先週(8月3日週)の振り返り=一時155円台まで円高、しかしその後は158円まで円安に戻す

日米による協調介入が確認され155円台まで円高に!

先週(8月3日週)の米ドル/円は、週初に日米の通貨当局が円買いの協調介入を行ったことが確認されました。さらに片山さつき財務相やベッセント米財務長官が「今後も必要なら躊躇なく対応する」と表明したことを受け、実際に追加の米ドル売り・円買い介入が行われた可能性もあったことから、155円台まで一段安となりました(図表1参照)。

【図表1】米ドル/円の日足チャート(2026年4月~)
出所:マネックストレーダーFX

その後はジリジリと158円台まで米ドル高・円安に戻す展開となったものの、8月7日に発表された米7月雇用統計でNFP(非農業部門雇用者数)が予想を大きく下回り、前月比2万人の減少となる「NFPショック」となったことから米利上げ観測が後退すると、米ドル/円も一時156円台後半まで下落しました。

投機筋の円売りポジションが急減=介入以外で円高後押しの可能性

日本の通貨当局は7月30日から米ドル売り・円買いの為替介入を再開し、その後も断続的に為替介入を行ったとみられました。加えて米当局もユーロ売り・円買いで為替市場に介入したとみられました。円買いの日米協調介入は1998年6月以来になります。こうしたことを受けて、米ドル/円は163円台から先週(8月3日週)は155円台まで、大きく米ドル安・円高に戻す展開となりました。

ところで、この為替介入以外で円高へ戻す大きな要因となったのは、投機筋の円売りポジション処分に伴う円買い戻しの動きだったようです。CFTC(米商品先物取引委員会)統計の投機筋の円ポジションは、為替介入が再開される前までには売り越し(米ドル買い越し)が過去最高の18万枚に迫る16万枚まで拡大していましたが、8月4日時点では4万枚まで、一気に4分の1に急縮小となりました(図表2参照)。

【図表2】米ドル/円とCFTC統計の投機筋の円ポジション(2026年1月~)
出所:LSEG社データよりマネックス証券が作成

為替介入を受けた急激な円高により、円売りポジションの損失が拡大することを回避するため円買い戻しが進み、それが介入の円買いとともに一時155円台までの米ドル安・円高の動きを後押ししたと考えられます。

消費税減税で円安再燃=高市総理が円安阻止の「障害」という構図

ただ155円台で円高が一段落すると、その後は一時158円台まで米ドル高・円安に戻りました。ここで手掛かりの1つになったのは、与党自民党の消費税減税決定に対して財政規律への懸念が再燃したことでしょう。これを受けて日本の長期金利、10年債利回りは一時2.8%まで上昇、これに円売り再燃で反応した面もあったのでしょう(図表3参照)。

【図表3】米ドル/円と日10年債利回り(2026年4月~)
出所:LSEG社データよりマネックス証券が作成

以上のように見ると、日米協調介入で円高へ反転させたものの、それが高市総理の消費税減税で円安に押し戻されるようになったとも言えそうです。その意味では、客観的には高市総理が円安阻止の「障害」になったという、やや皮肉な構図ということではないでしょうか。

今週(8月10日週)の注目点=テクニカルな分岐点は120日MAの159円半ば

協調介入でも財政規律への懸念続くなら円安変わらない?

日米協調介入の実現を受けて、米ドル/円は円安から円高へ大きく反転しました。ただ高市内閣が財源を曖昧にしたままで消費税減税を進めようとする中、財政規律への懸念を主因とした円安の流れは変わらないという見方も強いようです。そこで、この先の米ドル/円の行方について、改めて考えてみます。

米雇用統計の「ネガティブ・サプライズ」を受けて早期の米利上げ観測は後退しました。その一方で日米協調介入の後、ベッセント米財務長官などから日本の早期利上げへの期待が示唆され、日本では逆に利上げ観測が高まりました。

こうしたことを受けて、日米金利差(米ドル優位・円劣位)は先週(8月3日週)にかけて比較的大きく縮小し、協調介入をきっかけとした米ドル安・円高への戻りを正当化するようになりました(図表4参照)。このような日米の金融政策の見通しは、米ドル/円の上値を抑制する要因になるでしょう。

【図表4】米ドル/円と日米政策金利差(2026年4月~)
出所:LSEG社データよりマネックス証券が作成

もう1つ、円安を抑制しそうな要因は、これまで円安の主導役と見られた投機筋の円売りが鈍化する可能性があるということでしょう。代表的な投機筋であるヘッジファンドの円売りポジションの損益分岐点の目安とされる120日MA(移動平均線)は、足下で159円半ば程度を推移しています(図表5参照)。このためこの水準より米ドル安・円高で推移している中では、ヘッジファンドは円売り拡大に動きにくく、むしろ円売りポジションの処分や、逆に円買いに動く可能性があるでしょう。

【図表5】米ドル/円と120日MA(2022年~)
出所:LSEG社データよりマネックス証券が作成

120日MA超えなければ米ドル/円上値重い?=今週(8月10日週)の予想は155~159.5円

今週(8月10日週)はCPI(消費者物価指数)、PPI(生産者物価指数)などのインフレ指標、そして小売売上高など注目度の高い米経済指標発表が予定されています。これらの結果を受けて、先日の「NFPショック」を受けた米早期利上げ観測の後退が改めて吟味されることになるでしょう。

テクニカルには、ヘッジファンドの円売り・円買いの分岐点の目安となる159円半ばに注目しています。米ドル/円がこの水準を大きく超えてくるようなら投機筋の円売りが再燃する可能性がありますが、この水準を超えられないようならむしろ投機筋は円買い拡大に動く可能性もあるでしょう。

個人的には、介入再開への警戒などもあり、米ドル/円が120日MAを超えるのは難しいと考えるため、今週(8月10日週)の米ドル/円は上値が重く、155~159.5円での展開を予想します。