「骨太の方針」決定の過程で起こった円安値更新
高市政権の経済財政運営と改革の基本方針である「骨太の方針」の原案が明らかになったのは6月末だった。すると長期金利である10年債利回りは一時2.9%程度まで大きく上昇、財政規律を懸念した「骨太ショック」と呼ばれた(図表参照)。
その後、その原案の修正やGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の円債購入拡大期待などから10年債利回りは一旦低下したものの、7月21日、「骨太の方針」が閣議決定され、高市総理が自信満々にその内容を説明する中で10年債利回りは上昇が再燃した。そしてそうした動きに連れる形で、米ドル高・円安は、2024年7月に記録した161.9円を上回り一段と広がるところとなった。
民意が強い不満を示している円安=それを現政権が招いているという皮肉
円安について、7月中旬に公表されたNHK世論調査では、「日本経済へ悪影響」との回答が61%で、「好影響」との回答22%を大きく上回っていた。
世論調査からうかがわれる「民意」は、円安への強い不満を示していた。ところが、その円安の主因が高市政権の経済政策への懸念になっているようだ。この関係を考えた場合、普通なら高市政権は政策を転換し、円安の阻止・是正に踏み出す必要があるのではないか。
円安と高市総理の間で展開する「チキンレース」
ところが、これまでのところ高市総理は政策転換どころか、自らの公約である消費税減税の実施に強い意欲を示している。財政規律への懸念を受けた円安の流れが変わらなければ、この消費税減税策は民意が強い不満を感じている円安をさらに進める懸念がある。
高市内閣への支持率は、7月後半にかけて軒並み大きく低下した。その中でも一部の調査は、高市総理が自信満々に「骨太の方針」を発表した後に行われたものだったが、それらの調査でも大幅に支持率が低下していたことは、「骨太の方針」に対する高市総理の意気込みと民意のかい離を感じさせるものだったのではないか。
そして、それをよりシンボリックに示しているのが円安に対する高市総理と民意の感覚の違いのように思われる。高市総理が政策転換せずに円安が続くのか、それによって支持率が一段と低下し、総理が政策転換に追い込まれるのか。円安と高市総理の間でまるで「チキンレース」が展開しているような構図かもしれない。
7月30日、当局は約3ヶ月ぶりに米ドル売り・円買い介入を再開した可能性があり、米ドル/円は急落した。この急落が、高市総理が消費税減税について与党内での取りまとめを指示した後だったのは、それを受けたさらなる円安を回避する狙いがあった可能性が高いのではないか。
