グローバル経済の中で米国が相対的な優位性を保つ

米国経済は引き続き堅調な成長を維持しています。1月に国際通貨基金(IMF)が発表した最新の世界経済見通しでは、欧州の成長見通しが下方修正される一方、米国の見通しは再び上方修正されました。このように、グローバル経済の中で米国が相対的な優位性を保っていることが確認されています。

【図表1】世界経済の不均衡:IMFの世界経済見通し
出所:IMF

また、貿易摩擦や地政学的リスクといった不確実性により、各国間の関係性が複雑化しています。このような状況下では、安全資産として米ドルが選好される傾向が続き、結果的に米国が資産運用の中心となる局面が継続しています。

【図表2】政策の不一致:経済政策不確実性指数とドル指数:上昇は不確実性上昇と主要通貨に対するドル高を意味する
出所:Bloombergよりマネックス証券作成

米国企業決算、金融セクターは先行して好調な見通し

足元では、米国企業の決算発表シーズンが本格化しております。金融セクターは先行して好調な見通しが示されていますが、これまで株式市場を牽引してきたハイテク関連は一段と高まる期待に応えられるのか、トランプ政権の政策が追い風となる製造業などのシクリカル銘柄の見通しはどうか。一極集中の物色が変化し、広がりを見せられるか注目されます。

【図表3】業種間の不一致:業種別2025年EPS予想値の変化(13週前=100)
100を下回るのは13週前から下方修正が優位であることを示す。先に決算発表が進む金融業は上方修正が優位となっている。
出所:Bloombergよりマネックス証券作成(2025年1月30日時点)

楽観的な株式市場と悲観的な国債市場

株式市場では消費者センチメントにて株高期待が高まるなど、楽観的なムードが広がっています。一方、債券市場では金利上昇への警戒から、タームプレミアムが上昇しています。

特に懸念される関税は、インフレ上昇が想起されやすく今回も先行して織り込まれる一方、その経済への影響については、前回政権の関税発動時には景気減速を通して金利低下につながったというFRBの見解が示されるなど、単純ではありません。政策の行方は依然として不透明であり、決め打ちの投資戦略には大きなリスクが伴います。

【図表4】資産クラス間の不一致:楽観的な株式市場と悲観的な国債市場
左:コンファレンスボード消費者信頼感・今後一年の株価上昇期待 右:タームプレミアム
出所:Bloombergよりマネックス証券作成

支持政党間で異なるインフレ期待

また、インフレ期待に関しても注目すべき点があります。全体として安定しているものの、共和党支持者はインフレ低下を期待し、民主党支持者はインフレ上昇を懸念するなど、過去に例を見ない意見の不一致が生じています。このような状況では、今後の政策運営がスムーズに進まない可能性も考慮する必要があります。

【図表5】支持政党間の不一致:異なるインフレ期待
出所:Bloombergよりマネックス証券作成

リスクとリターンの最適なバランスを追求する運用を

最後に、不均衡な流動性についてです。米国経済の堅調さのみならず、株価上昇による資産効果が潤沢な流動性を生み出し、更に消費やマーケットにポジティブな影響をもたらします。ただし、その株高の恩恵は富裕層に偏っています。既に純資産に占める株式投資の割合は、過去に無い高水準に達しており、これ以上の増加余地は限定的です。

流動性の拡大が更にリスク資産を押し上げる一方で、その状況はファンダメンタルズと乖離しつつあります。以下の図表はハイイールド債のクレジットスプレッドがリスクオンで買いを集めタイト化する一方、倒産件数の上昇といった経済の脆弱な側面も浮かび上がっています。

【図表6】ファンダメンタルズと乖離するクレジット市場
白:倒産件数(4週合計・移動平均)、青:ハイイールド債スプレッド
出所:Bloomberg

今後何らかのきっかけで資産価格が調整し、流動性が逆流する局面では、レバレッジ等も相まって人気化した割高な資産クラス中心に不安定な動きになること、さらには逆資産効果を通じた経済全体への影響も懸念されます。

多様な不均衡が存在する現状では、例年以上にリスク分散を意識した投資戦略を採用することが重要です。短期的には市場の変化に注意し、また長期的にはポジションの偏りを避けつつ、リスクとリターンの最適なバランスを追求する運用が求められます。