した後4~8週間は苦戦する可能性が高まり、米国株式市場が安定するには時間が必要であることを示唆しています。 また、大統領選挙前のS&P500のリターンは冴えないか弱いことが多いのですが、そうした意味でも今回のVIX指数の急騰は選挙年の季節性とも一致しています。

過去のデータを見てみると、VIXが45を超えた8週間後にS&P500がプラスになる確率は4割で、平均リターンは+1.41%、中央値は+1.95%でした。つまり、プラスになる確率は半分以下なのです。ただ、その13週間後のS&P500の平均リターンを見てみると+5.46%で、中央値では+5.17%になっており、80%の確率でS&P500はプラスになる傾向となっています。

また1年後を見てみるとS&P500は平均で+14.07%の上げ、中央値だと+18.18%の上昇となっており、時間の経過とともにマーケットは上昇する傾向にあります。1年後10回のうち下がった2回の年は、ITバブル崩壊、リーマンショックの下落の時だけです。結論としては、目先の市場の動きについては確かなことは言えないものの、長い目で見ると先週8月5日(月)に起きたことは必ずしも悪いことではないと言えそうです。

8月14日(水)はCPI(消費者物価指数)の動向に注目

今週の市場の注目は8月14日 (水)日本時間夜9時半に発表される予定の7月のCPI(消費者物価指数)となります。市場の予想では、今回のCPIは6月の先月比の-0.1%に対し、0.2%の伸びが、また前年比では3.01%の伸びが予想されています。一方、コアCPIの方は前回の+0.1%に対し、今回は0.2%の増加が、前年比では2.74%の伸びが予想されています。CPIの結果が市場予想を大きく上回るようであれば市場は再度荒れる展開が考えられるので要注意です。