株式市場乱高下の中でJ-REIT価格は?

株式市場では、8月に入り価格が乱高下している。日経平均株価は、8月5日に前日比4,451円安となり12%を超える下落となったが、翌日から大幅に反発し、8月6日は3,217円(10.2%)高、8月7日は860円(2.5%)高となり35,000円台を回復した。

東証REIT指数は、8月5日に3.8%下落と株式市場と比較すると影響が少なかった。ただし、株式市場は年初から大幅に上昇したが、J-REIT価格は低迷状態が続いていたため、8月5日時点でも年初来の騰落率は株式市場の方が高い。

具体的には、下落率が日経平均株価の5.5%に対し、東証REIT指数は9.5%となっている。株式市場の乱高下で目立たなくなっているが、J-REIT価格も8月5日に年初来安値を更新し、8月6日以降に急反発した株式市場とは異なり、値戻りも少ない状態になっている。

米国長期金利の大幅低下はJ-REIT価格反発要因

J-REIT価格の低迷が続いてきた主要因は、米国の長期金利高止まりと考えられる。J-REIT市場では売買代金の50%~60%程度を外国人投資家が占めているため、利回りが米国10年債と比較して低い場合、売り越し基調になりやすい。例えば、4月に低下基調となった米国10年債利回りが5月に再度上昇に転じると、外国人投資家は年初来最大となる642億円の売り越しとなった。

米連邦準備制度理事会(FRB)が、9月にも利下げに転じる可能性が高くなっている。米国10年債利回りは株式市場の大幅下落によるリスクオフで一時3.5%程度まで低下し、その後また上昇しているが、2023年以降とは異なり、今後は大幅に上昇する可能性が低いと考えられる。FRBが利下げに転じれば、米国10年債利回りが明確な低下基調となり、外国人投資家のJ-REIT投資が再度拡大する可能性が高い。

J-REIT投資で分散効果が期待できる市場環境

また、日銀の利上げによる国内金利上昇も価格低迷要因と考えられるが、7月11日のコラムで解説した通り業績への影響は軽微とも言える。従って大幅な利上げや長期金利の上昇がない限り、価格への悪影響は解消に向かうと考えられる。

今後の株式市場の動向は不透明な点が多いが、過去に大幅な急落があった場合には2番底を付けることもあった。また、FRBの利下げは為替面では円高要因に繋がるため、株式市場が再度大幅に変動する可能性がある状態だ。

さらにFRBが利下げせず、国内金利が上昇に転じるというJ-REIT価格にとって悪材料となる要因が今後生じても、分配金が安定しているため高い利回りでの投資が可能な状態になっている。

この点で見れば、株式投資だけでなくJ-REITへの投資も行うことで分散効果が期待できる状態になっていると考えられる。J-REIT価格が短期的には上昇しなくても、高い利回りを享受しながら価格上昇を待つことが出来そうだ。