日経平均は引き続き、底堅く推移しています。総選挙の行方は、かなり市場に織り込まれている印象です。総選挙後は政策加速などへの期待がむしろ高まるのではないかと感じています。一方で、直近では金利と為替の変動がリスク要因として急浮上してきました。きっかけは財政悪化懸念の台頭でした。足元はなんとか円安・金利高を抑え込んでいる印象ですが、まだまだ脆いとも感じています。
当面は「日本版トラスショック」への懸念が取り沙汰されることもあるでしょう。米国ではプライベートクレジット(ファンド融資)市場の縮小を懸念する声も出始めています。リーマンショック経験者としては、ややキナ臭さを感じてしまいます。期待値が膨らむ中、波乱の兆しにも十分に注意を払っておきたいところです。
2050年には世界全体が高齢社会へ
さて、今回は「長寿経済(ロンジェビティ・エコノミー:Longevity Economy)」をテーマに取り上げてみましょう。この「長寿経済」は、現時点では明確な定義がまだ定まっていないようです。ここでは、文字どおり高齢者人口の増加によって生まれる経済活動を指すものとお考えください。
実は人々の寿命が延伸する一方、出生率は世界の多くの国・地域で低下傾向にあるため、人口構成は世界的に高齢化が進んでいます。国連や世銀の調査によると、世界人口に占める老年人口(65歳以上)は2024年時点で10.2%でしたが、これが2050年には16%程度まで上昇すると予測されています。一般に、総人口に占める65歳以上の割合が14%を超えると「高齢社会」と定義されます。予測では、2050年には世界全体が高齢社会になるということです。
地域別には、特に欧州や中国といった主要国で、高齢化が急速に進行する見通しになっています。中でも日本はそのトップランナーという立ち位置にあり、1995年に早くも高齢社会となり、2024年時点で人口に占める老年人口割合は29.8%にも達しました。これが2050年には4割程度まで上昇すると試算されています。巷間よく聞く「少子高齢化」が、いかにすさまじいものかがご理解いただけるでしょう。
従来はこの高齢社会が「人口オーナス(生産活動の停滞や社会保障費の増加による経済活動の減衰)」として、マイナスに捉えられてきました。
「波平世代」のアイドルが活躍する現在、「抗老化」意識が生み出す巨大需要
これに対し、長寿経済という概念は、逆転の発想にあると言えるかもしれません。高齢者増加による経済的メリットもあるではないか、というわけです。様々な国際機関が、このメリットに言及し始めていますが、ここでは「元気な高齢者」を念頭に、特に注目したい3つの経済的メリットを挙げます。
1.健康・美容にかかわる抗老化ビジネスの発展
まずは、医薬品や健康食品、トレーニング、美容などにかかわる抗老化(アンチエイジング)ビジネスです。実際のところ、例えば65歳は既に老年に分類されますが、世の中の65歳にはまだまだ現役という印象の方が少なくありません。極端な例ですが、50歳を超えても若々しさを失っていない男性アイドルも多く、なんと彼らは『サザエさん』の磯野波平さんの設定年齢とほぼ同じです。『サザエさん』は終戦後すぐに連載が始まりました。それから80年が経ち、高齢化は確かに進みました。同時に、かつて以上に抗老化が浸透していることも容易に見て取れます。これは、個々人の抗老化への取り組みを今後も後押しする効果があるでしょう。今後、老年人口が増加すれば、抗老化に取り組もうという意欲が、さらに市場を発展させることにもつながると予想します。
2.趣味産業など、楽しいことへの投資
エンターテインメントなど趣味産業も重要でしょう。一般的に、高齢者は若い世代に比べてそこまで消費意欲が高いわけではありませんが、その分、好きなこと、楽しいことには惜しまずお金を投じる傾向があるように感じます。楽器演奏や推し活、観劇、絵画、陶芸や旅など、仕事の引退を機に挑戦する方も多いと聞きます。長い人生経験や深い造詣、潤沢な予算などを背景に、若い世代とはまた違った楽しみ方で深掘りできるということではないでしょうか。
3. 「重要な最前線戦力」としてのシニア雇用
3つ目は、老年人口を「生産人口と捉え直す」ことを前提とした人材活用ビジネスです。パターン化できる領域はAIなどによる省人化が加速するのでしょうが、ベテランならではの活躍余地はその分むしろ付加価値が高まっているように思えます。もちろん、高齢者自身にもDXやAIを使いこなすための学び直しや謙虚にアップデートする姿勢は必要です。そのうえで、作業中心という印象のあるシニア雇用とは一線を画し、「重要な最前線戦力」として見直される可能性は十分あるでしょう。当然、それは高齢者自身の社会的満足感を引き上げ、抗老化にも資するはずです。これらの潜在市場の大きさは過小評価すべきではないでしょう。
もちろん、長寿経済ではど真ん中となる介護関連などが期待される領域であることに疑いの余地はありません。
抗老化から趣味、人材まで。長寿経済を牽引する企業群
では、株式投資の観点からは、どのような企業が考えられるでしょうか。
抗老化ビジネスでは、成人病の予防・治療につながる老化細胞除去・若返りなどの研究に関連する企業群として、アステラス製薬(4503)、中外製薬(4519)、塩野義製薬(4507)などの製薬会社が挙げられます。さらに、ネムノキ由来の成分が老化細胞を除去することを実証し、特許を取得した江崎グリコ(2206)、長寿遺伝子の発現増加を確認した森永製菓(2201)などに加え、コーセーホールディングス(4922)、日清製粉グループ本社(2002)、帝人(3401)などもエイジング研究への取り組みが知られています。なお、2024年から2025年にかけて抗肥満薬が話題となり、ノボ・ノルディスク[NVO]、イーライ・リリー[LLY]などの企業も注目されました。
趣味産業では、映画・観劇・楽器・スポーツなどの領域でソニーグループ(6758)、松竹(9601)、ヤマハ(7951)、ローランド(7944)、河合楽器製作所(7952)、ゼット(8135)、アシックス(7936)、シマノ(7309)、美津濃(ミズノ)(8022)、ヨネックス(7906)、ゴールドウイン(8111)などが挙げられます。
人材活用では特に高度専門領域に強みを持つジェイエイシーリクルートメント(2124)、ビジョナル(4194)などが注目企業として挙げられるでしょう。
