先日、トランプ大統領がFRBの金融規制担当副議長にボウマン理事を指名しました。バイデン政権で指名されたバー氏の退任で、米国での金融規制緩和への期待が一層高まりつつあります。

これはトランプ氏の強烈なイニシアティブによる米国独自の動きにも見えますが、実は金融規制緩和の流れは昨年頃から、欧州等で先行して始まっています。

例えば、ユーロ圏や英国は、米国ではペンディングになっているBIS最終化の一部延期を既に決めています。また、EUでは、昨年来、増え続ける規制の合理化や重複の解消を進めつつ、各種の報告義務に関しては25%削減(中小企業に対しては最大50%削減)する方向性としています。その他ESGに関連する開示も緩和方向にあります。欧州では、米国との競争を意識して、米国より先行して金融業界の変革に大きく舵を切り始めている印象です。

そうは言っても、そんなに規制を緩和してしまって大丈夫かという不安もあります。ただ、世界の銀行の資本比率はこの数年で大きく改善しており、不良債権比率も今のところ低位で安定しています。米国の銀行倒産件数は2023年の地銀の混乱期を含めても概ね1桁と、過去に比べて圧倒的に少なくなっています。一方で、2016年以降の10年弱で、銀行業界のコンプライアンス部門の仕事量は60%以上増えているというデータもあります。コストと成長のバランスが悪化しつつある、という指摘も理解できるところです。

バーゼル規制が初めて導入されてから約40年、ほぼ一貫して金融規制は厳格化されてきましたが、大きな転換点に差し掛かっています。なかでも、案外、英国やユーロ圏が、米国に先行している印象です。欧州の金融機関は、日本人の投資家には馴染みが薄いのですが、欧州の大手銀行はIT投資にも意欲的であり、今後新たな投資先としても注目していきたいところです。