5万円到達から178日、日経平均6万円台は異例のスピード到達

4月23日の日経平均株価は、取引時間中に史上初めて6万円台に乗せました。世界的にAI半導体関連への需要拡大期待が高まるなか、3月期決算企業の決算発表において国内でもAI半導体関連の大手企業の好決算が評価されたことが主な背景とみられます。

初めて日経平均株価が5万円台に到達した2025年10月27日には、本連載で「日経平均6万円大台も「遠い未来ではない」。足元は、低位株などの出遅れ銘柄に期待」というレポートを取り上げました。そこで「遠い未来ではない」と記しましたが、実際には5万円到達から6万円大台乗せまで、わずか178日しか経過していません。正直なところ、ここまで早い到達スピードは想定を上回るものでした。

振り返ると、日経平均株価の4万円到達から5万円乗せまでは1年と237日を要しており、この5万円大台乗せのスピード自体も、デフレからの脱却が進むなかで実現した速いものでした。

さらに長期で見ると、「失われた30年」と呼ばれるデフレ経済の時代においては、1988年12月に終値ベースで3万円を突破してから、4万円の大台に乗せるまでに35年と96日を要しています。今回の6万円到達は、こうした過去と比較しても異例のスピードであることが分かります。

5万円から6万円台への上昇は約20%の上昇です。仮に3万円台であれば3万6000円までの上昇に相当するため、株価水準が高くなるほど大台乗せのスピードが速まるのは自然とも言えます。ただし、仮に年末にかけて現在の水準を維持することができれば、2026年も20%程度の上昇となり、日本株は4年連続で概ね20%を上回る上昇を記録することになります。2023年(+28%)、2024年(+19%)、2025年(+26%)と3年連続で20%程度か、それを上回る上昇となってきました。

歴史的に見ても、年間20%程度を上回るの上昇が連続して続いたのは、1958年(+40%)、1959年(+31%)、1960年(+55%)の3年間のみです。もし今回4年連続が実現すれば史上初の出来事となります。当時は高度経済成長の黎明期であり、その後の経済拡大を織り込む形で株価が上昇しました。今回もまた、高市政権が掲げる成長戦略――例えば、AI・半導体、デジタル化投資、国内産業基盤の強化といった政策の実現期待が株価上昇の背景にあると考えられます。

高値警戒感はあるが、外部環境と決算リスクをどうみるか

株価の上昇ピッチが速くなると、高値警戒感が指摘されるのは自然な流れです。実際、4月23日の日経平均株価はザラバで6万円を達成した後、5万9000円台へと押し戻されました。これは、大台達成をきっかけに、足元の投資環境を改めて見直す動きが出たためとみられます。

足元の外部環境を見ると、イラン情勢は依然として緊迫した状況が続いており、戦闘終結の見通しは不透明です。イラン指導部内部の分裂観測もあり、収束が長引く可能性も指摘されています。また、仮に正式な停戦が成立した場合でも、ホルムズ海峡に敷設された機雷の除去には半年程度を要するとの見方もあります。戦闘前には60ドル台で推移していたWTI原油価格は、足元では90ドル台まで上昇しており、企業を取り巻くコスト環境はむしろ厳しさを増している面もあります。

さらに、これから本格化する3月期決算企業の決算発表においては、会社側の利益計画(ガイダンス)が市場期待に届かず、株価がネガティブサプライズとなる「ガイダンスリスク」も意識されます。外部環境の不透明感が強いなかで、業績見通しの開示を控える企業が増える可能性もあり、決算シーズンは株価が変動要因となりやすい局面です。

AI半導体相場はバブルか、それとも実需に支えられた成長相場か

現状の株高は、AI半導体バブルなのか?

こうした環境下での株高であるため、「AI半導体バブルではないか」との見方も出てきています。筆者は1989年4月に証券業界に入り、1989年末の資産バブル、そして2000年にかけてのITバブルを経験しています。現在の日経平均株価のPERは20倍台であり、近年対比では割高感を指摘する声もありますが、ITバブル期の2000年3月末にはPERが218倍まで上昇していたことを踏まえると、バリュエーション面での過熱感のレベルは当時とは大きく異なります。

バブル期の特徴の一つは、既存のバリュエーションモデルでは株価を説明できなくなり、新しい評価手法が持ち出される点にあります。1989年前後の資産バブル期には「qレシオ」が注目されました。これは企業資産を時価で評価して株価の妥当性を測るものですが、土地価格そのものがバブルで膨張していたため、その評価を前提とする株価算定は、結果としてバブルを正当化するロジックになってしまいました。

ITバブル期には「リアルオプション」などの評価手法が導入されましたが、将来の不確実性やボラティリティの仮定に大きく依存するため、実務的には理解が難しく、無理に株価を正当化する側面も見られました。

足元の株価はどのように評価すべきか

高市政権の成長戦略への期待も大きいですが、AI半導体関連に関しては、単なる期待先行ではなく、実需の裏付けがある点が重要です。生成AIの普及に続き、AIエージェント、さらにはフィジカルAI(ロボティクスなど)へと発展しており、半導体需要は構造的に拡大しています。ITバブル期のように「将来はすごい世界が来る」という漠然とした期待ではなく、実際の投資や設備需要に基づいた成長期待である点は大きな違いです。

理論株価の観点から見ると、2026年1月22日の本連載で取り上げた「2026年末の日経平均株価は5万9,000円台へ、衆院解散アノマリーとPBROEモデルから検証」という水準は既に達成されています。

今回の6万円台乗せは、将来の成長を一定程度先取りしたオーバーシュートの範囲内と考えられます。
もっとも、理論株価は固定的なものではなく、前提となる成長期待や収益環境の変化に応じて変動するものです。したがって、今後わが国の成長に対する確信が一段と強まれば、理論株価そのものが切り上がり、さらなる上値余地が意識される展開も期待できるでしょう。

このように整理すると、足元の株高は実態を伴った期待に支えられている側面が強く、今後もAI半導体を軸とした株高が相場を牽引する構図は続く可能性が高いと見ています。日経平均6万円という水準には心理的な節目としてのハードルはあるものの、バブル的な過熱でなければ、ここは通過点に過ぎず、次は6万5000円を視野に入れた相場展開も十分に考えられるでしょう。