先週(7月13日週)の動き:米インフレ指標下振れもNY金はイラン情勢緊迫による原油高と利上げ懸念で終値4,000ドル割れ、JPX金は7営業日続落
先週(7月13日週)のニューヨーク金先物価格(NY金)は続落した。週末7月17日の終値は前週末比94.90ドル(2.31%)安の4,018.8ドルで、週足では2週連続の下げとなった。取引レンジは3,963.0~4,112.5ドルで値幅は149.5ドルとなった。この値幅は前週(7月6日週)までの4週平均134.4ドルを上回るもので、下値を模索する中でも値動きの荒い状態が続いていることを示す。
先週(7月13日週)は、週半ばにかけて発表された米国のインフレ指標が市場予想を下回り、FRB(米連邦準備制度理事会)による過度な利上げ観測は後退したものの、NY金を力強く押し上げるには力不足だった。その最大の背景は、米国とイランを巡る中東情勢の緊迫化と、それに伴う原油価格の高騰だった。
米イラン間の緊張の高まり
週明け7月13日のNY金は、前週末比108.0ドル安(2.6%安)の4,005.7ドルと大幅続落でスタートした。トランプ米大統領がホルムズ海峡でのイランに対する海上封鎖の再開と、通過貨物に対する20%相当の費用請求をSNSで表明し(翌日に撤回)、両国の本格的軍事衝突懸念が再燃したことによる。
これを受けて原油価格が急騰し、インフレ圧力の上昇が意識された。米10年債利回りが約2ヶ月ぶり、2年債利回りが2025年2月以来の高水準を付け、米ドル高が進行してNY金の売りを誘った。ウォラーFRB理事のタカ派発言も重石となった。
米6月のCPI、PPIともに予想を下回る
7月14日から15日にかけては注目のインフレ指標が相次いで発表された。7月14日発表の6月米消費者物価指数(CPI)は前月比0.4%下落と2020年4月以来のマイナスに沈んだ。7月15日の6月米生産者物価指数(PPI)も前月比0.3%低下と予想外のマイナスを記録した。これらを受けて早期利上げへの警戒感は和らぎ、7月14日のNY金は前日比64.0ドル高と反発した。
しかし、7月15日は17.9ドル安と再び反落した。最大の金ETFである「SPDRゴールドシェア」の残高が7月15日に2.6トン減少するなど投資家の慎重姿勢も目立った。
インフレ指標の鈍化が支援材料として機能しなかったのは、データがすでに「過去のもの」と受け止められたこともありそうだ。6月のインフレ指標の落ち着きは、その時点で米イラン間の停戦合意に伴うエネルギー価格の下落が背景とみられる。足元では停戦合意が実質的に崩壊し、連日にわたる米軍によるイラン空爆や、イランによるクウェートの淡水化施設・カタール米軍基地への報復攻撃など、事態は泥沼化している。
この紛争激化でWTI原油価格は再び1バレル80ドル台に乗せ、エネルギーコスト上昇が将来のインフレを招くとの警戒感が市場を支配している。
ウォーシュFRB議長初の議会証言
7月14日・15日に米上下両院で証言したウォーシュFRB議長は、目標の2%を超える高インフレを抑え込む決意を改めて示し、6月雇用統計については単月のデータだけで判断しない姿勢を強調した。
クック理事やクリーブランド地区連銀ハマック総裁からも高インフレへの警戒と利上げの必要性を示唆するタカ派的な発言が相次ぎ、年内に少なくとも1回の利上げが実施されるとの見方が維持された。
NY金終値ベースで4,000ドル割れ
こうした環境下で、7月16日のNY金は前日比59.7ドル安の3,992.1ドルまで売り込まれ、終値ベースで2025年11月以来となる4,000ドルの大台割れを記録した。時間外では一時3,973.4ドルまで下値を広げた。週末7月17日は押し目買いが入り、前日比26.7ドル高の4,018.8ドルと3営業日ぶりに反発して4,000ドル台を回復したが、力強さは欠いた。
総じて先週(7月13日週)のNY金は、地政学リスクの高まりが、有事に伴う原油高が引き起こす「インフレ再燃とFRBの利上げ継続」という懸念に押し潰される展開となった。6月以降の展開の中で複数のテクニカル指標の悪化によるセンチメントの冷え込みも加わり、米国がイスラエルへ空中給油機を追加派遣する見通しなど戦線拡大の流れが鮮明化する中、NY金は下値を切り下げる1週間だった。
JPX金は3年半ぶりの7営業日続落
以上のように未だ底打ちを確認できず、下値を探るNY金に連動する形で、先週(7月13日週)の国内金価格は連日水準を切り下げた。大阪取引所の金先物価格(JPX金)は週初から週末にかけて売り優勢が続き、7月17日の終値は2万1338円となった。前週から7営業日続落で週足も前週末比534円(2.44%)安で続落した。なお7営業日続落は2023年1月5~13日以来3年半ぶりとなる。
レンジは2万1207~2万1925円で値幅は718円で前週の828円からはやや縮小した。一般的な金の店頭小売価格(10%消費税込)は7月14日に2万3098円となり、年初来安値の2万3094円に接近している。
今週(7月20日週)の動き:市場の手掛かり材料となる指標が少ない中、中東情勢をめぐる地政学リスクが焦点に
米経済指標による目立つ影響はなし
今週(7月20日週)は米国関連の経済指標の発表は限られたものとなっている。7月24日にS&Pグローバルが7月の米PMI(購買担当者景況指数)を発表する。製造業とサービス業の活動状況を見極める最も早いデータとなる。同じ日に6月の新築住宅販売件数の発表がある。いずれも足元の環境では市況に目立った影響を与えることはなさそうだ。
FOMC「ブラックアウト期間」入り
FRB(米連邦準備制度理事会)は7月28~29日にFOMC(米連邦公開市場委員会)を開く。すでに7月18日より、FOMCメンバーやFRBスタッフが金融政策やマクロ経済の見通しについて公に発言することが禁じられる「ブラックアウト期間」に入っている。
全面戦争再燃の色彩を帯び始める中東情勢
今週(7月20日週)はこのように市場の手掛かり材料となる指標が少ない中で、中東情勢を巡る地政学リスクが焦点となりそうだ。米中央軍の発表によるとイラン攻撃は7月20日で10日連続となった。
一方でイラン側の攻撃も続いているが、その矛先が湾岸諸国の米軍施設から、ペルシャ湾岸諸国の空港や発電所、海水淡水化施設といったライフラインにかかわるインフラにまでも向けられ、標的になっているとされる。米兵の死亡も新たに伝えられる中でトランプ米大統領がどのように対応するのかが見えない。徐々に全面戦争再燃の色彩を帯び始めているが、市場は一部中東諸国の仲介外交による沈静化に期待を向けている。
方向感の出にくい環境の中でNY金は4,000ドル近辺(3,950~4,100ドル)の値固めから、少し時間を掛けて反転をうかがう態勢に移行するとみられる。
