先週(7月20日週)の動き:NY金、原油高・利上げ観測の逆風下で健闘、週足は2週間ぶり反発、国内金価格は週足3週間ぶり反発

先週(7月20日週)のニューヨーク金先物価格(NY金)は、週足で2週間ぶりに反発した。地政学リスクの緊迫化に伴う原油高や米国の利上げ観測といった、いわば強い逆風にさらされながらも、底堅さを見せて反発した1週間となった。

週末7月24日のNY金は前日比20.6ドル高の4,070.8ドルで終了し、週足では前週末比52ドル(1.29%)上昇と2週間ぶりのプラスに転じた。レンジは3,986.5~4,171.4ドルで値幅は184.9ドルと前週(7月13日週)の149.5ドルより拡大し、上下に振れる展開となった。

週前半は弱気材料の中で推移

週前半の金市場は、中東情勢の悪化に伴う原油価格の上昇とインフレ懸念という、金にとって明確な弱気材料(逆風)の中で推移した。米国とイランの攻撃の応酬が続き、7月20日には米軍がイランの軍事施設などを10日連続で攻撃した一方、イエメンの親イラン組織フーシがサウジアラビアへの海上封鎖を宣言した。

7月21日には、トランプ米大統領がイランとの協議に無関心であることを示唆し、地上部隊の派遣まで言及したことで、原油供給懸念が一気に高まった。WTI原油は一時88ドル台まで急伸し、インフレ再燃を見越して米10年債利回りは2ヶ月ぶりの高水準となる4.668%まで上昇した。ドル指数(DXY)も過去52週の最高値圏で推移した。 

通常であれば金利上昇と米ドル高は金価格を下押しするが、7月21日と22日のNY金はこれらに逆行して続伸した。7月21日の終値は前日比60.5ドル高の4,076.4ドル、7月22日の終値は同75.50ドル高の4,151.9ドルと2週間ぶりの高値を付けた。

この逆行高の背景には、直近で金価格が4,000ドルを割り込み「陰の極」とも言える「売られ過ぎ」水準にあったことや、最大の金ETF「SPDR(スパイダー)ゴールドシェア」にまとまった資金流入が見られたことが挙げられる。また、価格低迷期における新興国中央銀行による旺盛な買いが下支えとなった可能性も指摘できるだろう。 

原油高への警戒感から大幅に反落

しかし、7月23日にはさすがに連騰の反動とさらなる原油高への警戒感から大幅に反落した。フーシによる紅海でのタンカー攻撃を受け、トランプ米大統領が「大規模な軍事的攻撃」を警告したことでWTI原油は92ドル台まで高騰した。

これにより、金利先物市場が織り込むFRB(米連邦準備制度理事会)の利上げ確率が急上昇し、米2年債利回りが2025年2月以来、10年債利回りが2025年1月以来の高水準を記録した。利上げ観測の強まりを嫌気して、7月23日のNY金は前日比101.7ドル安の4,050.2ドルへと急反落した。

インフレ懸念が和らぎ小幅に反発

迎えた週末7月24日、事態は再び動いた。中国の働きかけを受けたパキスタンによる仲介協議の模索が報じられたほか、トランプ米大統領が側近との協議の末、対イラン作戦の一時停止を決定したと伝えられた。米軍の兵器備蓄の枯渇懸念などが背景にあるとされる。紅海沿岸からの原油出荷が継続していることも確認され、過度な供給懸念が後退してWTI原油は89ドル台へ反落した。これによりインフレ懸念が和らぎ、前日に大きく下げていたNY金には押し目買いが入り、7月24日は小幅に反発して週の取引を終えた。 

国内JPX金週足は3週間ぶりに上昇

こうしたNY金の動きに加え、先週(7月20日週)は米ドル/円相場が一時163.98円(7月23日FactSet)と1986年11月以来約40年ぶりの円安に進んだこともあり、国内金価格は週足で反発した。
大阪取引所の金先物価格(JPX金)の7月24日の終値は2万1730円と前日比では371円安となった。時差の関係で7月23日のNY金の大幅下落を映したものだったが、週前半の上昇に支えられて週足は前週末比392円(1.84%)高と、3週間ぶりの上昇となった。レンジは2万1148~2万2362円で値幅は1214円と4週間ぶりの大きさだった。

今週(7月27日週)は、7月30日(木)、31日(金)に日銀の金融政策決定会合が開催される。歴史的な円安を受けて、日銀がタカ派姿勢に転じるとの見方が生まれているが、6月に利上げしており、今回は据え置き予想が大勢を占めている。

今週(7月27日週)の動き:直前でも見通し割れる異例のFOMC、NY金の複数のテクニカル指標悪化はむしろ底打ちシグナルか

直前でも市場の見通し割れるFOMC

今週(7月27日週)は7月28~29日の日程で注目のFOMC(米連邦公開市場委員会)が開催される。中東情勢を受けた原油高でインフレ懸念が再燃する中、市場が織り込む7月会合の政策変更確率(Fedウォッチ)は、直前にもかかわらず7月24日時点で「据え置き(63.7%)」と「0.25%利上げ(36.3%)」で見方が分かれている。

ウォーシュFRB議長の新体制下で金融政策の不透明感が強まっており、FOMCの結果と中東の地政学リスクが引き続きNY金の行方を左右する最大の焦点となる。投票権を有しているメンバーの中では、タカ派で知られるダラス地区連銀のローガン総裁と、クリーブランド地区連銀のハマック総裁の投票動向が注目される。

米4~6月期GDP、6月米PCE及びPCEデフレーターに注目

FOMCの翌日、7月30日(木)には4~6月期国内総生産(GDP)の速報値が発表される。ガソリン高などマイナス要因の中で想定以上に堅調な推移が続く個人消費の一方で、AI(人工知能)関連など設備投資の好調も続いている。年率換算で前期比2.1%の増加が見込まれている。

同じ日に6月の個人消費支出(PCE)統計が発表される。個人消費の動向とともに価格指数(デフレーター)ではインフレ動向が注目されるが、先行して発表された6月の消費者物価指数や生産者物価指数と同様にガソリン価格の下落から鈍化が予想されている。イラン戦争が指数の振れに影響しており、6月のインフレデータは過去のものという位置づけになりそうだ。

NY金、テクニカル指標のトリプル悪化でアク抜け

NY金については、6月5日200日移動平均線割れ、6月10日に高値から20%超下落し弱気市場(ベアマーケット)入りとテクニカル指標が相次ぎ悪化した。さらに6月29日には50日移動平均線が200日移動平均線を上から下向きに交差するデッドクロスが示現した。これはさらなる下落を示唆する指標とされる。それから約2週間後の7月16日にNY金は終値ベースで2026年に入って初めて4,000ドル割れに至った。

まさにテクニカル上の弱気指標が連発したわけだが、センチメント的には底打ちのシグナルが点灯した印象が強く、徐々に反転の機運を高めるとみている。

※筆者からのお知らせ

2022年2月から4年半にわたり当欄を担当いたしましたが、今週で終了いたします。お読みいただきありがとうございました。