3月期決算企業の決算発表シーズンが本格化しています。ゴールデンウィークを挟み、5月中旬にかけて発表が集中するこの時期は、市場の関心が個別企業の業績へとシフトしやすい局面です。
決算発表における重要なポイントの1つが、会社側が示す業績予想のスタンスです。決算発表では今年度(2027年3月期)の会社計画が提示されますが、その期初計画の水準が市場予想と比べて強気なのか、それとも保守的なのかによって、株価の反応は大きく異なります。そこで今回は、この「会社側の業績予想スタンス」に着目した、投資戦略を紹介します。
決算発表で問われる「期初計画のスタンス」
「強気」「保守的」のスタンスとは?
期初の会社計画が「強気なのか、それとも保守的なのか」を判断するための市場予想としては、アナリストコンセンサスが一般的に用いられます。アナリストコンセンサスとは、複数の証券会社のアナリストが予想した利益を平均したものであり、市場が現時点でどの程度の業績を期待しているのかを示す目安と捉えられます。
本決算で会社が公表する今年度(2027年3月期)の営業利益の期初予想が、このコンセンサスを下回っている場合には「保守的」、上回っている場合には「強気」の予想スタンスと整理できます。
一般に「強気」な期初計画は、市場の想定以上に業績を伸ばす見通しを示していることを意味し、足元の経営環境が市場の見方よりも良好である可能性や、企業として高い成長を目指す姿勢を反映していると考えられます。そのため、決算発表直後の株価は上昇しやすい傾向があります。
強気が株価上昇につながるとは限らない理由
しかし、強気な期初計画が必ずしもその後の株価上昇につながるとは限りません。企業によっては、達成が難しい水準をあえて掲げるケース、いわば努力目標として高めの計画を提示する場合もあります。
こうした場合、決算発表直後にはポジティブに評価されて株価が上昇しても、その後の業績進捗を踏まえて未達の可能性が意識されると、中期的には株価が下落しがちです。また、例年強気な計画を掲げながら未達に終わる傾向の企業は、そのパターンが市場に認識されており、強気な決算発表であっても株価の反応が限定的となります。
保守的がネガティブとは限らない理由
対照的に、会社が公表する今年度(2027年3月期)の営業利益の期初計画がコンセンサスを下回る「保守的」な企業の株価はどうなるでしょうか。一般に「保守的」な計画は、足元の経営環境が市場の見方よりも弱い可能性や、成長に対する姿勢が慎重であると受け止められ、決算発表直後の株価は下落しやすい傾向があります。
しかし、「保守的」という評価は必ずしもネガティブとは限りません。見方を変えれば、会社側が期初計画を慎重に設定しているとも捉えられます。実際には経営環境が市場の想定と比べて悪くないにもかかわらず、期初の計画は控えめに公表し、その後、業績の進捗に応じて段階的に上方修正していく企業も少なくありません。
このような企業では、最終的に今年度(2027年3月期)の決算が発表される来年のこの時期にかけて、会社計画と比べて営業利益が上振れて着地(上方着地)するケースが見られます。そして、業績の進捗とともに上方修正が重なることで、株価も時間をかけて見直され、上昇していく傾向があります。
「保守的計画×上方着地」の繰り返しに注目
今回取り上げる投資戦略は、これから本格化する決算発表において、今年度(2027年3月期)の営業利益について保守的な期初計画を示す企業に着目するものです。そして、最終的に来年の今頃に発表される決算において、期初計画に対して今年度(2027年3月期)の営業利益の上方着地が期待される銘柄を選別することを目的とします。
重要な2つのポイントとは?
ここでは2つのポイントが重要となります。1点目は「今年度(2027年3月期)の営業利益について保守的な期初計画を示す企業」をどのように特定するかです。本稿では、これから5月中旬にかけて本格化する決算発表において、営業利益の期初計画がアナリストコンセンサスを下回る銘柄に絞り込むこととします。
2点目は「期初計画に対して今年度(2027年3月期)の営業利益が上方着地する可能性が高い銘柄」をさらに選別することです。では、こうした銘柄はどのように見つければよいのでしょうか。
実は、保守的な期初計画を示しながら最終的に上方着地する企業の中には、同じ傾向を繰り返すケースが少なくありません。これは、会社側が例年慎重な計画を打ち出すスタンスを持っている企業が存在するためです。
2つのポイントを加味した抽出条件
そこで本稿では、こうした特徴を持つ企業を抽出するために、次のような条件で絞り込みを行います。
図表1では、2025年3月期の決算を例に、本稿で用いる考え方を説明します。
まず、「期初計画が保守的」とは、前期である2024年3月期の決算発表時点で会社が公表した2025年3月期の営業利益の期初計画が、アナリストコンセンサスを下回っている状態を指します。
そのうえで、2025年3月期の決算発表において実際に公表された営業利益が、この期初計画を上回る、いわゆる「上方着地」となった企業を抽出します。本稿では、直近の実績としてすでに結果が確認できる2025年3月期決算を例に説明していますが、分析においてはさらに一歩踏み込み、こうした「保守的な期初計画から上方着地に至る」というパターンが、2024年3月期、さらにその前の2023年3月期と、3年連続で確認できる企業に絞り込みます。
スクリーニングの結果は?第一三共(4568)、セコム(9735)など参考銘柄リスト
その結果が、図表2に示した銘柄リストです。対象は、TOPIX500構成銘柄のうち、金融業(銀行業、証券・商品先物取引業、保険業、その他金融業)を除外した企業としています。そのうえで、対象期間を通じて変則決算を行っていない3月期決算企業に限定し、さらにQUICKコンセンサスが取得可能な銘柄の中から選別しています。
注2:対象は、TOPIX500構成銘柄のうち、金融業(銀行業、証券・商品先物取引業、保険業、その他金融業)を除外した企業。そのうえで、対象期間を通じて変則決算を行っていない3月期決算企業に限定し、さらにQUICKコンセンサスが取得可能な銘柄の中から選別
注3:証券コード順
出所:QUICK Workstation Astra Managerを用いて、マネックス証券作成
今回の投資戦略の有効性は?翌年のパフォーマンスに注目
今回の投資戦略の有効性を検証するために、過去4年間にわたり「保守的な期初計画から上方着地に至る」傾向が続いた企業について、翌年においても同様のパターンがどの程度継続するかを確認しました。
具体的には、2021年3月期から2024年3月期までの4年間において「保守的な期初計画から上方着地に至る」企業は、2025年3月期において保守的な期初計画を示した企業のうち73%が上方着地となりました。また、2020年3月期から2023年3月期までの4年間において同様の傾向が見られた企業では、2024年3月期において86%が上方着地となっています。
このように、「保守的な期初計画から上方着地に至る」傾向が4年連続で確認される企業は、翌年においても保守的な期初計画を示した場合、高い確率で上方着地に至る傾向が確認できます。こうした結果を踏まえると、図表2に示した銘柄群は、2027年3月期においても「保守的な期初計画から上方着地に至る」可能性が高い候補と考えられます。
実際の投資での適用方法と留意点
ただし、実際の投資にあたっては、その適用方法を改めて整理しておく必要があります。というのも、現時点では2026年3月期の決算発表が完了していないため、図表2の銘柄が4年連続の条件を満たすかどうかは、今後の決算発表を待って確認する必要があります。現段階では、2025年3月期までの3年連続で「保守的な期初計画から上方着地に至った」企業にとどまります。
具体的な判断方法は図表3に示していますが、大きく2つの確認が必要となります。
1つ目は、2026年3月期の決算発表において実績営業利益が明らかになった段階で、図表2に示した「期初会社計画営業利益(2026年3月期)」に対して、図表3の赤枠で示した「2026年3月期 実績営業利益」が上回っているか、すなわち上方着地となっているかを確認する点です。
2つ目は、2027年3月期の期初計画のスタンスです。図表2の「コンセンサス予想 営業利益(2027年3月期)」と比較して、図表3の茶枠で示した「期初会社計画営業利益(2027年3月期)」が下回っている、すなわち保守的な計画となっている企業に絞り込みます。
これら2つの条件を満たす企業は、2027年3月期に向けて業績の上方修正期待が高まりやすく、株価の見直し余地も期待できることから、有力な投資候補となり得ます。
最後に重要なポイントとして投資タイミングがあります。一般に、保守的な業績予想を示した企業は決算発表直後に株価が下落しやすく、その後の調整局面を経た1ヶ月前後が投資タイミングとなりやすい点も押さえておきたいところです。ご参考ください。
「銘柄スカウター」での確認方法
ここからは補足的な説明として、実際に決算発表時に「期初計画に対する上方着地」および「保守的な業績見通し」を確認する具体的な方法を紹介します。
マネックス証券のウェブサイトにある「銘柄スカウター」を利用できる方は、まず「決算スケジュール」タブで、図表2に掲載した銘柄の決算発表日を確認します。そのうえで、2026年3月期の決算発表が終了した銘柄を対象に、以下の手順で確認を行います。
まず、銘柄検索欄に銘柄コードまたは銘柄名を入力し、該当企業のページを開きます。続いて「企業分析」タブに進み、「今期進捗状況」の表示項目を図表4の赤丸で示した「営業利益」に切り替えます。
ここでは、サンプルとして特定の企業の画面を例に説明しています。青丸で示した数値が直近の実績営業利益です。この値を、図表2で示した「期初会社計画営業利益(2026年3月期)」と比較します。実績営業利益が期初計画を上回っていれば、「期初計画に対する上方着地」を達成した企業と判断できます。
次に、「保守的な業績見通し」の確認です。茶丸で示した数値が「2027年3月期の期初会社計画営業利益」、紫丸が直近のアナリストコンセンサスを表しています。
