配当利回りだけでは足りない、「総還元利回り(配当+自社株買いで利回り算出)」に注目

3月の年度末が近づくと、多くの投資家が意識するのが「配当」です。保有している株式から、いくらの配当金を受け取れるのか。2026年で言えば、株式を保有していれば配当を受け取ることができる3月27日の権利付き最終日に向けて、配当利回りの水準などに注目が集まる時期でもあります。

もっとも、今回ご紹介する投資戦略は、単に高配当利回り銘柄を探すだけのものではありません。高い配当利回りに注目することに加えて、もう少し長い視点に立ち、企業がどれだけ株主還元を重視しているかを評価する指標である「総還元利回り」も組み合わせた投資戦略をご紹介します。総還元利回りとは、配当に加えて自社株買いも含めて算出した株主還元の利回りです。

株主還元の基本的な考え方は?

将来の利益拡大につながる投資に活用されてこそ意味のある内部留保

企業が1年間の事業活動で生み出した最終的な利益(純利益)は、最終的には株主に帰属します。株主は企業の出資者であり、企業のオーナーであるためです。もちろん、企業は利益のすべてを配当を通じて株主に直接支払うわけではありません。将来の成長に向けて、設備投資や研究開発、新規事業への投資などに資金を振り向ける必要があります。そのために社内に残しておく資金が「内部留保」です。

ただし、ここで重要な視点があります。内部留保は、将来の利益拡大につながる投資に活用されてこそ意味があります。十分な投資機会がないにもかかわらず、資金を現金や預金のまま積み上げるだけであれば、それは株主にとって必ずしも望ましい姿とは言えません。成長投資に使われない資金は、本来であれば株主に還元されるべき資金でもあるからです。

稼いだ利益のうち「どれだけを株主に直接分配したか」を示す配当性向

企業が株主に利益を還元する最も分かりやすい方法が「配当」です。そして、利益のうち、どの程度を配当として支払ったかを示す指標が「配当性向」です。

配当性向は「支払配当総額 ÷ 純利益」で求められます。例えば純利益100億円の企業が50億円を配当として支払えば、配当性向は50%となります。この数字は、「稼いだ利益のうち、どれだけを株主に直接分配したか」を示しています。

投資判断の際の重要な材料となる「配当利回り」

一方、投資家の立場から特に重要な指標となるのが「配当利回り」です。配当利回りは「1株当たり年間配当金 ÷ 株価」で求められます。

これは「現在の株価で投資した場合に、年間どれくらいの配当収入が見込めるか」を示す指標であり、預金金利などと比較されることも多く、投資判断の際の重要な材料となります。

自社株買いと総還元利回り

配当と自社株買いは株主還元の二本柱

企業が株主に利益を還元する方法は配当だけではありません。近年、存在感を増しているのが「自社株買い」です。自社株買いとは、企業が市場から自社株を買い戻すことを言います。市場に流通する株式数が減少すると、企業の純利益が同じでも、「純利益 ÷ 発行済株式数」で求められる1株当たり純利益(EPS)は上昇します。EPSが上昇すると株価評価が高まりやすくなり、株主は株価上昇という形でリターンを得ることが期待できます。

整理すると、配当は「現金として直接受け取るリターン」、自社株買いは「株価上昇を通じて享受するリターン」という違いはあるものの、いずれも株主還元の重要な手段であり、株主還元の二本柱といえます。

総還元利回りは株主に対してどれだけの資金を総合的に還元しているかを示す指標

こうした背景から、近年は配当利回りに自社株買いを加味した「総還元利回り」が注目されています。総還元利回りは次式で表されます。

 

これは企業が株主に対してどれだけの資金を総合的に還元しているかを示す指標です。実際に個別銘柄の総還元利回りを計算する際には、年間の自社株買い金額のデータが必要になります。近年は自社株買いの実施を公表する企業が増えており、取得株数や取得金額の上限、さらに3ヶ月から6ヶ月程度などの取得期間なども公表されます。

しかし、実際に年間でどの程度の自社株買いが行われるかを事前に予想することは容易ではありません。そのため、総還元利回りを算出する際には、直前の年度に実施された実績の自社株買い金額を用いられたりします。上式の総還元利回り求める際の分子の配当金についても基準時点をそろえるために実績値を用い、分母の株式時価総額には直近の値を使用して計算します。

配当利回りと総還元利回りを組み合わせた投資戦略

ただし、株価は将来予想を織り込んで動きます。配当については会社側が予想値を公表しているため、予想配当利回りの情報は投資判断において重要な意味を持ちます。

そこで、銘柄選別においては、「予想配当利回り」「実績総還元利回り」という2つの尺度を組み合わせて用いることが効果的と考えられます。

実際に、予想配当利回りと実績総還元利回りの2つの指標を基準とした投資戦略の検証を行いました。金融業を除くTOPIX(東証株価指数)構成銘柄を対象に、毎月末時点のデータを用いて、予想配当利回りと実績総還元利回りの双方が高い銘柄を選別しました。

具体的には、
・今期予想配当利回り4%以上
・総還元利回り6%以上

という2つの条件を満たす銘柄を抽出し、それらに均等投資した場合の翌月以降のリターンを積み上げています。結果を示したのが図表1の青線グラフです。青線は累積リターンを示しており、グラフが右肩上がりに推移していることは、時間の経過とともに収益が安定的に積み上がってきたことを意味しています。すなわち、本戦略によって選別された銘柄群が中長期的に良好なパフォーマンスを示してきたことが確認できます。

【図表1】「高配当利回り」で「高総還元利回り」銘柄の累積株式パフォーマンス
注1:データ期間は2015年1月から2026年2月(但し2026年2月は20日までのリターンとする)、データサイクルは月次
注2:母数はTOPIX構成銘柄(但し、金融業として「銀行業」「証券、商品先物取引業」「保険業」「その他金融業」に該当する銘柄は除く)
注3:今期の予想配当額は会社予想値を用いる
注4:毎月末時点で「予想配当利回りが4%以上」「実績総還元利回りが6%以上」の銘柄に等金額投資した場合の翌月のリターンを算出して絶対パフォーマンスは2015年1月以降を累積している。超過パフォーマンスは対象となる月の母数全体に等金額投資した場合のリターンを引いた超過分を求めて2015年1月以降累積している
出所:QUICK Workstation Astra Managerを用いて、マネックス証券作成

さらに図表1の赤線グラフでは、選定銘柄群のリターンから母集団全体(金融業を除くTOPIX構成銘柄)の平均リターンを差し引いた「超過リターン」の累積を示しています。こちらも右肩上がりの形状となっており、本戦略が市場平均を継続的に上回る成果を上げてきたことが読み取れます。

銘柄スクリーニング結果は?日本郵船(9101)、丸井グループ(8252)など6選

そこで、マネックス証券のウェブサイトで提供している「銘柄スカウター」の10年スクリーニング機能を利用し、「今期予想配当利回りが4%以上」かつ「総還元利回りが6%以上」の銘柄を抽出しました。

対象は、金融業(「銀行業」「証券・商品先物取引業」「保険業」「その他金融業」)を除く企業とし、一定の流動性を考慮して東証プライム市場に上場し、時価総額1,000億円以上の銘柄に限定しています。

さらに業績面の健全性を確保するため、
・実績ROEが8.00%以上
・来期の営業増益率が3.0%以上

こうした条件は、企業の収益力と成長力を確認するとともに、減配リスクに対して一定の配慮を行うことを目的としています。抽出された銘柄を図表2に示しました。投資の参考にしてみてください。

【図表2】スクリーニング結果(予想配当利回りの降順)
[基礎条件]
市場:東証プライム、業種:水産・農林・鉱業・建設・食料品など、時価総額:1,000億円~
[詳細条件]
[指標]総還元利回り(前期実績):6.00%~、[指標]予想配当利回り:4.00%~、[指標]実績ROE:8.00%~、[来期コンセンサス]増益率(営業利益):3.0%~・3人以上
出所:マネックス証券ウェブサイト マネックス銘柄スカウター(2026年2月24日時点)を用いてマネックス証券作成

具体的なスクリーニング入力項目は(図表3)に示しています。みなさんも参考にしてみてください。

【図表3】スクリーニングの条件設定画面
出所:マネックス証券ウェブサイト 銘柄スカウター (ログイン後 ― 投資情報 ―ツール― マネックス銘柄スカウター ― 10年スクリーニング、2026年2月24日時点)