先週(6月22日週)の動き:NY金は一時4,000ドルを割り込み約7ヶ月半ぶりの安値、JPX金も2万1000円台で2025年11月以来の安値

先週(6月22日週)のニューヨーク市場の金先物価格(NY金)は週足で反落した。イラン情勢の緊張緩和によりインフレ懸念が後退したにもかかわらず、FRB(米連邦準備制度理事会)の利上げ観測の高まりと、それに伴うテクニカル指標の悪化が重石となり、下値を探る展開となった。週の後半には一時4,000ドルを割り込み、約7ヶ月半ぶりの安値を記録する場面も見られた。

6月26日の終値は前週末比149.6ドル(3.52%)安の4,096.3ドルと、週足ベースで反落した。

イラン情勢の緩和と原油価格の下落

週明けからスイスで行われた米国とイランの和平協議に、進展が見られた。仲介国のパキスタンとカタールが、60日以内の最終合意に向けた行程表に両国が合意したと発表し、米財務省もイラン産原油や石油製品の販売を条件付きで一時的に許可すると発表した。同時並行的にホルムズ海峡の原油輸送も回復に向かい、WTI原油価格は1バレル70ドルを割り込み、イラン戦争開始以降の上昇分をすべて失う水準まで大きく下落した。 

4月以降6月上旬まで原油価格の下落はインフレ圧力を和らげ、FRBの利下げ観測をサポートするため、NY金には買い材料となってきた。しかし6月中旬以降は、この「原油安=金高」の逆相関性が機能しない状況が生まれている。 

米利上げ観測の高まりと金市場での売り圧力

NY金の戻りを強く抑え込んでいるのは、底堅い米経済指標やFRBのタカ派姿勢に対する警戒感だ。

(1)利上げ確率の上昇

6月17日のFOMC(米連邦公開市場委員会)での想定以上のタカ派的な姿勢に加え、シカゴ地区連銀のグールズビー総裁がインフレに対する懸念を表明したことなどから、年内の利上げ確率が一段と上昇した。金利先物市場が示すフェドウオッチの予想では、年内に1回以上利上げする確率が週半ばには86%に達し、これが米ドルを強く押し上げた。ドル指数(DXY)は一時101.7460と約1年1ヶ月ぶりの高水準を付け、米ドル高がNY金の大きな売り手掛かりとなった。 

(2)PCEデフレーターの影響

6月25日に発表された5月の米個人消費支出(PCE)価格指数は、前年比の伸び率が約3年ぶりに4.0%を上回った。市場予想通りではあったものの、個人消費支出自体も堅調であり、高金利政策の維持が意識される内容となった。 

テクニカルの悪化と投資家心理の冷え込み

こうした環境の中、金市場の内部要因も悪化が目立った。 

(1)4,000ドル割れと安値更新

6月5日以降、米5月の雇用統計、同消費者物価指数(CPI)、そしてFOMCという3つのイベントを経て、NY金は下落が続いた。これにより200日移動平均線を大きく下回り、直近高値から20%以上の下げとなり、弱気相場(ベアマーケット)入りとテクニカル指標が軒並み悪化した。その中で6月24日には短期筋ファンド(CTA)などの売りが加速して4,000ドルを割り込み、一時3,975.7ドルまで下落。約7ヶ月半ぶりの安値を付けた。

(2)金ETFからの資金流出

米株式市場でハイテク株が下落する中、リスクオフに伴う手仕舞いとして、金ETF(上場投資信託)の最大銘柄「SPDRゴールドシェア」から大量の換金売りが連日確認された。投資家が「売りたい資産」ではなく、この1年余りで利益が出ている「売りやすい資産」として金を換金する動きが顕著に表れていると言える。 

週末にかけては、値ごろ感からの買い戻しや、インフレ指標の発表通過による利上げ警戒感のやや後退を受けて4,096.3ドルまで値を戻したものの、上値の重い展開が続いた。

先週(6月22日週)のNY金のレンジは3,975.7~4,216.0ドルで値幅は240.3ドルと、前週の183.3ドルより拡大した。安値圏での下値探りの展開と言えそうだ。

JPX金は2025年11月以来の安値水準

こうしたNY金の値動きを反映し、国内金価格も2025年11月以来の安値水準まで売られることになった。大阪取引所の金先物価格(JPX金)の6月26日の終値は2万1413円で、週足は前週末比507円(2.3%)安で7週続落となった。6月25日の安値2万1032円、終値2万1160円ともに2025年11月以来の安値となる。

なお6月26日に限月交代があり、中心限月が2027年6月物に移行している。レンジは2万1032~2万2433円で値幅は1401円と、週足で6.4%下げた6月8日週(1635円)に次ぐ大きさとなった。安値圏で値動きが大きくなっている。

今週(6月29日週)の動き:ECB年次シンポジウムでのウォーシュFRB議長の発言、6月の米雇用統計に注目

ECB年次シンポジウムに注目

今週(6月29日週)は欧州での金融イベントに注目したい。ECB(欧州中央銀行)は毎年この時期にポルトガルの保養地シントラで年次シンポジウムを開催している。この会合では過去、FRB議長の発言内容が市場の手掛かり材料になったことも多く、要注目となる。

2026年はウォーシュFRB議長が7月1日(水)の討論会に登壇予定で、ECBのラガルド総裁、英中銀のベイリー総裁、カナダ中銀のマックレム総裁とのパネルディスカッションとなる。ウォーシュ議長にとって就任後初となる国際的な公開討論会となる。金利の先行きや地政学的リスクに加え、市場で懸念が高まっている人工知能(AI)ブームに伴う過剰投資と、それに直面する金融安定性の維持やイノベーションの促進が話し合われるとみられている。

7月2日(木)の6月の米雇用統計

7月2日(木)には6月の米雇用統計が発表される。非農業部門の雇用者数は前月比11万5000人増と、引き続き好調な推移が見込まれている。合わせて賃金上昇の加速や失業率の安定が確認されれば、FRBの年内利上げ観測がさらに高まる可能性があり、そうなればNY金に対し下押し圧力が高まることになる。