先週(6月8日週)の米国株市場:主要指数は底堅い地合いを維持、スペースX上場今後は利益成長の道筋に要注目
先週(6月8日週)の米国株市場は、半導体株の急落、インフレ再燃への警戒、中東情勢を巡る不透明感、そして史上最大規模となったスペースX[SPCX]のIPOが重なり、かなり慌ただしい一週間となりました。
週全体を振り返ると、相場が大きく崩れたわけではありません。むしろ、短期間で大きく上昇してきたAI・半導体関連株にいったん利益確定の動きが出る一方で、投資家の買い意欲はなお残り、主要指数は底堅い地合いを維持した一週間だったと考えています。
実際、S&P500は週間で0.65%上昇し、ナスダック100も2.34%上昇しました。日々の値動きは荒かったものの、終わってみれば主要株価指数はプラス圏で着地しており、投資家がリスク資産から一斉に逃げ出したわけではありません。
むしろ、買われ過ぎた銘柄からいったん利益を確定し、次に資金を向けられる分野を探す動きが強まった一週間だったとみるべきでしょう。AI・半導体相場の熱を少し冷ましながらも、米国株全体の上昇基調はなお保たれている、というのが先週の相場の大きな姿だったと思います。
AI・半導体株が調整した理由とは
一番目立ったのは、やはりAI・半導体株の調整でした。4月から5月にかけて、AI関連株には非常に大きな資金が流入していました。フィラデルフィア半導体関連指数も大きく上昇し、投資家の期待もポジションもかなり積み上がっていたところに、AI投資の採算性に対する疑問、金利上昇への警戒、さらにスペースX[SPCX]の大型IPOを控えた換金売りが重なりました。その結果、短期筋の利益確定売りが出やすくなったのです。
こうした下落局面では、「AI相場はもう終わったのか」という声が必ず出てきます。しかし、僕はまだその判断は早いと考えています。クラウド、半導体、データセンター、電力インフラへの投資は引き続き拡大しており、米国企業の業績上方修正を支えている中核も、依然としてテクノロジー分野です。
したがって、今回の下げは、AIという長期テーマそのものが崩れたというより、短期間で過熱した銘柄群のポジション調整と捉えるのが自然だと思います。相場は一直線には上がりません。むしろ、途中でこうした調整を挟むことで、長い上昇相場は息を継ぎ、より持続力を持つことができます。
エネルギー価格が落ち着けば、株式市場にとって重要な支援材料に
先週(6月8日週)のもう一つの焦点は、インフレと原油でした。6月10日に発表された米国5月の消費者物価指数(CPI)は前年比4.2%、コア指数は2.9%となり、コアだけをみれば市場はひとまず安心しました。一方で、6月11日に発表された生産者物価指数(PPI)は再び高めの伸びとなり、原油高がエネルギー以外の分野にも波及し始めているのではないか、という警戒感が残りました。
米国株市場にとって、いま最も嫌な組み合わせは、景気が大きく崩れないままインフレだけが粘り、FRB(米連邦準備制度理事会)が利下げどころか利上げを意識せざるを得なくなる展開です。その意味で、原油価格の動きは今週(6月15日)以降も重要です。
中東情勢を巡っては、先週後半にトランプ大統領がイランへの攻撃計画を取りやめ、和平協議が進展しているとの見方を示したことで、市場心理は大きく改善しました。WTI原油は一時85ドルを下回り、5月高値からは20%超下落しました。原油安はインフレ期待を抑え、消費者心理や企業収益にもプラスに働きます。エネルギー価格が落ち着けば、FRBへの利上げ圧力もいくらか和らぐため、株式市場にとっては重要な支援材料になります。
先週(6月8日週)は全面安にならず金融、素材、不動産などに資金が向かう
そんな中で興味深いのは、先週の相場が単なる全面安ではなかったことです。半導体や一部のハイテク株には売りが出た一方で、金融、素材、不動産、生活必需品などには資金が向かいました。これは、投資家がAI関連株を完全に見切ったというより、上昇余地の残る別の分野にも視線を広げ始めたということだと思います。
特に金融株には、IPO市場の回復という追い風があります。スペースXのような大型上場が成功すれば、投資銀行や証券会社には手数料収入の増加が期待できます。また、米国経済が急失速していないことも金融株には支援材料です。素材株や生活必需品株が買われたことも、相場の中でディフェンシブ性と景気敏感性の両方を探る動きが出ていることを示しています。個人投資家にとっては、AI・半導体を中長期の主軸として持ちながらも、ポートフォリオ全体が一つのテーマに偏り過ぎていないかを確認する良いタイミングだと思います。
6月8日スペースX上場、利益成長の道筋、バリュエーションに要注目
先週(6月8日週)マーケット最大の話題は、スペースX[SPCX]のIPOでした。公開価格は1株135ドル、調達額は最大860億ドル、評価額は約1.8兆ドルとされ、初日の終値ベースでは株価が約19%上昇し、時価総額は約2.1兆ドルに達しました。米国市場でも上位に入る巨大企業が新たに誕生したことになり、宇宙、通信、防衛、AIを結びつける次世代インフラ企業としての期待は非常に大きいものがあります。
ただし、投資家としては、話題性と投資判断を分けて考える必要があります。IPO直後の大型銘柄は、初期の需給で大きく動く一方、その後に株価が落ち着くことも少なくありません。短期的には指数組み入れ期待や個人投資家の人気が支えになる一方、利益成長の道筋、バリュエーション、ロックアップ解除後の需給などを冷静に確認する必要があります。今週(6月15日週)もスペースXの動向にマーケットは注視することになるでしょう。
今週(6月15日週)の焦点: FOMC新議長ケビン・ウォーシュ氏の発言に要注目
今週(6月15日週)の最大の注目点は、FRB(米連邦準備制度理事会)です。新議長ケビン・ウォーシュ氏にとって初めてのFOMC(米連邦公開市場委員会)後の記者会見となり、市場はその言葉を非常に慎重に読み解くことになるでしょう。
焦点は、インフレ再燃への警戒をどこまで強めるのか、そして年内利下げ期待がどこまで後退するのかです。仮にFRBの経済見通しやドットチャートで利上げ色が強まれば、株式市場には短期的な重しとなります。一方で、インフレへの警戒を示しつつも、過度にタカ派へ傾かない姿勢が確認できれば、市場は安心感を取り戻しやすいでしょう。
6月15日(月)日本時間早朝、パキスタンのシャリフ首相や米トランプ大統領のSNSにて、米国とイランの戦闘終結に向けた合意、ホルムズ海峡の開放に向けての発表がありました。今後は、原油安・金利低下・株高という好循環が期待できるでしょう。今週はG7首脳会議も予定されています。
