2026年2月11日(水)日本時間22:30発表
米国 2026年1月雇用統計、他
【1】結果:雇用者数、失業率ともに前月から改善
2026年1月の非農業部門雇用者数は前月比13万人増と市場予想(6.5万人増)を上回りました。また失業率は4.3%と前回(2025年12月)から0.1%ポイント低下し、労働市場は改善傾向がみられました。
もっとも、中期的なトレンドでは雇用者数の下落トレンドがうかがえます(図表1-1)。今回の雇用統計では年次改定も発表され、2025年通年の非農業部門雇用者数は18.1万人増と、従来の58.4万人増から下方修正されました。月平均では、1ヶ月当たり1.5万人増の水準であり、やはり雇用の減速基調が示唆されます。
内訳をみると、2026年1月は医療・教育セクターの雇用者増が全体の伸びをけん引しました(図表1-2)。製造業もプラスに寄与した一方で、政府部門や医療・教育を除いたサービス部門は減少しており、雇用者の伸びも一部のセクターに偏りがあるのが現状です。
失業率は小数点以下2位までの数値では4.28%と前回から0.1%ポイント低下しました(図表2)。雇用者の増加が寄与し、労働参加率、就業率も小幅に改善しています。
【2】内容・注目点:AIによる労働代替はすでに見え始めている
2026年1月の雇用データは市場予想よりも上振れ、ポジティブサプライズとなりました。一方で、労働市場がそれほど悪くないため、FRB(米連邦準備制度理事会)の次回利下げが遠のくとの見方も浮上しています。利下げについては、次期FRB議長が以前はタカ派的であったとされるウォーシュ氏が就任見込みであることも、市場が早期の追加利下げに懐疑的となる理由の1つにあげられます。
一方で、今回のデータは労働環境の悪化を免れたにすぎず、年次改定からも示唆されている通り、弱さをはらむものと考えています。また昨今では人工知能(AI)による労働代替が唱えられており、先々ではそれによるレイオフや採用縮小が予想されます。実際には、2026年に入ってからわずか数ヶ月の間に多くの企業がレイオフなどの人員削減を発表しており、なかでもアマゾン・ドットコム[AMZN]やマスターカード[MA]などがAIを理由とした人員削減を発表するなど、その兆候はすでに見え始めています。
AIによる代替は中長期的な労働市場の構造変化に寄与するとされていますが、図表3からもわかるように短期的にも一定程度影響すると考えられます。それもあって先行きの求人数は伸び悩むと想定しています。
図表4は中小企業の企業経営者による未充足求人割合(公開している求人における埋まらない求人数の割合)と失業者1人あたりの求人数を比較したもので、青線が先行していることがグラフから読み取れます。未充足求人割合は一時期よりも低下していることがわかりますが、これは企業サイドから見れば一時期比で採用難の傾向が改善されている状況といえます(もしくは新規採用を増やす必要がない状況といえます)。
一方で、失業者から見れば1人あたりの求人数が低下傾向であるということは、就業の難しさに直結します。求人と失業者の比率において失業者のほうが多い状況では、失業者同士の競争が発生し、失業期間が長引くことが懸念されるでしょう。今回のデータでは労働市場の改善がうかがえましたが、ここ数年では失業者にとっては就業しづらい環境であり、労働市場は一定の弱さをはらんでいると考えられます。
【3】所感:米国は経済も堅調だが、労働市場は変曲点にある可能性からFRBは雇用にフォーカスすべき
FRBの利下げタイミングが注目されますが、現状の金融環境は中立~緩和的な水準にあると想定しており、そのほかの経済動向を見ても次回利下げがすぐに必要といったわけではないでしょう。米経済も底堅く推移しており、実際にアトランタ連銀のGDPナウを確認すると2025年の10-12月期も前期比年率3.7%成長(2026年2月12日執筆時点)と相応の経済成長が見込まれています。
とはいえ、足元の局面では、AIによる生産性向上などにより、従来とはスピード感が異なり、それによって労働市場は変曲点ともいえる局面であると考えられ、経済成長と雇用の伸びが乖離する可能性が意識されます。そのため、経済の強さ以上にFRBは労働市場にフォーカスしていくべきものと考えています。
マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 山口 慧太
