52週MA、金利差などから考える

52週MAとの関係

米ドル/円は先週にかけ6週連続で52週MA(移動平均線、3月14日現在152.5円)を下回った(図表1参照)。1ヶ月以上と「長く」52週MAを下回る動きは、一時的なものではなく、米ドル/円の下落が複数年続く「トレンド」の可能性が高いことを示している。

【図表1】米ドル/円と52週MA(2000年~)
出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成

ただそうだとしても、一時的にトレンドと逆方向に動くことはある。経験的にはそうした一時的な上昇は52週MAを「大きく」、「長く」上回らない程度で止まる可能性が高い。

この場合の「大きく」とは最大で5%、「長く」とは最長で1ヶ月が目安になる。足下の52週MAは152円半ばなので、それを5%上回った水準は160円という計算になる。ということは、「一時的上昇」でも、それが目一杯起こった場合は、年初来の高値の158円を更新する可能性があるという見通しになるのか。

日米10年債利回り差との関係

158円更新には金利差3.6%以上の再拡大が必要

そこで次に金利差との関係から考えてみよう。2025年に入ってからの米ドル/円と日米10年債利回り差との関係を参考にすると、年初来高値の158円を更新するためには、少なくとも金利差(米ドル優位・円劣位)の3.6%以上への再拡大が必要になりそうだ(図表2参照)。では、そこまでの金利差再拡大は実現が可能なものなのか。

【図表2】米ドル/円と日米10年債利回り差(2025年1月~)
出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成

日米の10年債利回りは、米金利の低下傾向を尻目に日本の金利が大きく上昇することで、2月以降大きくかい離した(図表3参照)。日本の10年債利回りが1.5%前後で高止まりすることを前提にした場合、日米10年債利回りが3.6%以上に拡大するためには、米10年債利回りは5%以上に上昇する必要がある。これは、2023年に記録した2007年以来の水準を更新するという意味になるため、ここに来て米景気の減速も取り沙汰され始めた中ではほぼ無理と考えられる。

【図表3】日米の10年債利回りの推移(2025年1月~)
出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成

では、米10年債利回りが4.5%程度まで上昇しても、日本の10年債利回りが「上がり過ぎ」の反動などで低下することで、日米10年債利回り差が3.6%まで拡大するとした場合、日本の10年債利回りはどの程度までの低下が必要になるかと言えば1%割れとの計算になる。すでに足下で1.5%以上に上昇した日本の10年債利回りが、当面において1%を割れるまで低下するのはさすがに難しいのではないか。

金利差拡大は2.8%にとどまる見通し

日米の10年債利回りは2月以降大きくかい離したものの、基本的には連動しやすい。そこで3月以降の両者の関係を前提に今後の金利差見通しを考えてみると、米10年債利回りが4.4%以上に上昇、それに連れる形で日本の10年債利回りも1.6%以上に上昇するケースが、金利差拡大における最も現実的見通しになりそうだ。しかしこの場合でも金利差拡大は2.8%にとどまる計算だ(図表4参照)。

【図表4】日米の10年債利回りの推移(2025年3月~)
出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成

日米10年債利回り差拡大が当面において最も大きくなるのは、日本の10年債利回りが「上がり過ぎ」の反動で大きく低下する場合だろう。仮に米10年債利回りが4.3%以上で高止まりする中で、日本の10年債利回りが3月以降の最低水準である1.3%程度まで低下したなら、日米10年債利回り差は3%以上に拡大する計算になる。これをこの間の米ドル/円との関係に当てはめると、米ドル/円は151円以上に上昇する見通しになり、金利差拡大との関係で考えた場合、米ドル/円の150円を大きく上回る反発は、簡単ではなさそうだ。