金融政策維持を全員一致で決定、新たなリスク要因は通商政策を巡る不確実性

日本銀行は、本日の金融政策決定会合で、無担保コールレート(オーバーナイト物)を0.5%程度で維持することを決定しました。決定は全員一致で、特段の議論が無かったのか、通常よりもかなり早い時間の政策発表となりました。

声明文では、これまで同様に、景気の緩やかな回復と先行き潜在成長率を上回る成長を見込む点、物価については、賃金と物価の好循環によって「展望レポート」の見通し期間後半には「物価安定の目標」と概ね整合的な水準で推移する、との見方が繰り返されました。また新たにリスク要因として、通商政策等を巡る不確実性の高さが言及されました。

会合結果公表後に株、債券、円が売られるも、植田日銀総裁会見後に円は買い戻される

これらはいずれも市場予想の範囲内と思われますが、3月20日未明に発表されるFOMCを控え日本の休日に当たりポジションを外す動きも相まってか、公表後の市場は株、債券、円が売られる展開となりました。

植田日銀総裁の会見では国内経済への自信を示すとともに、海外発の不確実性については、4月初めにある程度見えるとの発言や、手遅れにならないよう配慮して進める、など正常化に向けたスタンスに変更が感じられなかったことから、円は買い戻されています。

市場予想通り利上げは見送りも、今後の先行きは緩和縮小を示唆

日銀からすると、足元の賃金データや春闘の回答速報、物価について、いずれも「オントラック」の評価を維持できる状況ではあります。今回会合での利上げは予想通り見送られましたが、総裁会見のガイダンスは引き続き先行きの緩和縮小を示唆するものです。

ただし、基調的な物価上昇率は2%を下回る一方、コメを中心とした生活に身近な食料品の価格上昇がインフレ期待を高める中、利上げには慎重な判断が求められます。さらに、国内経済は順調と評価されるものの、海外の不透明感が強まる中で、経済・物価情勢は一層複雑になっています。

そのため、金融政策の運営と市場との対話は難易度を増しています。今後も利上げには相応にデータの確認が求められ、前のめりの姿勢が強い様であれば市場に嫌気される可能性がある点にも注意が必要です。