外国為替市場では対米ドルで円安が進んでいます。先週(6月29日週)は一時、1ドル162円台前半まで円が下落し、1986年12月以来となる約40年ぶりの円安・米ドル高水準となりました。この原稿を書いている2026年7月8日の朝も1ドル=162円前後の展開となっています。

今後、さらに円安が進行する可能性は高いと私は考えています。その理由は、構造的な円安要因が今後も変わらないと考えるからです。

円安が止まらない構造的要因

1.日米の実質金利差

円安をもたらす構造的要因の1つは日米の実質金利差です。

米国の経済は雇用が堅調で、インフレも今後加速する懸念があります。中央銀行であるFRB(米連邦準備制度理事会)は、今後、利下げではなく利上げに踏み切る可能性が高まっています。

一方の日銀も段階的な利上げ姿勢を示しているものの、景気への配慮からそのペースが緩やかにとどまるとみられています。実質金利はなかなか上昇しません。また日本政府からの金融政策に対する圧力がかかっているのではないかとの見方もあります。

その結果、日米の金利差を狙ったキャリートレードなどの米ドル買い・円売り圧力は継続すると思われます。

2.需給面における構造的な変化

また、需給面における構造的な変化も円安の長期的な進行を後押しします。

日本の貿易収支においては、エネルギー価格の高止まりや海外IT企業への支払い増に伴うデジタル赤字といった、実需の円売り・米ドル買いが慢性化しています。

さらに、日本の個人投資家によるNISAなどを通じた海外資産への資産シフトも底堅い円売り圧力として機能し続けています。円安が進んだことにより海外投資の必要性が認識されれば、今後さらに外貨シフトが加速する可能性もあります。

これらの需給要因は日米金利差とは直接関係ない恒常的要因です。

3.日本株の上昇に伴う外国人投資家の為替取引

それらに加えて、日本株の上昇に伴う外国人投資家の為替取引が円安の要因になっているという指摘もあります。

外国人が日本株に投資する場合、円の下落に備え、購入額の一部を円売り・米ドル買いの為替ヘッジ取引をしていると考えられます。日本株の価格が上昇すれば円の資産額がさらに大きくなりますから、含み益の一部をさらに円売り・米ドル買いの為替ヘッジによってリスクコントロールします。

それがさらなる円安の要因になっているという指摘です。ただしこれは日本株が下落すれば円高要因になる可能性があります。

為替介入は市販の風邪薬のようなもの

急速な円安に対しては、財務大臣や財務官などの政府関係者から円安牽制発言が度々出されています。またアメリカ側が日本のレートチェックや為替介入に一定の関与や理解を示し、円高が進む局面もこれまでにはありました。

しかし一時的に円が急上昇することはあっても、短時間でその効果は消えてしまい、再び元の水準に戻りつつあります。

政府の為替介入は市販の風邪薬のようなもので、症状の短期的な緩和効果はあっても根本的な治療にはつながらないのです。むしろ円高によって米ドル買いの機会を提供してしまうことにさえなりかねないのです。

日本政府は円安を容認している?

高市政権は「責任ある積極財政」を掲げ、財政拡張的な政策による景気刺激で経済の立て直しを目指しています。それに加えて、金融政策の引き締めには消極的な考えです。財政支出の拡大と金融緩和を続ける代償として、円安を容認しているのではないかとさえ思われます。

介入資金が限られていることに加え、為替介入の効果が限定的であることは政府も認識しています。国民からの反発を招く急激な円安は回避するように対応するものの、緩やかな円安に関しては介入などによる対応を行わず放置する可能性が高いのではないでしょうか。

また、米ドルが円だけではなく他の通貨に対しても強くなっている「米ドル高」の場合、米国側に為替変動の原因があり、日本側で円安を食い止める手段には限界があります。

日本人にとって困るのは円高ではなく円安

そもそも我々日本人にとって円安と円高のどちらが困るかと言われれば、円安なのは明らかです。自国の通貨価値が下落していく円安はグローバルに見て「貧しくなっていく」ことだからです。

もちろん外貨資産を保有している場合、円高になれば為替差損を被ることになります。

しかしそれよりもダメージが大きいのは、円安が進む局面で外貨資産を保有していないことによる円資産の価値の毀損(きそん)です。

為替の見通しがわからないなら、円と外貨を50%ずつ

資産運用で大切なのは、「アセットアロケーション(資産配分)」です。その中でも最も大切なのは、円資産と外貨資産の比率です。

金融資産だけではなく不動産のような実物資産も合わせて保有資産を時価で計算し、円と外貨の比率を把握しておく必要があります。そして、将来の為替レートの見通しを反映させたアセットアロケーションにしておく。

円高になる可能性が高いと考えるなら、円資産への配分比率を高くする。逆に円安になる可能性が高いと思うのであれば、外貨資産の比率を高めるべきです。もし将来の為替に対する見通しがまったくわからないというのであれば、円資産と外貨資産を50%ずつ保有するのが合理的です。

私は前述の通り、今後も円安の流れが変わらない可能性が高いと考え、アセットアロケーションにおける外貨の比率を70%程度に高めています。

1ドル=200円時代を想定した事前準備を

私も円安に100%の確証を持っているわけではありません。為替レートはマーケットの中で予想が最も難しいものの1つとされています。将来の為替レートが円高になるのか円安になるのかを正確に予想するのは不可能です。

しかし資産運用で常に考えておくべきことは最悪の事態への対応です。1ドル=120円になることを考える前に、まずは1ドル=200円になったらどうなるのか、そうなる前に何をしておくのかをよく考え、先手を打って準備をしておくことです。

為替レートの変動は想定外のタイミングで急激に一方向に動くことが珍しくありません。2026年の年末の為替レートはどうなっているのか?半年後に答え合わせをしたいと思います。