先週(12月1日週)の振り返り=一時154円台前半まで米ドル反落が続く

日銀利上げ報道などに反応=なぜ急に円買い材料に過敏になったのか

11月下旬から米ドル/円が反落した流れは先週も続き、米ドル/円は一時154円台前半まで下落しました(図表1参照)。日銀が12月の金融政策決定会合で利上げに動くとの報道が円買い材料になることが多かったようです。

【図表1】米ドル/円の日足チャート(2025年10月~)
出所:マネックストレーダーFX

日銀が利上げに動くと予想される一方で、米国では今週予定しているFOMC(米連邦公開市場委員会)で利下げするとみられています。このため、日米の金融政策を反映する2年債利回り差(米ドル優位・円劣位)は縮小し、米ドル/円はそれに素直に反応して下落した形となりました(図表2参照)。

【図表2】米ドル/円と日米2年債利回り差(2025年9月~)
出所:LSEG社データよりマネックス証券が作成

ただし、11月下旬にかけて157円まで米ドル高・円安が進んだ局面でも、日米金利差が拡大したわけではありませんでした。ではなぜここに来て、米ドル/円は日米金利差縮小に反応し、反落するところとなったのでしょうか。

年末にかけ米ドル反落の傾向=円売りポジション手仕舞いが主因か

ここ数年、11、12月と米ドル/円は陰線(米ドル安・円高)になることが多くなっていました(図表3参照)。これは年末にかけて円売りポジションの損益確定に動く影響が大きかったと考えられます。

【図表3】米ドル/円の月足チャート(2022年~)
出所:マネックストレーダーFX

円売りポジションを持っているトレーダーは、年内さらに円安が進む可能性が低いと考えたら、逆に円高に動いて利益が減る前に円の買い戻しに動こうとするでしょう。このため、ここに来て日銀の利上げや米利下げといった米ドル安・円高要因に過敏になってきたのではないでしょうか。

代表的な投機筋のポジション・データであるCFTC(米商品先物取引委員会)統計の投機筋の円ポジションは、いわゆる「シャットダウン」の影響で更新が遅れ、まだ2025年10月末時点の結果にとどまっていますが、円は6.8万枚の買い越し(米ドル売り越し)でした(図表4参照)。

【図表4】CFTC統計の投機筋の円ポジション(2022年~)
出所:LSEG社データよりマネックス証券が作成

10月から11月後半にかけて米ドル高・円安が大きく進んだことを考えると、投機筋全体としてはやはり米ドル買い・円売りポジションになっていた可能性があるでしょう。年末までに大きく円高へと戻さないうちに、そうした円売りポジションの利益を確定する動きが広がりだしたことが、ここに来て米ドル安・円高を後押ししたのではないでしょうか。

円売りの主導役、日本の債券売り止まらず=10年債利回りは上昇加速

CFTC統計の投機筋の円ポジションを参考にすると、2024年までの円安局面と異なり、今回の11月に157円まで進んだ円安は、投機筋の円売り主導ではなかった可能性が高いようです。今回の157円までの円安をある程度説明できそうだったのは、日本の長期金利上昇でした。その意味では、今回の円安再燃は、日本の財政リスクへの懸念に伴う債券売りが主導役だったように見えます。

米ドル/円は先週(12月1日週)にかけて少し円高に戻しましたが、債券価格下落に伴う長期金利上昇は止まりませんでした(図表5参照)。10年債利回りはむしろ上昇が加速し、いよいよ2%の大台が視野に入るところとなってきました。この間の円売りの主導役の可能性があった財政リスクを懸念した日本からの資本流出がなお止まっていないとすれば、さらなる円高への戻りも限られる可能性があるのではないでしょうか。

【図表5】米ドル/円と日本の長期金利(2025年9月~)
出所:LSEG社データよりマネックス証券が作成

今週(12月8日週)の注目点=FOMCは3回連続利下げの可能性

FOMCの後も翌週にかけ注目イベントが多い=予断を許さない状況が続きそう

今週は、10日にFOMCが予定されていますが、3回連続で0.25%の利下げが行われるとの見方が強まっています。また今回のFOMCでは、メンバーの経済見通しを示すいわゆるドットチャートも公表されることから、この先の利下げ見通しについても注目を集めることになるでしょう。また今週はこの米国以外でも、カナダ、豪州、スイス、さらにブラジルなど新興国の金融政策発表も予定されています。

例年はこの12月FOMCが年内最後の注目イベントとなり、その後は実質的なクリスマス休暇入りで小動きになることが多いですが、2025年の場合は、翌週(12月15日週)に日銀の金融政策発表が控えていること、そして米11月雇用統計発表も16日に予定されており、さらにトランプ関税に対する最高裁判決の結果発表も金融市場に大きく影響する可能性があることから、まだ予断を許さない状況が続くことになるのでしょう。

今週(12月8日週)の米ドル/円予想レンジは153~157円

円売りポジションの手仕舞いによる円買いは、米ドル高・円安を抑制する要因となりそうです。ただ、日本の財政リスクを懸念した円売りが拡大する可能性もまだ消えてはいないのではないでしょうか。以上を踏まえ、今週の米ドル/円は153~157円で予想します。