テスラ[TSLA]、アルファベット[GOOGL]、マイクロソフト[MSFT]が上昇
先週の株式市場は決算とマクロ指標発表のさなか、ジェットコースターのような展開となりました。マーケットは、企業業績の結果に一喜一憂したのです。先週S&P500は1.63%、ナスダック100は2.31%上昇して1週間を終えました。1週間を通すと先週は総じて予想以上の好決算を受けて上昇したものの、「マグニフィセント・セブン(※)」銘柄の一部は大きく下落しました。
下落した銘柄としては、4月25日(木)のメタ・プラットフォームズ[META]があります。ガイダンスが予想を下回ったことに加え、同社がAIとデータセンターへの支出を拡大し、いわゆる「効率化の年」を終了すると発表したことで株は10%ほど急落しました。
一方、4月23日(火)の引け後には、投資家の期待が低かったテスラ[TSLA]が事前予想を上回る好決算を発表しました。テスラの株価は2023年末から決算発表前日までに42%下落しており、「マグニフィセント・セブン」銘柄のなかで最もパフォーマンスが悪かった銘柄でした。しかし、決算発表の翌日には1日で12%上がりました。
4月25日(木)に決算を発表したアルファベット[GOOGL]、マイクロソフト[MSFT]も市場の予想を上回り、それぞれ1日で10%、1.8%上昇しました。
消費過熱感でも株価上昇のワケ
先週発表された2024年第1四半期のGDP(国内総生産)は1.6%という速報値に多くの人が意表を突かれました。これまでアトランタ連銀のGDPNowモデルを含め、多くの予想がはるかに高い数値だったからです。しかし、これは初回の数字であり、次回のGDP改定でプラスに修正される可能性が高いと考えられます。実際、3月の個人消費支出が予想を上回ったこと、FRB(米連邦準備制度理事会)が好んでいるインフレ指標も市場の予想を上回ったためです。
GDPの次に先週のマーケットが注目したのは、4月26日(金)に発表されたFRBお気に入りのPCE(米個人消費支出)でした。数値が予想を超えたにもかかわらず、この日マーケットは上昇するという不思議な展開となりました。
経済指標は、かなり前からエコノミスト達の予想を集計したコンセンサス予想ができあがり、市場予想という形で一般に知られることになります。今回のPCEはその事前予想を上回ったため、インフレの動向に神経質な環境下、本来であれば市場金利は上昇、株価はどちらかというと下落してもおかしくなかったはずです。それがこの日S&P500は1%、ナスダック100が1.65%上がったのには違和感を覚えました。不思議だなと思い調べてみると次のことがわかりました。
マーケットには、公表されているコンセンサス予想とは別に、「ウィスパー・ナンバー」(囁かされている数字)があります。トレーダー達の間で、なんとなくこうなるのではないかという別の数字が存在するのです。トレーダーは、その予想を参考にして自分の相場観を使いポジションを作るのです。
実は、今回の発表値はそのウィスパー・ナンバーと同じでした。このため、もっと悪い数字が発表され、債券価格の下落(金利は上昇)に賭けていた空売りを得意とするトレーダーは、空売りしていた債券のポジションをもがき苦しむようにショートカバー(空売りを買い戻すこと)せざるを得なかったようなのです。その結果、債券金利は下がり(価格は上昇)、株が上がったのです。もちろん、前日の引け後市場予想を上回る好決算を発表したアルファベットが、この日10%上昇したこともマーケットのサポート材料となりました。
大統領選の年の4月は低調
本稿執筆時点の4月28日時点で、4月のS&P500は2.94%下げ、ナスダック100は2.94%の下落となっています。大統領選挙の年の4月の平均リターンはマイナスであるというアノマリー通りになりそうです。
今週末5月4日(日)はあのウォーレン・バフェット率いるバークシャー・ハサウェイ[BRK.B]の株主総会が開催されます。これを受け、マネックス証券では、「ハッチのバークシャー・ハサウェイ深掘りセミナー」と題して5月10日(金)20時から、ニューヨーク、マンハッタンのロックフェラービルよりYouTubeライブ配信を行います。後半では、今回発表になりましたGAFAM企業の決算発表を中心に今後の米国テクノロジーセクターの見通しについても、現役のプロのファンドマネージャーをお招きし解説します。ぜひご覧ください。
注目される決算発表は、「マグニフィセント・セブン」のアップル[AAPL]、コカコーラ[KO]、肥満治療薬で注目されているイーライリリー・アンド・カンパニー[LLY]などです。
今週の決算発表予定
4月30日(火)スリーエム [MMM]、コカコーラ[KO]、コーニング[GLW]、イートン[ETN]、マーチン・マリエッタ・マテリアルズ[MLM]、パッカー [PCAR]、ペイパル・ホールディングス[PYPL]、モンデリーズ・インターナショナル クラスA[MDLZ]、スターバックス[SBUX]、 デュポン・ド・ヌムール[DD]
5月1日(水)エスティローダー クラスA [EL]、マスターカード クラスA[MA]、エムジーエム・リゾーツ・インターナショナル[MGM]、クアルコム[QCOM]
5月2日(木)カミンズ[CMI]、パーカー・ハニフィン[PH]、バルカン・マテリアルズ[VMC]、アップル
5月3日(金)フルアー[FLR]、ハーシー[HSY]
(※)アップル、マイクロソフト、アルファベット、アマゾン・ドットコム[AMZN]、メタ・プラットフォームズ、エヌビディア[NVDA]、テスラの7銘柄
※5月7日と13日は筆者の都合により、岡元兵八郎の米国株マスターへの道は休載となります。次回の更新は5月20日の予定です。