不透明感が長引き、ボラティリティが高まる可能性

・マーケットは安定を欠く状況である。メディアで不確実性がどれだけ取り上げられているかという「経済政策不確実性指数」とVIX指数は連動している。過去データを見ると不確実性は上昇した場合にはすぐに下落することはなく、不透明感が長引き、ボラティリティが高まる状況が続くことのほうが多い。

・NY連銀から発表されている米GDP成長率は、上振れ・下振れのあったコロナ禍を除き、全体的には、予想を上回る成長が続いてきた。今後は収束していき、潜在成長に向かっていけるのではないか。直近、アトランタ連銀から発表されているGDPナウでは関税適用前の輸入の駆け込み需要によって1月―3月についてマイナス成長が予想されているが、まだ3月上旬の段階のため、今後変化していく可能性があるだろう。

・企業の業績予想は、米国株は高すぎる予想が徐々に下がってきている状況。

春先に向けて金利低下圧力が見込まれる

・経済指標が予想よりよいか、悪いかという経済サプライズ指数は、トランプ氏の米大統領就任が決定した2024年11月にピークをつけた。11月以降の経済指標は予想を下回る状況となっていた。米10年金利は2025年1月にピークをつけている。過去データをみても2ヶ月程度ピークはずれる。そのため、春先に向けて金利低下圧力が見込まれるのではないか。

・現状の環境では、市場が織り込むインフレ期待は上がらずにはいられないのではないか。ブレークイーブンインフレ率はFRBへの期待を表すものであり、最近のサンフランシスコ連銀の調査結果によるとエコノミストや機関投資家のFRBに対する期待や信任が高まっている。ブレークイーブンインフレ率は原油とともに景気動向に左右される部分で、今後どのぐらい鈍化していくのかが重要なポイント。債券投資という観点では、キャピタルゲインという意味で期待される。

・米国がリセッションという状態までいくかというと、それを織り込む必要はないだろう。米国では、長期で利上げをしてきているが利払い負担があまりない状況であり、企業や家計のバランスシートは非常に健全な状況で、金融引き締め効果はそれほど出ていないとも考えられる。一方で今後金融引き締め効果が出てくる可能性もある。

米国株式は過度に売られる可能性に備え、買い余力を残すことが大切

・マーケット全体、特に株式市場は不透明感とともに歩んでいく必要がある。景気の鈍化を織り込む中で、債券投資は分散の対象として、投資妙味があることが観察される。

・2024年の年末にかけて、株式市場は盛り上がっており現金比率の割合が過去15年来の低さで、株式投資の割合が歴史的にも高い状況だった。相場変動とともに過度に売られる可能性がありうる部分は注意したい。フローが経済の実体以上に動く可能性があるため、買い余力を残しておくことが大切。

3月3日付【マクロ経済動向3月】米国マクロ環境アップデート:相場変動が増すことを想定しておくも合わせてお読みください。