トランプ政権1期目と同じ円高の理由=追加された円高の理由
トランプ政権がスタートした以降の米ドル/円の下落は、基本的に日米金利差(米ドル優位・円劣位)縮小に沿ったものだった(図表1参照)。

金利差縮小は、相対的に低い日本の金利が大きく上昇する一方で、相対的に高い米金利が低下傾向となった中での結果だった(図表2参照)。

このうち前者、日本の金利上昇は事前にほとんど予想されていなかったという意味で「サプライズ」の結果と言えるのではないか。一方で米金利については、事前にトランプ大統領の経済政策なら金利は上昇するとの予想が多かったものの、その予想が外れた結果での金利低下となった。
そもそも、トランプ政権発足後は米ドル高・円安に向かうとの予想が多かったのは、米金利が上昇するとの予想が大前提だっただろう。米金利上昇予想が外れ、それに加えて日本の金利上昇という「サプライズ」も重なったことから、米ドル高・円安どころか、予想を上回る米ドル安・円高となった理由ではないか。
トランプ大統領の政策が、1期目より早く悪材料視された理由
この中で、米金利が上昇予想に反し低下傾向となったことについて、トランプ大統領の矢継ぎ早の関税発動というけん制が、景気の先行きに対する不確実性をもたらしたためとの解説が一般的ではないか。しかし元々、トランプ大統領は関税政策を積極的に展開すると述べており、その意味では極端に意外ではなさそうだが、なぜそれが当初の予想に反し悪材料視されるようになったのか。
確かに、米国株はトランプ政権1期目には開始から約1年は高値更新が続いたのに対し、今回は早々に大きく下落している(図表3参照)。その意味では、トランプ大統領の政策が、1期目より早く悪材料視され、それが当初の予想が外れる形で「米金利低下=米ドル安」となった一因の可能性はある。

「日米金利差縮小=米ドル安・円高」は、トランプ政権1期目と基本的に同じ
トランプ政権1期目は、政権開始後の株価の高値更新を尻目に米金利は低下し、それを受けた日米金利差(米ドル優位・円劣位)縮小で米ドル安・円高となっていた(図表4参照)。

つまり、政権スタート後の「日米金利差縮小=米ドル安・円高」は、政権1期目と基本的に同じであり、今回はそれに加えて政権1期目と異なる米国株の下落や日本の金利上昇というさらに米ドル安・円高を後押しする要因も発生したというのが正しい理解ではないか。
私が言いたいのは、トランプ大統領の政策が予想外に景気の悪化や株安をもたらしかねなくなっているというのが、当初の「米金利上昇=米ドル高・円安」予想がこれまでのところ外れている理由ではなく、元々の「米金利上昇=米ドル高・円安」予想に無理があったのではないか。それに加え、予想外の米国株安、日本の金利上昇という要因も発生したことから、予想以上に米ドル安・円高になったというのが、ここまでの正しい理解ではないかということだ。