変わる日本企業の配当政策と株価への影響

近年、日本企業は配当金の支払い額を増やしています。決算発表を機に増配を発表した企業の株価は、その直後から大きく上昇するケースが目立ちます。

単に配当金を増やすだけでなく、多少業績が落ち込んでも配当金の支払いを減らさない(減配しない)累進配当にすることを宣言したり、DOE(自己資本配当率)を明示して業績と配当金の連動性を弱めたりするなど、株主を意識した配当政策を示すことが増えています。

日経平均株価を例にとると、2024年末の日経平均の1株あたり配当金の支払額は790円ほどでした。それが1年後の2025年末には940円近くになっています。1年間で+20%近い上昇ですので、かなりの高率と言えます。

「曖昧な内部留保」から「明確な還元」へ、コーポレートガバナンス改革の成果

企業が配当金の支払いを増やしている理由としては、ひとつにはコーポレートガバナンス改革が成果を表している点が挙げられます。

2014年にスチュワードシップ・コード、2015年にはコーポレートガバナンス・コードが導入され、企業は株主との関係が本質的な部分から変化し始めました。

余剰資金が社内にあれば「なぜ株主に還元しないのか」という点を説明する義務を負うようになり、それまで説明されていた「将来への投資のため」、「内部留保を厚くする必要があるため」という曖昧な理由が通用しなくなりました。

企業の成長投資に使わない現金は配当金や自社株買いで株主に還元する、という方針が資本政策として定着したことが大きいと思われます。これには社外取締役の増加や機関投資家との対話が果たした役割も大きいはずです。

「失われた30年」を経て強化された財務体質と現預金の蓄積

それとともに「失われた30年」と称されるデフレの時期を経て、日本企業の財務体質が強固になった点も見逃せません。過去20年以上にわたって、日本企業はデフレと日本型不況に対処するために現金を積み上げて、自己資本比率を向上させました。

それが現在、過剰なまでの現預金の積み上げとなっており、営業キャッシュフローの範囲内で設備投資と研究開発を行っても、なお現金が余るという状態になっています。長引く低金利で資金調達も容易になっており、企業の倒産リスクはかなり限定的なものにとどまっています。過剰な内部留保の積み上がりが株式市場における株価のディスカウント状態を招いていると、企業が自覚し始めたことが近年の配当金の支払い増加につながっているとも考えられます。

日本企業が置かれている経済環境が構造的、根本的に変わっていることが配当金の増加となっているのであれば、この傾向はまだしばらくは続くものと考えられます。配当金の支払い余地の大きな企業はそれだけで投資妙味があるとみられるでしょう。

安定配当が期待できる銘柄をピックアップ

双日(2768)

総合商社の一角。2003年に日商岩井とニチメンが経営統合して誕生。ボーイングの日本総代理店であることから航空機ビジネスの強さが特徴で、自動車、木材、肥料にも強い。ニオブ、クロムなどのレアメタルで独自のサプライチェーンを構築。豪州企業と連携してレアアースの安定供給体制を目指す。金属リサイクルも扱う。

【図表1】双日(2768):週足チャート(移動平均線 緑色:13週、橙色:26週)
出所:マネックス証券ウェブサイト(2026年1月15日時点)

第一実業(8059)

機械商社よりも幅広い「エンジニアリング商社」を標榜。新工場の立ち上げ、メーカーや機械設備の選定、構想設計、プロジェクト管理まで製造現場の様々なニーズに即応する体制を持つ。カバー範囲は化学プラント、半導体、バッテリー製造装置、エネルギー、産業機械と幅広い。物流の自動化にもかかわる。

【図表2】第一実業(8059):週足チャート(移動平均線 緑色:13週、橙色:26週)
出所:マネックス証券ウェブサイト(2026年1月15日時点)

ひろぎんホールディングス(7337)

広島県を地盤とする有力地銀。広島、岡山、山口、愛媛を中心に、中国・四国地域では最大規模を誇る。広島県内での貸出金シェアは3割半ばに達する。地元広島は自動車、海運、造船業が盛んで製造業の拠点が多いのが特徴。今や2010年10月の持株会社化からは連続して増配を継続中。

【図表3】ひろぎんホールディングス(7337):週足チャート(移動平均線 緑色:13週、橙色:26週)
出所:マネックス証券ウェブサイト(2026年1月15日時点)

しずおかフィナンシャルグループ(5831)

中核である静岡銀行は地銀上位行で静岡県では断トツの存在。自己資本比率もこの5年間は16~18%に達し全地銀中のトップクラス。財務体質はきわめて良好。その分審査に厳しいのも特徴。2022年10月に持株会社制へ移行し、自己株買いを含む総還元性向50%を掲げる。連続して増配を実施。

【図表4】しずおかフィナンシャルグループ(5831):週足チャート(移動平均線 緑色:13週、橙色:26週)
出所:マネックス証券ウェブサイト(2026年1月15日時点)

有望な銀行セクター:構造的制約の解消と地方銀行のポテンシャル

今後も安定した配当金の支払いが続くとみられる代表的な業種は銀行セクターです。中でも地方銀行はまだ割安な銘柄が多く存在するとみられます。その理由としては、長年にわたって配当金の支払いを抑制してきた構造的な要因が消えつつあるからです。

日本の銀行は低く抑えられた金利水準と自己資本比率などの銀行規制に縛られて、利益が出にくく、利益が出ても配当金を引き上げにくい状況でした。それがマイナス金利は解除され預金と貸出金の利ざやは確実に改善し、倒産件数はそれほど多くなく与信にかかる費用も落ち着いています。

自己資本はすでに国際レベルを上回っており、それにもかかわらずPBRは1倍を下回る企業が多い状況にあります。横並び意識の強い業界ですが、今後は各銀行の判断で配当性向の引き上げや自社株買いを行うケースが増えるとみられます。業績が上向いている間は増配が継続しやすいセクターと言えるでしょう。