先週(7月6日週)の動き:NY金はイラン情勢の緊迫化に伴う市場の変化に振り回された週、国内金価格は米ドル/円相場の影響を受けた

先週(7月6日週)のニューヨーク金先物価格(NY金)はイラン情勢の緊迫化に伴う原油高と、それによる米国のインフレ懸念・利上げ観測に再び振り回される1週間となった。

週末7月10日のNY金は4,113.7ドルで取引を終え、週足では前週末比12.0ドル(0.29%)安と反落した。週間のレンジは4,032.5~4,215.5ドルで値幅は183.0ドルと、地政学リスクの変動を背景に、200ドル近い値幅を伴う激しい値動きとなった。

その一方で週末にかけて米イラン間の応酬は激化したものの、前週(6月29日週)までのように4,000ドル割れの水準まで売られることはなかった。

前週(6月29日週)の地合いを受け堅調にスタート

連休明け7月6日のNY金の終値は、前営業日比41.8ドル高の4,167.5ドルと3営業日続伸した。

7月2日に発表された6月の米雇用統計で非農業部門雇用者数が市場予想を大きく下回り、過去2ヶ月分も下方修正されたことや、7月1日のECB(欧州中央銀行)フォーラムでのウォーシュ米連邦準備制度理事会(FRB)議長によるインフレリスク減少への言及を受け、早期の米利上げ観測が後退したことが買い手掛かりとなった。

NY時間外のアジア時間には、一時4,215.5ドルまで上昇し、これが週足の高値となった。

高まる地政学リスク、急変したイラン情勢

しかし、7月7日に4,157.4ドルで取引を終えた後の時間外取引から、相場は急転する。ホルムズ海峡でのイランによるタンカー攻撃や、米財務省によるイラン産原油販売への適用除外措置の取り消し、米軍によるイラン防空システムへの攻撃が伝わり、地政学リスクが一気に高まった。これにより原油価格が急伸し、インフレ懸念から米10年債利回りが1ヶ月ぶりの高水準に上昇したこともあり、NY金には売りが膨らんだ。

7月8日に開かれた注目のNATO首脳会議では、トランプ米大統領による「イランに非常に激しい攻撃を加えた」「停戦の覚書はもう終わった」などの発言により警戒感がさらに強まった。加えて、この日公表された6月のFOMC(米連邦公開市場委員会)議事要旨が、大半の参加者がインフレ率の高止まりと利上げの必要性を想定するタカ派的な内容であったことも売りを加速させた。

結果、7月8日のNY金は前日比75.0ドル安の4,082.4ドルで引け、時間外には週間の安値となる4,032.5ドルまで下落した。

和平に向けた一定の外交努力も

イラン軍による報復攻撃の一方で、米中央軍が追加攻撃の完了を発表し、イランのアラグチ外相が周辺国と対話を行うなど、外交努力を通じた事態悪化回避への期待が広がった7月9日は、3営業日ぶりに反発した。原油価格の反落で過度なインフレ懸念が後退し、米国株高・米債券高が進む中でNY金も買い戻され4,140.8ドルで終了した。

米イラン、週末に応酬激化

その後、イラン情勢は週末にかけて再び緊迫度を増すことになった。

週末7月10日は、トランプ米大統領のSNS投稿やイラン側の強硬発言が交錯する中で、市場の反応は複雑化した。イラン情勢を巡り湾岸諸国による沈静化を目指す外交行動もあり、交戦激化は回避されるとの楽観論の一方で、実際に米イラン双方の応酬が激化していることが警戒感を高めている。

市場が方向感を失う中で、7月10日のNY金は冒頭で述べたように4,113.7ドルで終了した。イラン情勢を受けた米利上げ観測に対し、金市場が一定の耐性を示しつつあるという見方ができそうだ。

週末にかけ片山発言による円高

国内金価格はおおむねNY金に沿った値動きとなった。ただし、週末にかけて片山財務相の発言内容から米ドル/円相場が円高に振れたことで、為替要因からの下げが週明け7月13日の価格に反映されることになりそうだ。

大阪取引所の金先物価格(JPX金)の7月10日の終値は2万1872円で週足は前週末比214円(0.97%)安の反落となった。前週に8週間ぶりに反発したものの、その流れを維持できなかった。

レンジは2万1545~2万2373円で、値幅は828円と5週間ぶりに1000円以下となった。前週(6月29日週)と前々週(6月22日週)は2週にわたり2万1000円割れを試すような下げが見られたが、先週(7月6日週)はそのような動きは見られなかった。

今週(7月13日週)の動き:ウォーシュFRB議長をはじめ、多くのFRB高官に発言機会、重要インフレ指標の発表

引き続きイラン情勢は警戒

今週(7月13日週)も基本的にはイラン情勢による影響を受ける可能性がありそうだ。ただ、すでに述べたように地政学要因に対する一定の耐性を示していることもあり、それらを材料に売りが出ても4,000ドル割れは回避するか、割れても大台を回復するのに時間はかからないと思われる。

ウォーシュFRB議長の議会証言と米インフレ指標

今週(7月13日週)は、7月14(火)~15日(水)にウォーシュFRB議長が米議会で証言するなど、FRB高官の発言機会が多く、注目度が高い。またその日程に重なる形で米重要経済指標の発表も予定されている。

7月14日(火)にウォーシュFRB議長は下院金融委員会での公聴会に臨むが、同日には6月の消費者物価指数(CPI)が発表される。翌7月15日(水)、同議長は上院委員会で証言予定だが、同日は6月の生産者物価指数(PPI)が発表される。いずれも議会の公聴会は米東部時間午前10時に始まり、いずれの指標も8時30分に発表予定となる。

その他FRB高官発言も要注目

その他のFRB高官の発言機会としては、7月13日にウォラーFRB理事が講演するほか、7月15日(水)にはニューヨーク地区連銀のウィリアムズ総裁とクックFRB理事が発言する。7月16日(木)にはジェファーソンFRB副議長、ダラス地区連銀のローガン総裁、カンザスシティー地区連銀のシュミッド総裁の講演が予定されている。政策の事前示唆を避けるウォーシュ議長の就任後、FRBを包んでいた静けさが、徐々に解消されるのか否か、興味深い。

今後の見通しを立てるにあたり、イラン情勢よりもウォーシュ議長をはじめFRB高官の発言に注目したい。