吉田恒の為替デイリーの記事一覧
チーフ・FXコンサルタントの吉田恒が独自の視点から日々のマーケット情報や注目材料などをお伝えします。
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コロナ禍と「行き過ぎた円安」の関係
米ドル/円は1980年以降5年MAのおおむね±30%の範囲で循環してきた。これは、円安でも円高でも、行き過ぎた動きが拡大すると、逆方向への反作用が強まることが大きいと考えられる。
円安が行き過ぎると、輸出増加やインバウンド拡大で円高圧力が強まる。今回の場合、「コロナ禍」の影響でそのような円高圧力拡大が遅れたことも、行き過ぎた円安が長期化した一因ではないか。
介入当局が意識する米金利とポジション
米ドル/円はこれまで、基本的に米金利と連動してきた。このため米金利上昇局面では米ドル売り介入の効果は限られ、米金利低下局面では効果が大きくなりやすい。
日本の通貨当局でも、介入戦略を考える上で米金利の動向を意識している可能性がある。そしてもう1つ、米ドル買い・円売りへの偏りが大きくなってきた点にも注目している可能性がある。
米ドル高・円安、155円ピークの可能性
10月21日、複数のFOMC関係者の発言などから、米国の政策金利であるFFレート引き上げの最終到達点は5%を大きく上回らないとの見通しとなってきた。
これを米金利と米ドル/円の関係に当てはめると、米ドル高・円安は155円前後で終わるといった見通しになる。
150円に達した円安が一服する時
ついに米ドル高・円安は1990年以来32年ぶりの150円を記録した。日本の通貨当局の米ドル売り介入でも米ドル高を止められないといった見方も多い。
ただここまでの米ドル高は米金利上昇にリードされた面が強い。その意味では、米金利上昇が一服すると、米ドル高・円安も一服する可能性はあるだろう。
【ご質問に回答】円安160円の「条件」と「意味」
最近、「米ドル高・円安はこのまま160円まで続くのか?」というご質問を受けることが増えている。そこで今回は、米ドル高・円安が160円になる「条件」、さらにその「意味」について考えてみる。
介入戦略で参考にしたい過去2回の為替介入
米ドル高・円安が続く中で、日本の通貨当局による米ドル売り・円買い介入への注目も高い。
日本の為替介入戦略を考える上で、2003~2004年、2010~2011年といった過去2回の介入局面は参考になるかもしれない。
新興国通貨高の「謎」を考える
メキシコペソや南アフリカランドなど新興国通貨は対円で上昇傾向が続いている。米金融引き締め局面では、新興国通貨は急落、「通貨危機」になったことも考えると、この新興国通貨高は「謎」でもある。
対米ドルで先進国通貨以上に新興国通貨が選好されている要因に金利水準の高さはありそう。ただ、金利はリスクの裏返しでもある。リスクテークが限界に達すると、新興国通貨の高い利回りも、リスク面として意識される可能性は要注意か。
1990年「160円の円安」を振り返る
米ドルは、ついに1998年の高値である147.6円も上回り、1990年以来、実に32年ぶりの水準まで上昇してきた。
そこで今回は、この32年前、1990年にかけて展開した米ドル高・円安について振り返ってみる。結論的に言うと、今回とはかなり異なる米ドル高・円安だったと言えそうだ。
未だ見えない「米利上げ=米ドル高」の終わり
10月12日、13日発表のPPI、CPIが予想以上となったことで、インフレ対策の米利上げも未だ終わりの見通しが見えなくなっている。
FFレートが年末にかけて4.5%以上に引き上げられるなら、米ドル/円は150円を超える見通しになり、円安阻止介入との攻防も改めて注目されそう。
対円で最初に米ドル売り介入となった理由
日本の通貨当局は、主要国の中で最初に米ドル売り介入に動いたが、それは主要通貨の中でも円に対する米ドル高が「突出」していたということがあっただろう。
ユーロ/米ドルが0.9米ドル割れに向かうなど円以外の通貨に対する米ドル高が一段と進むようなら、G7内で「米ドル高問題」が利害の一致に向かう可能性はありそうだ。
暴落の記憶が強い10月、2022年は?
10月は「暴落の印象が強い月」といった側面があった。必ずしも下がることの多い月ではなかったものの、強烈に下がった記憶のあるタイミングは10月だった。
金融市場において全体的にストレスが溜まっている中で、「不吉な10月」を迎えているということは、少し気になるところではないだろうか。
CPIが目標となった40年前のインフレ退治
40年前の米インフレ局面では、結果的にCPI前年比上昇率がピークの15%程度から10%割れとなってFRBは利上げを終了した。インフレ是正の目標にCPI等の物価上昇率が具体的に意識されていた可能性があった。
今回は、CPI上昇率がいくらまで低下したらFRB利上げは終了となるのか。1年前にパウエルFRB議長が「インフレは一時的」との見解を撤回した5%に注目したい。
ユーロ安と豪ドル安の「差」は何か?
9月FOMCの米利上げ見通し上方修正を受けて、対円では介入警戒感もあったことから、円以外の主要通貨、ユーロや豪ドルに対して米ドル買いが拡大した。
ただユーロ安は、今週に入りFOMC前の水準までほぼ戻した。一方豪ドルはなおFOMC前より豪ドル安となっている。両者の違いは金利差である程度説明できそうだ。
「鳥の目」と「虫の目」で見る円安
遠巻きの「鳥の目」で見た米ドル高・円安は、循環的な限界圏に達しており、いつ終わってもおかしくない段階だろう。
より近づき、「虫の目」で見た米ドル高・円安は、インフレ対策の米利上げとの連動が基本。その意味ではいつ終わってもおかしくない米ドル高・円安が、ついに終わるのは米利上げ終了が目安になりそうだ。
「最後の円売り介入」と類似している今回
今回の米ドル売り・円買いの為替市場介入は、9月に2兆円超もの大規模で実現した。方向は逆の米ドル買い・円売り介入だったものの、前回の「最後の米ドル買い・円売り介入」局面と同じだった。
中間期末対策から始まったなど、両者には共通点が多そうだ。
復活する2015年「黒田シーリング」
2015年6月、黒田総裁の発言をきっかけに米ドル高・円安は125円で終了した。ただこの時、黒田総裁が「円安の限界」の目安としたのは米ドル/円ではなく、円の実質実効レートだった。
そんな「真の黒田シーリング」、円安の限界圏にいよいよ接近してきた可能性がある。
米マイナス成長は3期連続となるのか?
米7~9月GDP予想が下方修正されているようだ。仮に、マイナス成長となると、3四半期連続となり、リセッション入りの可能性が一段と注目されるだろう。
米ドル高・円安は、FRB大幅利上げ見通しが主因と考えられるが、リセッションの現実化はそんな見通し修正の鍵を握ることとなりそうだ。
円とユーロの米金利との関係を再点検
米金利上昇が続く中でも、介入警戒の影響から対円で米ドルが「上げ渋る」結果、米金利との関係では米ドル「下がり過ぎ」懸念が目立ってきた。
一方、介入警戒がない分、円以外の通貨、対ユーロなどで順調に米ドル高値更新となっているように見えるが、実は金利差との関係からは米ドル「上がり過ぎ」気味になっている。
米ドル売り介入と為替差益の実現化
日本の円安阻止介入については、効果が期待できず無駄だといった批判も少なくない。
ただ、日本が円売りの対価としてこれまで取得してきた外貨は、大半が120円以下と最近より大幅に割安な水準で購入したもの。そんな外貨の売却は、結果的に巨額の含み益の実現化であることを考えると、必ずしも無駄でもないだろう。