AIは「お金を生む工場」へと進化、成長のカギは「トークン」

エヌビディア[NVDA]の2025年11月~2026年1月期決算は最高益となりました。

決算発表後の決算コールをひと言でまとめるなら、「AIはもう流行の新技術ではなく、お金を生む工場になった」ということではないかと思います。エヌビディア側は数字の強さを示したうえで、なぜ今後も成長が続くのかを、かなりシンプルな理屈で説明しています。

その鍵が「トークン」です。生成AIは、文章やコードを一気に「完成品として出すのではなく、細かい単位で少しずつ出力していきます。その細かい単位がトークンです。日本語でいえば「文字」や「短い単語のかたまり」に近く、英語なら単語の一部や単語単位のようなものです。

AIは、質問を理解するときも、答えを作るときも、このトークンを大量に処理します。そして、多くのAIサービスは「どれだけトークンを処理したか」で料金が決まります。つまりトークンは、AI時代の「電気メーター」や「通話時間」のようなものです。トークンが増えるほど、売上が増える構造に近づきやすくなります。

エヌビディア[NVDA]のファンCEOは「計算資源が売上」と明言

決算Q&Aでエヌビディアのジェンセン・ファンCEOが本質を突く発言をしました。

「この新しい世界では、計算資源が売上だ」と言うのです。つまり、計算する力そのものが売上を生むということです。なぜなら、トークンを生むには計算が必要で、計算がなければトークンが出ず、トークンが出なければ売上が伸びないからです。

しかも今は、ただのチャットではなく「エージェント型AI」が広がり始めています。エージェント型AIは、ユーザーの代わりに調べ、考え、ツールを使い、長い時間走り続けます。たとえば、コーディング。コーディングとは、コンピュータに「何をどう動いてほしいか」をプログラミング言語で記述することです。そのコーディング支援では、数分~数時間動いて、何万、何十万というトークンを消費します。複数のエージェントがチームのように並列で動けば、トークンはさらに増えるのです。計算量が増えれば増えるほど売上につながるというのがエヌビディアの見方です。

数字での裏付けも明示、売上増のみならず410億ドルの株主還元も

この話がただの勢いではなく、数字で裏付けられていることを、エヌビディアは最初に示しました。会計年度2026年第4四半期の売上は680億ドルで前年比73%増となっています。中心のデータセンター売上は620億ドルで前年同期比75%増、前期比22%増です。

通年のデータセンター売上は1,940億ドル(前年比68%増)に達し、ChatGPT登場以降(会計年度2023以降)でデータセンター事業は約13倍に拡大。フリーキャッシュフローも四半期で350億ドル、通年で970億ドルと強烈で、配当と自社株買いで410億ドル(FCFの43%)を株主に還元しました。

なぜ、ここまで伸びているのでしょうか?エヌビディア側の説明では「AIが既存の大きな仕事を置き換え始めたから」です。生成AIはチャットの遊びでは終わらず、検索、広告生成、コンテンツ推薦といった、巨大なハイパースケールの処理に入り込み始めているということです。ここが重要で、既存の業務に入ったAIは止めにくいと言います。

ROI(投資対効果)が見えてくれば、顧客は投資を継続しやすくなります。エヌビディアはメタ・プラットフォームズ[META]を例として、モデル改善が広告の成果に繋がり、収益面でも意味のある伸びになった、という話をしました。

電力制約の世界では「最も稼げるAI工場」を作れる会社が勝つ

もう一つ、現実の制約として強調されたのが「電力」です。データセンターはどこも電力が限界で、無限にサーバーを増やせません。だから顧客は「性能そのもの」より「電力1ワットあたり、どれだけ仕事ができるか(性能/ワット)」で設計を決めます。

ここでトークンの話、「トークンへの課金=お金に換算」が効いてきます。「1ワットで何トークン生めるか」は、そのまま「1ワットでいくら稼げるか」になります。ファンCEOはこの点を、かなりストレートにコメントしました。トークン/ワットは米ドル/ワットに直結し、データセンターの発電容量(GW)から収益が決まる。つまり、電力制約の世界では「最も稼げるAI工場」を作れる会社が勝つ、という世界観です。

その「AI工場」の中核がBlackwellです。Blackwell(およびBlackwell Ultra)の立ち上がりが需要を牽引し、古い世代の製品ですらクラウドで売り切れていると説明しました。需要が新製品に偏っているのではなく、「計算資源そのものが足りない」ということなのです。さらにエヌビディアは、Blackwell基盤のインフラが約9GW規模で展開されている、と表現して導入規模を印象づけました。

「AIインフラ一式」で勝負している点も強み

ここで見逃せないのが、エヌビディアが「GPU単体」ではなく「AIインフラ一式」で勝負している点です。ネットワーク売上は今四半期110億ドルで前年比3.5倍超、通年では310億ドル超となっています。

NVLink、Spectrum-X、Ethernet、InfiniBandなどを束ねて、ラック(複数のノードを収納する「棚」)内で巨大化した計算(スケールアップ)を作り、ラック同士を束ね(スケールアウト)、さらにデータセンター間もつなぐ(スケールアクロス)というのです。ファン氏はもう「ノード」(実際に計算を行う単体のマシン)ではなく「ラック」を出荷すると言い、1ラック当たりのスイッチ量が爆発的に増える構造を説明しています。AI工場が大きくなるほど、ネットワークはコストではなく「稼働率と収益」を左右する心臓部になる、という意味なのです。

非ハイパースケール領域も急成長

顧客の裾野も広がっています。上位5社のクラウド/ハイパースケーラーが売上の約半分を占める一方、残りはAIモデル開発企業、一般企業、スーパーコンピューティング、主権AI(国家)など多様な顧客で構成され、その非ハイパースケール領域も急成長しているとの説明がありました。

ここでもファンCEOは「CUDAのエコシステムが強いから、どこでも使える」と語ります。CUDAとは、同社が開発したGPUを使って高速計算を行うためのプラットフォーム/開発環境です。これを使うと言語、画像、ロボット、科学計算まで、同じ基盤で動かせるようになります。世界のオープンソースモデル群も含めて「動かせる範囲が広い」ことが、投資のしやすさに繋がる、という主張です。

今後の見通しは「需要はある、問題は供給をどう整えるか」

今後の見通しとしては、まず次の四半期(FY2027 1Q)の売上見通しが780億ドル±2%としています。成長の中心は引き続きデータセンターで、中国からのデータセンター売上は織り込んでいないと明言しました。粗利率は70%台半ばを維持する見通しです。

さらに、需要の可視性は暦年2027年まで見えていると示唆し、供給確保のため購入コミットメントを積み増していると述べました。要するに「需要はある、問題は供給をどう整えるか」ということのようです。

中期の焦点は次世代ベラルービン(Vera Rubin)です。サンプル出荷を開始し、2026年後半に量産出荷開始予定となっています。同社のクレスCFOはBlackwellを売り続けながらRubinが立ち上がる「並走期間」を見込み、需要は非常に強いものの、立ち上がりのタイミングは顧客側のデータセンター準備(電力・冷却・設計)に左右される、と語っています。

エヌビディアの長期ストーリーは、エージェント型AIの転換点を経てフィジカルAIへ

最後に長期的な話です。ファンCEOは「2030年までにデータセンターの設備投資が3~4兆ドル規模になり得る」という見方を、トークン中心の未来像として説明し直しました。

昔のソフトウェアは「録画型」で事前に作ったものを配るが、AI時代のソフトウェアは、ユーザーの状況や意図に応じて「リアルタイム生成」する。リアルタイム生成は計算量が桁違いに増えるというのです。だから世界の計算需要は増え続け、投資も続くという訳です。

直近の大きな波がエージェント型AIの転換点で、次の波がフィジカルAI(製造、ロボティクス、自動運転)に向かうと言います。AIはクラウドの中だけでなく、工場や車の中でもトークンを生み続けるようになる―これがエヌビディアの長期ストーリーです。

マーケットが最も警戒していたのは、エヌビディアの成長がそろそろピークを迎えるのではないか、という点でした。しかし、今回のエヌビディアの説明を聞く限り、その「ピークアウト懸念」は、現時点ではあくまで市場の不安に過ぎないように見えます。