先週(2月16日週)の動き:NY金は米最高裁トランプ関税違憲判決で週末に急伸、国内金価格は円安が押し上げ

先週(2月16日週)のニューヨーク金先物価格(NY金)は、週足ベースで続伸した。中東地域をめぐる地政学リスクの高まりを受け買い優勢となった。一方で、一連の米国経済指標の堅調さからFRB(米連邦準備制度理事会)による年前半の利下げ観測が後退し、主要通貨に対する米ドル高が売り手掛かりとされた。強弱感が対立し、心理的節目の5,000ドルを挟んだ値動きが続いた。2月20日の取引は5,080.9ドルと5,000ドル超を維持して終了した。後述するように、2月20日に米最高裁は、トランプ米大統領が課した世界的な関税策を違憲と判断した。これにより、先行き不透明感が広がり、押し上げ要因となった。

週足は前週末比34.6ドル(0.69%)高の3週続伸した。レンジは4,854.2~5,131.0ドルで値幅は276.8ドルと、前週(244.5ドル)から拡大した。 

短期投機筋(CTA=商品投資顧問)の持ち分整理が一巡

価格変動の大きさに関連して、NY金の取組(ポジション)の推移を見ると、取引時間中(5,626.8ドル)と終値(5,354.8ドル)でいずれも過去最高値を付けた1月29日の直前、1月23日時点の金額ベースの取組は2705億ドルだった(国際的な金の調査機関ワールドゴールドカウンシル、WGC調べ)。

それが2月13日時点では2062億ドルと、短期間で643億ドル(約24%)も大きく減っているのがわかる。このデータの落差は、今回の急落の程度を物語る。それでも一時は2000億ドル(2月6日時点)まで落ちながら、ここにきて増加している。このことから、短期投機筋(CTA=商品投資顧問)の持ち分整理が一巡したことがうかがえる。

米商品先物取引員会(CFTC)のデータでは、重量換算のファンドのロング(買い建て)は1月27日時点の642.08トンから2月17日時点の480.83トンへと161.25トン(25%)の減少となっている。WGCの金額ベースでのポジションの減少率と整合性があるデータとなっている。

米最高裁トランプ関税違憲判断で週末2月20日高値引け

ただし整理が急激に進んだことから、足元では取引高が細っている(流動性の低下)。前週2月12日から先週2月18日までの4営業日連続で、1日の上下値幅は150ドルを超えていた。それも2月19日には1日の値幅が70ドル台まで落ち着いていたが、週末2月20日には再び拡大し、前日比83.50ドル高の5,080.9ドルで終了。

さらに、その後の時間外で上値を伸ばし一時5,131.0ドルまで付け、時間外取引は5,130.0ドルで週末の取引を終了した。ほぼ高値引け状態でテクニカル上は上昇圧力の強さを示すものとされる。

終盤に買いが先行したのは、2月20日に米最高裁が、トランプ米大統領が国際緊急経済権限法(IEEPA)に基づいて課していた世界的な関税措置の多くについて、大統領権限の逸脱に当たると判断を下したからであった。これまでの各国との関税取り決めへの影響や追加関税の返還を求める動きが出る可能性、その米国財政への影響など、不透明要因が膨らみ、買いを促したとみられる。

最終段階の駆け引き続く米・イラン関係

米国とイラン間で高まる軍事的緊張も金市場ではリスク要因として意識されている。報じられているように、トランプ米大統領は中東に対し、2003年のイラク攻撃以来となる大規模な戦力を展開している。そのうえでイランに対し、核開発計画を巡る合意(核兵器を保有しないことの確約)を迫っている。一方、イラン側はここまでの経済制裁の解除に加え「平和目的の核濃縮は主権的権利」として、米国にその承認を求めている。

核放棄に無条件で応じないイラン政府に対し、トランプ米大統領は、2月19日、「残された時間は最大でも10~15日間だ」と述べるなどプレッシャーを強めている。さらに2月20日には、「数日以内にも、規模を限定した軍事攻撃に踏み切る可能性がある」と述べ、イラン側の反発を招いた経緯がある。ここまでの金価格の推移からは、開戦についてある程度織り込みが進んでいる印象が強いのは否めない。

今後発生する事態に対し、慌てずに金融市場や国際政治に対する影響を見極めることになる。金市場の反応は、その予見される影響の度合いにより変わる。

国内金価格は為替要因で上げ幅拡大

先週(2月16日週)の国内金価格は、前週(2月9日週)とは逆に米ドル/円相場が円安方向に大きく振れたことから、NY金の上昇に加え、為替要因から上げ幅を拡大した。大阪取引所の金先物価格(JPX金)は、2月20日の終値が2万5886円だった。

週足は前週末比718円(2.85%)高で続伸した。なお、この終値2万5886円は先週(2月16日週)の高値でもあり、いわゆる週足高値引けとなった。時差の関係で、その後のトランプ関税の違憲判断を受けた2月20日のNY金の上昇分は反映されていない。米ドル/円相場は前週末比2.36円の米ドル高・円安となった(FactSet)。

今週(2月23日週)の動き:トランプ関税違憲に対するEUの反応とイラン情勢への影響、FRB高官発言に注目/NY金終値での最高値更新が視野に

日本が天皇誕生日で祝日だった2月23日のNY金は、NY時間外のアジア時間から買いが先行し5,128.8ドルで取引を開始した。その後も高値追いを続け、結局2月20日終値比144.7ドル高の5,225.6ドルで終了した。

トランプ米大統領は2月20日の米最高裁による違憲判決を受け、多くの貿易相手国と貿易協定で合意したにもかかわらず、対抗措置として1974年通商法122条に基づき各国からの輸入品に150日の期間限定で10%課税する大統領令に署名。2月21日にはその税率をさらに15%に引き上げると表明した。

週明け2月23日の大幅続伸は、各国の反応が見えない中で矢継ぎ早に代替策が発表されたことが背景にある。通商政策を巡る不透明感の高まりとともに、株式市場ではリスクオフ(リスク資産回避)による株安が進み、これも買いを促した。通商交渉に関しては、米国に対し一時強硬姿勢を押し出していた欧州連合(EU)の反応に注目したい。

またトランプ米大統領にとっては、11月の中間選挙を控える中で、2期目のコアな政策が後退することになった。支持率維持の観点からも、今後どのような手段を講じるのか気がかりだ。外交攻勢を強め、結果的に地政学リスクが高まる可能性が考えられる。イラン情勢は要注意と言える。

FRB関係者の発言に注目

こうした政治要因からの影響が強まっているが、今週(2月23日週)は多くのFRB(米連邦準備理事会)高官の発言機会が予定されており、その内容にも注意したい。FRB内部では、意見の割れが伝えられている。次期議長の下で、年後半以降のFRBの運営が支障なく進むのかという点など、見どころは多い。2月23日には、さっそくウォラーFRB理事が1月の米雇用統計にて雇用者増加数が予想を大きく上回る13万人増になったことを「サプライズだった」と表明。2月の米雇用統計(3月6日発表予定)で同様の傾向が示された場合、3月のFOMC(米連邦公開市場委員会)での金利据え置きの可能性があると表明した。

NY金は先週、5,100ドル前後を上値としたが、週明け2月23日にクリアしたことで、終値での最高値(5,354.8ドル)更新が視野に入ってきた。想定より展開が早いのは否めない。それに連れてJPX金は2万6000円を挟み上下に1000円程度のレンジを想定する。値動きの荒さに要注意と言える。