日経平均は、振幅の大きい荒い展開が続いています。一進一退というところですが、史上最高値を更新する局面もあります。相場の腰はまだ強いと感じさせる推移です。日々の派手な動きに慌てる必要はありません。落ち着いて対応するのが重要とのスタンスは継続したいところです。

とはいえ、前回のコラムで紹介した「振れ幅が大きいときは相場の転換点が近い」との経験則は、頭に残しておくべきでしょう。急ピッチの上昇に対して日柄調整が不足していることや、半導体関連に過熱感があることは、衆目の一致するところでしょう。「『まだ』は『もう』なり」とは、我々投資家の希望的観測への盲信を戒めてくれる金言です。当面は、過熱感のない銘柄の確認に加え、相場急落時には買いそびれた銘柄を仕込むなど、徐々に注目点をシフトさせていくことも大切だと考えます。

「第二のキオクシア」とかけて何と解く?そのココロは…

さて、今回は「『第二のキオクシア』を探せ」をテーマに取り上げてみたいと思います。先日、編集部から「『第二のキオクシア』とかけて何と解く?」という難しいなぞかけのお題を出されました(笑)。これに対し、「レーシングカー」と解いてみたいと思います。そのココロは、「(タコメーターの)『目盛(メモリ半導体)』を越えるのが重要です」。どうでしょう!いや、なかなかの捻りですよね。え?面白くないですか。すみません…。

とはいえ、キオクシアホールディングス(285A)は上場から一年半で株価が一気に約77倍となり、時価総額日本一に駆け上がりました。このサクセスストーリーを考えると、どのような銘柄がキオクシアに続くのか、投資家としては想いを馳せざるを得ません。そこで、今回はどのような企業や業種が有望と思えるのか、頭の体操という軽いスタンスで妄想してみたいと思います。念のため申し添えておきますが、それがわかっていれば、とっととFIREを実行し、ここでコラムを書いていません(笑)。当たるかどうかは不明ながら、いろいろ考えてみようという試みであるとご理解ください。

時価総額10兆円超えのフジクラ(5803)に共通する「堅実な実力」

キオクシアには及ばないものの、実は直近3年で高パフォーマンスを叩き出し、時価総額で10兆円の大台を越えた銘柄は他にもあります。フジクラ(5803)です。小型株が急騰することはままありますが、時価総額で一定規模を越える大型株のここまでの株価上昇はやはり特筆に値するでしょう。

この2社に共通するのは、AIというテーマに乗ったということもさることながら、AIそのものの本丸プレイヤーではなく、むしろAI開発を進めるうえで不可欠なパーツ(NANDフラッシュメモリや光ファイバー/コネクタ)の世界的プレイヤーであったということです。一定規模を越えて評価されるということは、それだけの市場規模があり、さらにそれに対応できる地力が会社にあったということに他なりません。

仮にAIという「ブーム」がなくとも、彼らの実力はしっかりと評価されていたはずと言えるでしょう。実際、急騰前のフジクラは時価総額で2000億円クラス、キオクシアは上場時で1兆円クラスでした。いわば、堅実な実力者が時代の流れをしっかりと捉えたということでもあります。例えば、フジクラはデータセンターへの注力方針を鮮明にし、キオクシアはAI対応スペックの製品開発を加速しました。

「第二のキオクシア」探しに必要な条件と合致する銘柄をリストアップ

以上を踏まえると、「第二のキオクシア」を探すうえでの重要な条件は、次のとおりです。

(1)決して本丸プレイヤーである必要はないが、
(2)何か既に一定の市場規模を持つ代替不可能な製品や技術を抱え、
(3)現時点でその分野で世界的プレイヤーであり、
(4)時流に敏感に対応できる柔軟な経営力を有すること、

もちろん、これらの条件が絶対というわけではありませんが、経験に則ればということです。株価パフォーマンスは上記2社にまだ及んでいませんが、世界トップクラスのコンデンサメーカーである村田製作所(6981)などは、まさにこの条件に当てはまっているように思えます。

しかし、何が次に大化けするテーマなのかはわかりません。また、経営の柔軟性も外からは不明です。とすれば、「第二のキオクシア」を探るには(2)と(3)に合致する企業群を洗ってみることが第一歩と考え、リストアップしたのが下の図表です。ここではテクノロジー関連の代替不可能な製品・技術群を中心に掘り起こしてみました。

もちろん、このリスト以外にも強力な製品・技術・企業があることは論をまちません。ただ、このリストをご覧になっていただけるだけでも、既に高い株価パフォーマンスを示している企業も多く含まれていることにお気づきになった方は多いでしょう。「第二のキオクシア」になるかどうかはわかりませんが、十分その候補として魅力的な企業群と言えるのかもしれません。当然、ここに挙げられていない製品・企業が「第二のキオクシア」に名乗りを上げる可能性も十分にあります。あくまで将来を考えるうえでの頭の体操とご理解ください。

【図表】
出所:筆者作成
分類 製品 企業名
半導体関連 シリコンウエハ 信越化学工業(4063)、SUMCO(3436)
  フォトレジスト 東京応化工業(4186)、信越化学工業(4063)
  半導体封止材 レゾナック・ホールディングス(4004)、住友ベークライト(4203)
  コータ・デベロッパ 東京エレクトロン(8035)
  フォトマスク欠陥検査装置 レーザーテック(6920)
  ダイシングソー ディスコ(6146)
  ウェハ洗浄装置 SCREENホールディングス(7735)
  半導体パッケージ基板用層間絶縁材 味の素(2802)
  半導体パッケージ基板用BTレジン材料 三菱瓦斯化学(4182)
電子部品・部材 CMOSイメージセンサー ソニーグループ(6758)
  MLCC 村田製作所(6981)、TDK(6762)、太陽誘電(6976)
  MLCC用超微粉ニッケル粉 JX金属(5016)、JFEホールディングス(5411)
  銅張積層板 パナソニックホールディングス(6752)、三菱瓦斯化学(4182)
  極薄銅箔 三井金属(5706)
  有機EL用ファインメタルマスク 大日本印刷(7912)、TOPPANホールディングス(7911)
  偏光板用TACフィルム 富士フイルムホールディングス(4901)、コニカミノルタ(4902)
  LiBセパレーター 旭化成(3407)、東レ(3402)
  LiBバインダー クレハ(4023)、日本ゼオン(4205)
  LiB正極集電体用アルミ箔 日本軽金属ホールディングス(5703)
機械・部品・素材 船舶用大型ディーゼルエンジン 三井E&S(7003)
  自転車用コンポーネント シマノ(7309)
  手術用縫合超精密針 マニー(7730)
  シームレスパイプ 日本製鉄(5401)、JFEホールディングス(5411)
  電磁鋼板 日本製鉄(5401)、JFEホールディングス(5411)
  航空機向けスポンジチタン JX金属(5016)、大阪チタニウムテクノロジーズ(5726)
  炭素繊維 東レ(3402)、帝人(3401)、三菱ケミカルグループ(4188)
出所:筆者作成

「不採算事業」からの成功例も

リストを眺めると、意外な企業が意外な製品領域で極めて重要な役割を担っていることを、改めて認識させられます。この裾野の広さ、深さは日本企業の底力とも言えるでしょう。

そして中には、新規展開としてこのような製品・技術の開発に着手して以降、かなり長期間の苦悩の末に、現在のポジションを確立できたという例もあります。最近は不採算事業の継続には株主から厳しい目が向けられるようになりました。しかし、こうした成功例も確かにあるのです。なんでもかんでも赤字事業を容認することはできませんが、要はバランスです。「第二のキオクシア」には、バランス感を持って投資規律を実践できる企業(実践してきた企業)という条件も含まれるのかもしれませんね。