日経平均株価は破竹の勢いで上昇しました。前回のコラムでは「総選挙の行方は、かなり市場に織り込まれている印象です。総選挙後は政策加速などへの期待がむしろ高まるのではないか」と指摘しました。結果として予想を大きく上回る展開となり、日経平均は史上最高値をさらに更新し、58,000円超えも記録しています。
衆院解散前のコラムでも「強気派からは、日経平均6万円を目指すといった声も出始めるかもしれません」と述べましたが、いまやそれも絵空事とは言えない状況です。懸念されていた金利や為替も、落ち着きを取り戻してきた印象です。この追い風を受けて、高市政権が政策議論を加速する可能性は高いでしょう。そうなれば、市場の評価がさらに高まるという好循環が発生するのではないかと期待したいところです。ただし、株価の上昇ペースが極めて速いことは否めません。どこかで日柄調整が入る可能性は、しっかりと認識しておくべきでしょう。
選挙圧勝で加速する「日本成長戦略」。物流の要に注がれる熱視線
さて、今回は「港湾ロジスティクス」をテーマに取り上げてみましょう。これは高市政権が設置した「日本成長戦略本部」で定められた17の重点投資分野の1つに挙げられたテーマです。高市政権は総選挙で歴史的な圧勝となりました。今後、重点投資への注力が加速すると考えれば、このテーマも株式市場で注目されるのではないかと想像します。
一般に港湾ロジスティクスとは、港における物流インフラと、その運用を総合的に最適化する取り組みを指します。港は輸出入貿易の要であり、日本にとっては極めて重要な社会基盤です。日本は島国ということもあり、国土交通省によると実に輸出入の99.6%(重量ベース)を海上輸送が担っています。
国内輸送についても、経済産業省の調べでは重量ベースで44%が内航船(海上輸送)によるものとされています(残りは自動車や鉄道による輸送)。また、長距離になるほど海上輸送が選択されやすいという指摘もあります。海上輸送がひとたび支障をきたせば、我々の日常生活や産業のサプライチェーンにも多大な影響が及ぶことは想像に難くありません。
「滞らせない港」の実現へ。ハード・ソフト両面で進むロジスティクス革新
港ではかなりの物量が日々行き来しています。港湾におけるコンテナ取扱量は2024年で約2,200万TEU(20フィート換算)にのぼります。単純計算では、一日当たり6万TEUのコンテナが陸揚げ、あるいは船積みされていることになります。現実には、これに自動車専用船による輸出入など、コンテナを使用しない貨物も少なくありません。そのため、港での日々の貨物ハンドリングは極めて多忙な状況にあります。
陸揚げ・船積み作業を滞りなく進めなければ、あっという間に海上輸送は目詰まりを起こしてしまうでしょう。当然、陸揚げした貨物は迅速に港の外へ搬出し、船積みする貨物はスムーズに港内へ運び込む必要があります。あわせて、それを支える陸送設備も重要になります。
埠頭建設や水深拡張といった港そのものの整備だけでなく、物流をいかに効率的にコントロールするかも重要です。港湾ロジスティクスという言葉はこれらを包括した概念なのです。
空港の二の舞を避け、海上輸送での「巻き返し」を狙う
政権が港湾ロジスティクスを重点投資分野と位置付けるのは、国際競争力の強化に繋がるカギだからでしょう。実際、サプライチェーンを支えるロジスティクスの充実があれば、輸出入にかかる手間が抑制されるうえ、リスク対応コストも低減できます。ひいては経済安全保障や災害時対応を含めた国土強靭化にも直結するものと言えるでしょう。
ヒト・モノ・カネ・情報の動きがスムーズになれば、日本の港を東アジアにおける拠点港(ハブ港)に押し上げる可能性も出てきます。こうした取り組みによる経済効果も期待したいところです。
実際、上海やシンガポール、香港といった国際的なハブ港は、日本の総取引コンテナ数を上回る貨物を、1ヶ所で処理できる能力を有しています。前段では、日本の港が数多くのコンテナを取り扱っていると述べました。しかし、日本の個々の港は世界基準ではかなり低いランキングにあるのが実態です。
背景には、日本の港は水深が浅く規制が多いという構造的な問題や、使用コストが高いという経済的な問題があり、ハブ港化の足枷となってきました。しかし、港湾ロジスティクスを強靭化し、これらの問題を緩和・解消できれば、ハブ港化の道筋も見えてくるのではないでしょうか。
かつて日本は、東アジアのハブ空港としてのポジションを近隣国に奪われた苦い経験があります(今でも当時の出遅れを取り戻せていません)。日本経済を成長軌道に乗せるためにも、輸出入の核である海上輸送での巻き返しは、必須だと言えるでしょう。
よりスムーズな港湾運営には、DXを活用したスマート化も欠かせません。少子高齢化の進む日本において、こうした生産性の向上も競争力の底上げにつながると想像します。
倉庫、港湾土木、海運・陸運…テーマを牽引する注目銘柄群
では、株式投資という観点ではどのような企業が浮かび上がってくるでしょうか。
まずは港湾インフラのど真ん中となる倉庫産業でしょう。倉庫産業は荷物の保管・荷役・流通加工で、ロジスティクス全般を請け負っています。三菱倉庫(9301)、三井倉庫ホールディングス(9302)、上組(9364)、キユーソー流通システム(9369)、住友倉庫(9303)、日本トランスシティ(9310)などがその代表例として挙げられます。
水深拡張や埠頭建設など港の「構造的問題」解決に関与する港湾土木では、五洋建設(1893)、東亜建設工業(1885)、海洋土木大手の東洋建設を買収した大成建設(1801)、不動テトラ(1813)、東洋埠頭(9351)などの名前が出てきます。
港湾ロジスティクスの強化によってメリットを受ける企業群も、投資魅力度は増すはずです。具体的には、日本郵船(9101)、商船三井(9104)、川崎汽船(9107)といった海運会社、NIPPON EXPRESSホールディングス(9147)、福山通運(9075)、SGホールディングス(9143)といった陸運会社などです。これらの企業は物流企業であると同時に、強力な物流システムを有しています。その仕組みが、ロジスティクスの強化にも寄与すると予想します。
