材料目白押しの1週間

今週は日米中銀会合、決算発表の佳境、そして米雇用統計と材料目白押しの1週間だ。マーケットは大幅下落を経てバリュエーション面もテクニカル面も調整感はじゅうぶんにある。自律反発の素地が整うなか、ここで出てくる材料にどのように反応するか、この夏いちばんの重要局面である。

日銀金融政策決定会合とFOMC後のシナリオ

まず30~31日に日銀金融政策決定会合が、8月1日に米連邦公開市場委員会(FOMC)が開催される。特に注目は日銀金融政策決定会合だ。政府・与党内から利上げをめぐる発言が相次いだこともあって市場では、日銀が早期の利上げに踏み切るという観測も広がっているが、今回の金融政策決定会合で、国債買い入れの減額計画と同時に追加利上げを決める可能性は低いと思う。今回は国債買い入れの減額計画を決め、その内容をていねいに市場に刷り込ませることに注力するだろう。

今後1~2年程度の国債買い入れの減額計画について、植田総裁は6月会合後の記者会見で、「減額する以上、相応の規模となる」と明言した。総裁は同時に「予見可能な形で減額していく」とも述べ、債券市場参加者からも意見を聴取するなど対話姿勢を明確にしている。

減額に関するメインシナリオは、現在の月間6兆円の買い入れ額を5兆円に減額し、その後は四半期ごとに購入を縮小して2年後に月間3兆円まで圧縮するというものだ。

今会合では「経済・物価情勢の展望(展望レポート)」も公表されるが物価見通しに大きな修正はないだろう。今回、利上げ見送りと上記の減額計画が発表されれば市場の想定内であり、国内の長期金利と株価は小動きとなるだろう。ドル円は追加利上げの思惑で円高に振れていた分、いったん円安で反応すると思われる。

FOMCは現状維持の見通しだが、米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長の会合後の記者会見に注目だ。パウエル議長は9月会合での利下げに向けた方針を明確に示すだろう。そうなると、日銀会合で円安に振れたドル円はすぐに揺り戻しで円高に「いってこい」となるシナリオも頭に入れておきたい。

佳境の日米決算発表と米国経済指標発表に注目

決算発表も佳境を迎える。国内では29日にファナック(6954)、30日にTDK(6762)や野村ホールディングス(8604)、31日に日立製作所(6501)やアドバンテスト(6857)、第一三共(4568)、8月1日にトヨタ自動車(7203)や三菱UFJフィナンシャル・グループ(8306)、三菱商事(8058)などが決算を発表する。日本以上に米国企業の決算が注目される。7月30日にマイクロソフト[MSFT]、31日にメタ・プラットフォームズ[META]、クアルコム[QCOM]、8月1日にアップル[AAPL]、アマゾン・ドット・コム[AMZN]など、ハイテク大手の決算が集中するからだ。今回の大幅下落のきっかけのひとつとなったのが、テスラ[TSLA]やアルファベット[GOOGL]の業績に対する失望だっただけに、その悪い流れを断ち切れるか、今週のビッグ・テックの決算には市場の注目が大いに集まるところだ。

米国の経済指標も重要なものが相次ぐ。30日に6月の米雇用動態調査(JOLTS)求人件数、31日に7月のADP雇用者数、1日に7月のISM製造業景気指数、2日に7月の雇用統計が発表になる。前回6月の雇用統計はNFP(非農業部門雇用者数)が前月比20.6万人増と、市場予想を上回る伸びとなったが、5月分、4月分ともに大きく下方修正され、直近3ヶ月平均で17.7万人と2021年1月以来の低水準となったことから労働市場の過熱感の払しょくが示されたものと市場は受け止めた。今回も同様の傾向が続くだろう。そうであれば利下げ期待が高まり米国株にはポジティブだがドルが売られ円高が進むと日本株には逆風となるだけに、「統計の内容+市場の反応」のバランスが焦点である。

予想レンジは3万7500円~3万9000円とする。