相場は値動きの荒い展開が続いています。高値波乱の展開は確かに相場の転換点を示唆する兆しではありますが、一方で日経平均は5万円のラインを意識した展開にも見え、相場の腰は強いとの印象も否めません。特に、積極財政の加速、ガソリン暫定税率廃止など、経済対策に向けた新政権の動きは急であり、こうしたスピード感が与える投資家心理的への効果は大きいと感じています。まだしばらくはバブル懸念解消に向けた日柄調整は必要でしょうが、同時に大崩れもないのではとも考えたいところです。高市首相が自民党総裁に選出される直前の株価(日経平均およそ46,000円)がその判断の目安になるのではないかと想定しています。

「金利のある世界」は揺るぎないものに

さて、今回は「再利上げ」をテーマに取り上げてみたいと思います。金融市場では徐々に再利上げの可能性を論じ始めており、早ければ、12月18・19日の日銀金融政策決定会合にも再利上げがなされる可能性は高まってきていると感じています。

良い機会ですので、ここで改めて金利上昇の影響について整理しておきましょう。ゼロ金利政策解除以降、政策金利はこれまで3回、引き上げられてきました。最初は2024年3月のマイナス金利解除(マイナス0.1%を0.1%へ)、次が同年7月(0.25%へ)、そして直近は2025年1月(0.5%へ)です。最初のマイナス金利解除を異常事態の解消として除いて考えると、次回に利上げがあれば、実質的な金利上昇はこれで3回目となります。「金利のある世界」の定着は揺るぎないものとなりつつあると言えるでしょう。

長くデフレにさいなまれていた日本経済でしたが、金利政策面においても一つの時代の区切りがこれで明確になるのではと考えています。「金利がない世界」をずっと見てきた者としては、つくづく感慨深いものがあります。

金利上昇で予想される3つの影響

まず、金利上昇で直観的に予想される影響は次の3つです。(1)物価、特に資産価格の沈静化、(2)円高、そして(3)景気のスローダウンです。これらは密接に結びついており、相互に影響し合い、原因と結果が入れ替わる関係でもあります。わかりやすく考えれば、金利が上れば金利収入が増える(あるいは支払金利負担が重くなる)ために消費インセンティブが低下し、モノ・カネの動きが鈍くなり、景気には逆風が吹く、ということです。

為替も同様で、金利収入を踏まえると、高金利の通貨を持っておきたいとの動きが通貨高を招くというわけです。特に資産価格などの現在価値は将来価値を金利などで割り引いて算出しますが、割り引く金利が上昇すれば、現在価値はそれだけ減少してしまうという構図になります。

為替はさておき、景気鈍化を招く金利上昇にはデメリットしかないようにも見えるかもしれません。それでも利上げに踏み切るのは、過熱する景気や物価を程よく緩和させるという政策的意図を明確にさせるためです。今回で言えば、円安の進行や物価高騰に対し、中央銀行として何らかの対応を取るのではないか、という観測が強まっていると言えるでしょう。

2種類の金利:市中金利と政策金利

なお、金利には市中金利と政策金利の2種類が存在します。市中金利は長期金利を中心に国債などの流通市場で日々マーケットが決めるのに対し、政策金利は短期金利を対象に中央銀行が決定しています。

もちろん、この両者は連動しており、一般的には政策金利がまず決定され、それに市中金利が連動するという流れとなります。例外的に市中金利が先回りして動き、政策金利の変更を促すこともありますが、そうなると中央銀行は市場に対して影響力を発揮しづらくなってしまいます。そのため、中央銀行は常に市中金利の動向よりも一歩先んじて動くことが求められます。

この「一歩先んじて」は本当に重要で、あまり利上げが早すぎると景気の腰を折ってしまったり、利下げが遅すぎるとバブルを助長させてしまいかねません。しかも、金利変動を決定してもそれが実態経済に反映されるまでには数ヶ月を要するため、その効果はすぐに見えません。まさに中央銀行の景気への感度と目利き力が問われることになります。

現在の短期の市中金利はおよそ0.8%という水準にあり、前回の利上げ時点と比較すると0.3ポイント程度上昇しています。長期金利に至っては、同期間で0.6ポイント程度も上昇しており、市中金利との差を見る限りでは既に政策金利の引上げが促されている状況と言えるでしょう。「利上げがあるかどうか」ではなく、「利上げはいつか」に焦点が移っていると指摘されているのにはこうした背景があります。

金利上昇時の王道の選択、銀行株

では、金利上昇時にはどのような企業への株式投資が有効でしょうか。当連載で2024年に金利上昇をテーマにした回で取り上げた銘柄群は引続き有効で、中でも王道の選択は銀行株でしょう。金利上昇時は貸出金利と調達金利の利ザヤが拡がり、本業の収益力が高まりやすいためです。三菱UFJフィナンシャル・グループ(8306)、三井住友フィナンシャルグループ(8316)、みずほフィナンシャルグループ(8411)、三井住友トラストグループ(8309)、りそなホールディングス(8308)といったメガバンクを筆頭に、地方銀行各行もそのメリットを享受できる余地がありそうです。

加えて、地銀ではPBR1倍割れ状態の早期解消に向けての取組みや事業環境悪化を受けて再編を推進する動きもあります。これらが金利上昇メリットと重なる可能性を考えると、地銀業界もやはり要注目と言えるでしょう。

金利上昇、円高時にメリットを享受できる銘柄は?

銀行株以外では、食品や資源関連企業を挙げたいと思います。これらは金利上昇メリットを直接受ける業界ではありませんが、金利上昇を契機に円高転換となれば、輸入コストの低下が期待できます。具体的には、食品では輸入比率の高い大豆を多く使用する日清オイリオグループ(2602)、J-オイルミルズ(2613)、不二製油(2607)などが挙げられます。

資源関連では石油元売りのENEOSホールディングス(5020)、出光興産(5019)、コスモエネルギーホールディングス(5021)などが挙げられるでしょう。金利上昇で円高が進んだ際の別の切り口として参考にしていただければ幸いです。