先週(1月19日週)の動き:内外金価格が連日で最高値更新/NY金5,000ドル接近/国内JPX金初の2万6000円台、店頭小売価格は初の2万7000円台
先週(1月19日週)のニューヨーク金先物価格(NY金)は、週初めの1月19日がキング牧師生誕祭の祝日となった関係で4営業日だったが、連日で史上最高値を更新した。結局1月23日のNY金は4,979.7ドルで終了。一時は4,991.40ドルと5,000ドルに接近するところまで買われた。週足は前週末比384.3ドル(8.36%)の大幅上昇となった。これは2020年2月以来、約6年ぶりの上昇率となる(ブルームバーグ通信)。レンジは4,665.4~4,991.4ドルで、値幅は326ドルと前週(129.7ドル)の倍以上となった。上昇ピッチの加速を表している。
グリーンランド問題を巡る欧米の分断でNY金急騰
前週1月11日にパウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長が異例のビデオメッセージを公開。大陪審への召喚状を受け取ったことを明かし、これはトランプ政権からのFRBに対する政治的圧力を意味するとの見方を表明した。持続的な利下げ圧力の中で沈黙を守ってきたパウエル議長だっただけに、このビデオメッセージの公開について、市場はFRBの独立性への危機感の表れと受け止め、NY金の押し上げ要因として、先週(1月19日週)もなお意識された。
そこに重なるようにトランプ米大統領によるグリーンランド領有をめぐる強硬姿勢が浮上。米欧の亀裂が深まったことで、金市場の買い圧力はさらに高まった。具体的には1月17日にトランプ大統領が、米国のグリーンランド取得に反対を表明している欧州8ヶ国に対し、取得が決まるまで追加関税を課すとしたことで対立の構図が先鋭化した。
連休明け1月20日の米国市場は株安、米ドル安、米国債安(利回り上昇)のいわゆるトリプル安状態となり、NY金は逃避資金を集め、この日は前営業日比170.4ドル上昇となり、大幅高につながった週足の端緒となった。
複数の買い手掛かりが押し上げ要因に
1月21日、トランプ米大統領は世界経済フォーラム(WEF)の年次総会(ダボス会議)に出席した折に、北大西洋条約機構(NATO)のルッテ事務総長と会談。その後、グリーンランドや北極圏に関する将来的な合意の枠組みを構築したと発表したことで市場の動きは沈静化した。
しかし、協議の行方などには根強い不透明感があり、1月23日も安全資産としての金(ゴールド)への資金流入が続いた。米国の空母打撃群を含む戦闘部隊が数日中に中東地域へ到着すると報じられた(1月22日、ロイター)ことも、中東を巡る地政学リスクを意識させることになった。
また1月27~28日にFRB(米連邦準備理事会)が政策決定会合FOMC(連邦公開市場委員会)を予定している中で、その独立性を巡る懸念が継続していることもNY金をサポートした。
回避される伝統的な安全資産米ドルと米国債
IMF(国際通貨基金)のゲオルギエバ専務理事はダボス会議最終日の1月23日、「われわれはよりショックを受けやすい世界にいる」と述べたが、世界の政治経済の不透明性は2025年以上に高まっている。端的にはいずれも米国発のリスク要因であることから、伝統的に安全資産とされてきた米ドル、米国債に資金を振り向けにくくなっている。米国資産を回避した資金が、政治的に中立で信用(クレジット)リスクのない金(ゴールド)に向けられ、NY金を押し上げた。
国内金価格も連日の最高値更新
こうしたNY金の値動きを映す形で国内金価格も1月20日から1月23日に至る4営業日で最高値の更新が続いた。大阪取引所の金先物価格(JPX金)は終値ベースで連日の最高値を更新し1月23日の終値は2万6435円となった。取引時間中の最高値も3営業日で更新し、1月23日の2万6500円が最高値となった。週足は前週末比2040円(8.36%)高の3週続伸となった。レンジは2万4034~2万6500円で値幅は2455円と5%近い上昇となった前週の1598円をさらに上回った。
米ドル/円相場の急変は今週(1月26日週)の価格に影響
1月23日に2日間の日程を終えた日本銀行の金融政策決定会合では、予想通り金利の据え置きが決まった。植田和男日銀総裁の記者会見での発言内容が今後を見据える上で注目されたが、追加利上げに積極姿勢を示さなかったことで、米ドル/円相場は東京市場の取引で急落。ただその後、数分間のうちに157円前半まで円相場が急騰するなど、値動きの荒い展開となった。
当局が為替介入の前段階となる「レートチェック」を実施したとの見方が広がったが、それが明らかになったのは、その後のNY時間のお昼のことだった。
JPX金は日中取引を終えており、この米ドル/円相場の急騰(円急落)が反映されるのは、夜間取引の価格となる。当欄では本日1月26日の価格として反映されることになる。
なお金現物取引の店頭小売価格も、先週(1月19日週)は週初めから5営業日すべてで最高値を更新した。標準的な価格は、10%消費税込みで1月23日に初めて2万7000円台に乗せ、2万7762円となった。2025年末(2025年12月26日)の2万4968円からは、2794円(11.19%)の上昇となる。
今週(1月26日週)の動き:FOMCよりFRBを取り巻く状況の変化に注目/米国発の多くの要因が押し上げる金価格(マクロ型上昇相場)
今週(1月26日週)は1月27~28日の日程でFOMCが予定されているが、金利の据え置きが広く予想されている。その中でも利下げを主張し反対票を投じる理事が出ると考えられる。トランプ政権によるFRBへの圧力が続く中で、今週(1月26日週)中に次期議長と目される人物が指名されるとみられ、それが誰なのかということも注目材料となる。
先週1月21日には、トランプ米大統領が解任を通告したことで裁判が続いているリサ・クック理事に対する最高裁での口頭弁論が行われた。パウエル議長は傍聴人として出席し話題となった。保守派とリベラル派、双方の判事はトランプ米大統領によるクック理事の解任に懐疑的な姿勢を示した。これにより、クック氏を解任できないとした下級審の決定が覆される可能性は低いことが示唆された。
米国を取り巻く「内憂外患」の世界的な影響
なお、すでに取引が開始されている本日1月26日のNY時間外のNY金は、アジア時間の寄り付きが5,113.40ドルのジャンプスタートで初の5,000ドル台に乗っている。その後も買いが先行する流れが続き、日本時間の1月26日13時の時点までで一時5,091.50ドルの高値を付け、さらに最高値を更新している。
買い手掛かりは複合的で複合要因によるマクロ型の上昇が続いている。一言で表すなら米国を取り巻く「内憂外患」が世界の政治経済に与える影響を懸念した金(ゴールド)の買いが続いている。
複数のリスク要因の重なり
地政学リスクではイランを巡る中東情勢の緊迫化がある。米エイブラハム・リンカーン空母打撃群が数日中に中東に到着する(ロイター)とみられ緊張が高まっている。さらにグリーンランド問題の先行き不透明感に加え、ミネソタ州ミネアポリスでの騒乱を巡る連邦政府と州政府の対立分断もある。この問題は1月31日に期限が迫る2026年度連邦政府のつなぎ予算の審議にも影響を与えている。再び連邦政府機関の閉鎖もあり得る状況だ。
また直近の一連の動きが対中融和を思わせるカナダへ、100%の関税を賦課するというトランプ米大統領の発言。加えてFRBの独立性に関連して、月内に予想される次期FRB議長の指名問題など、先行きの不確実性の高まりが手掛かりになっている。
高値更新および高値圏での滞留が見込まれるNY金
すでに大方の想定を超える上昇となっているNY金だが、多くの個別要因がそれぞれ反応し合うことで材料性を高めている。物理的な表現をするならば個々の波長が重なることで、うねりとなり価格を大きく押し上げる状況にある。
NY金の高値更新および高値圏での滞留が今週(1月26日週)も続きそうだ。国内金価格は円高の影響から上値を抑えられるものの、NY金の上昇にサポートされることになると考えられる。
