リスク資産のパフォーマンスは堅調

2024年も6ヶ月が過ぎました。今年は選挙イヤーと言われ、例年よりも政治体制変化による経済への影響や相場変動が警戒されるべき年といえますが、以下の通りリスク資産のパフォーマンスは堅調です。

【図表1】主要資産1-6月リターン%(ドル建て、国内資産は円建てリターン)
出所:Bloomberg

株式市場は世界的に堅調で、リターンの源泉が業績(EPS)とバリュエーション(PER)から同程度の寄与となっていますが、日本株はEPSの寄与が高くなっております。債券は金利上昇の影響によるマイナスをハイイールドではクレジットスプレッドのタイト化によってプラスリターンが実現しています。オルタナティブ資産ではREIT系資産が金利上昇で不振となる一方、コモディティ関連は堅調で特に原油や金は大きく上昇しました。

ヘッジファンド関連のパフォーマンスは例年比としては良好

その他の投資としてヘッジファンド関連のパフォーマンスを見ると以下の通りです。データ取得の関係上5月末までのデータで米国株(S&P500)と比較していますが、米国株にはパフォーマンスで劣るものの、例年比のパフォーマンスとしては良好な半年といえます。

【図表2】ヘッジファンドの戦略別パフォーマンス%
出所:Bloomberg。同社が戦略ごとにまとめ平均化した数値

投資家の旺盛なリスクテイク姿勢によってリスク資産が堅調ながらリスク回避資産といわれる金も堅調であり、潤沢な流動性が資産運用に向かっているようです。

物色の狭い相場付きは通常ではなく、長続きしない可能性

なお、年前半と年後半の関係を米国株で確認すると以下の青で示される通り関連性はみられません。しかし、大統領選挙年に限って確認すると(橙の点になります)、年前半がプラスであれば大体の年で年後半もプラスとなっています。

【図表3】S&P500指数の年前半と年後半のパフォーマンスの関係
出所:Bloomberg

このように過去の関係では堅調な地合いが期待される一方、現状は過去と大きく異なる局面にあります。それは株高ながら物色が一部の銘柄に偏っており、広がりを見せていない点です。バブル期に似た物色状況は警戒すべき点として認識されるとともに、景気がソフトランディングとなれば物色の広がりを期待してよいでしょう。どちらにしても現状の物色の狭い相場付きは通常ではなく、長続きしない可能性に注意すべきでしょう。

【図表4】S&P500構成銘柄のうち指数をアウトパフォームした企業の割合
出所:Bloomberg、2024年は年初来半年で計測

米国でいつ利下げが始まるか/日本の利上げ開始タイミングの判断材料とは

2024年前半は米国の金融政策見通しが大きく振れました。2024年末までの政策金利変更回数の市場予想を見ると、2023年の10月時点の2回利下げ予想から2024年初には6回以上の利下げにまで修正されたものの、その後3ヶ月で予想は2回を下回るまでに修正されました。

利下げではなく、利上げもあるのでは?との見方も出てくる中で、その間10年金利も予想に連動する形で5%⇒4%⇒4.5%と変動しましたが、足元概ね次の一手としての利下げという見方が固まり、後は「利下げがいつか?」をデータとともに確認する段階にきています。

【図表5】市場の2024年末までの米国の利下げ回数予想と連動する米10年金利
出所:Bloomberg

次に金利市場との連動性の高さが言われる通貨の動きを振り返ると、金利水準の高いメキシコやブラジルが軟調であり、為替のリターンと金利のリターンが連動していません。両国では利下げが始まっており、特にブラジルは2023年から断続的な利下げ局面です。

【図表6】年初来各国・地域通貨リターン(対円)
出所:Bloomberg

直近では先進各国でも利下げに舵を切っており、その金融政策のペースが下期の為替を動かす材料の一つとして注目されますが、逆に利上げが期待される日本は上記通貨の中ではブラジルに次ぐ弱い通貨です。GDPでは4四半期連続で消費がマイナスになるなど内需が弱い中で、賃上げはすでに達成されデータ反映を待つだけのなか、果たして消費など経済活動の盛り上がりに波及していくのか、金融政策正常化を占ううえで注目されます。

政策変化への不透明感により、短期的に相場変動をもたらす可能性

そしてもう一つのテーマは冒頭のとおり選挙です。株式市場にとってはいつも経済が大切であり、新興国と違い先進国では選挙によって経済情勢を急変させるような変化は起こりづらいと言えます。2022年に英国でトラス政権の財政拡張策に債券市場が金利上昇で反応して政策修正が迫られたように、市場機能が政策を監視しています。政策変化への不透明感が短期的に相場に変動をもたらすと予想されますが、最終的には経済がどうなるか、米国であればソフトランディングを達成できるのか、その点が一番の注目点であることは変わりません。