2つの報道が示した高市総理の為替・金利観

2月25日付の毎日新聞によると、16日に行われた植田日銀総裁との会談で、高市総理が追加利上げに対して難色を示していたという。高市総理は、2024年の自民党総裁選挙中に、「今金利を上げるのはアホやと思う」と発言したことなどから、利上げには慎重との見方が強かったが、上述の植田総裁に対する姿勢が事実なら、今も金融政策についての考え方は変わっていない可能性が高いのではないか。

また同じく25日付の日経新聞によると、1月23日に米通貨当局が行った円安けん制のための「レートチェック」は日本からの要請ではなく、ベッセント米財務長官が主導したものだったという。これが事実なら、160円に迫った米ドル高・円安は、日本以上に米国が強く懸念していた可能性がありそうだ。

利上げ反対で通貨安容認の姿勢変わらない可能性

この報道が事実かもしれないと感じさせるのは、「レートチェック」をきっかけに一時152円台まで米ドル安・円高となった為替相場が、再び155円台まで米ドル高・円安に戻った際に、高市総理の「ホクホク発言」が飛び出したためである。1月31日、高市総理は「円安だから悪いと言われるが、輸出産業にとっては大チャンス。外為特会の運用もホクホク状態だ」と発言した。

もともと日銀による大胆な金融緩和とそれを受けた円安を容認することでデフレからの脱却を目指したアベノミクスの継承を強く主張してきた高市総理は、円安容認派との見方が強かった。この「ホクホク発言」により、それが今も変わりない可能性が再確認されたわけだ。その上で、上述の日経新聞の報道が事実なら、米ドル高・円安が160円に迫った局面でも強い危機感がなかった可能性もありそうだ。

ベッセント長官「高市首相はトラスかメイになるのか」

通貨安を好み、中央銀行の利上げに対して露骨に政治介入する姿勢を示すのはトランプ米大統領のスタイルとしてよく知られているが、高市総理の為替や金利への姿勢はトランプスタイルとかなり似ていると言ってもよいのではないか。

このトランプ米大統領の為替や金融政策に対する発言は、時に株価急落など金融市場を不安定化させることがあった。そのたびに沈静化するべく動いたのはベッセント財務長官だとされることが多かった。

2月23日付の日経新聞によると、ベッセント財務長官は、1月下旬にスイス・ダボスで片山財務相と非公式会談を行った際に、「高市首相はこのままではトラスになるか、メイになってしまうのではないか」との考え方を伝えたという。

日米トップリーダーの暴走をベッセント長官が止める奇妙な構図

2人とも英国の女性の首相経験者だが、前者は財源が曖昧なままで減税策を発表し、ポンド、金利、株価の「英国トリプル安」を招いた「トラス・ショック」を起こしたことで知られている。そして後者のメイ氏は、「高支持率を頼みに、任期満了までしないという約束を破って総選挙に打って出たが、その後人気が急失速して敗北した」(同記事)。

その2人に高市総理を重ねたのは、ベッセント氏の高市総理に対する強い不安感を示しているだろう。その上ですでに見てきたように、円安阻止もベッセント氏が主導した可能性があったというわけだ。

以上のように見ると、日米のトップリーダーによる危うい為替・金利観が金融市場を不安定化する局面を、ベッセント財務長官がほぼ一人で火消し役を担っているというやや奇妙な構図が展開している可能性がある。

【図表】米ドル/円の日足チャート(2025年12月)
出所:マネックストレーダーFX