2025年10月31日(金)8:30発表
日本 東京都区部消費者物価指数2025年10月分速報
【1】結果:東京コアCPIは前年同月比2.8%上昇 前月から伸び加速
2025年10月の東京都区部消費者物価指数(以下、東京CPI)は、ヘッドラインの総合指数、コア指標である生鮮食品を除く総合指数、コアコアCPIと称される生鮮食品・エネルギー除く総合指数は、3指数そろって市場予想を上回る前年同月比2.8%上昇となりました(図表1)。
食料品など、ここまでの伸びをけん引していた品目に伸びの鈍化がみられた一方で、水道料や家庭用耐久財、宿泊料などに上昇がみられました。コアコアCPIと他2指数が同じ伸び率であることから、変動性の高い品目以外でのインフレ加速がうかがえます(図表2)。
【2】内容・注目点:サービスインフレの底堅さがうかがえる
東京都区部のサービスCPIは、宿泊料や習い事などの月謝類、携帯電話通信料などが上昇に寄与し、前年同月比1.6%上昇となりました(図表3)。9月は東京都特有の保育料無償化の影響から伸びの鈍化がみられましたが、10月は伸びが加速しサービスのインフレ基調が継続していることがうかがえます。
サービスの中でもより賃金動向の観点で注目される一般サービス(※)は同2.4%上昇(図表4、水色)と、0.1%ポイント伸びが上昇しました。それ以外のサービスや賃金関連の指標を見ても、企業向けサービス価格指数(図表4、黒)は底打ち感があり、再び前年同月比3%台での推移が確認されます。総じてみれば、サービスのインフレ基調は底堅いものと判断されるでしょう。
(※対象には学校給食や、電車運賃などで構成される「公共サービス」があります)
【3】所感:日銀は2026年の賃上げを重視、利上げは慎重か
昨日10月30日に日銀の金融政策決定会合が実施され、展望レポートが公表されました。日銀の植田総裁は、経済・物価は審議委員間の見通しに、概ね沿って推移していると評価し、現時点の注目点は米国を中心とした海外経済の動向と、国内における2026年度春闘賃上げ動向にあると説明しました。市場では次回の利上げ時期を探る中で、賃上げモメンタムの確認を重視しているスタンスであり、想定よりもハト派的であった印象です。植田総裁の会見を素直に受け止めるならば、春闘の初動(1次回答など)を待っての利上げが予想されます。
一方で、足元の米ドル/円相場が懸念材料で、過度な円安は再びコストプッシュ型インフレにつながる可能性があり、これが直接の利上げ材料とは説明されることは考えられませんが、早期利上げのインセンティブになると思われます。
マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 山口 慧太
