介護施設の見学を始めたきっかけ
岩手県盛岡市で暮らす母の認知症は、重度まで進行しています。母が最期まで自宅で暮らしたいと言うので、私は東京から通いで遠距離介護を12年以上続けてきました。
しかし昨年、母は自宅の居間で転倒し、左足親指の骨にひびが入りました。これ以上自宅で生活は続けられないかもと思いましたが、幸いにも軽傷であったため、今も自宅で生活を続けられています。
この骨折をきっかけに、またケガをしたり病気になったりすると、自宅での生活が危うくなるかもしれないと思ったため、今年から介護施設の見学に行くようになりました。
知っておきたい介護施設の種類と特徴
介護施設は大きく、公的施設と民間施設とに分かれます。
公的施設の代表格である特別養護老人ホーム(通称、特養)は、日常生活でどの程度介護が必要かを示す要介護度(要支援1・2、要介護1~5、数字が大きいほど介護が重い)が、原則要介護3以上でないと入居できません。
特養は他の施設と比べて費用が比較的安く、看取りまで対応している施設が多く人気です。施設の入居待ちのニュースで取り上げられるのは、主に特養です。入居は先着順ではなく、要介護度や認知症の症状、介護者の状況などを点数化し、合計点数の高い人が優先されます。
母は要介護4で独居、私は遠距離介護を続けていることから、特養の入居待ちがあったとしても、比較的早く入居できると思います。
一方、民間施設の中で認知症ケアに特化しているのがグループホームです。認知症ケアの専門職が配置され、少人数制で家庭的な雰囲気が特徴の施設です。グループホームの入居者は、施設のある地域に住民票があることが条件になっています。
グループホームの見学を優先した理由
私が見学した介護施設は、グループホームでした。特養ではなくグループホームを選んだ理由は、母の介護で長年お世話になっている介護職の皆さんから、「お母さんは特養よりグループホームのほうが合っている」と言われたからです。
介護施設を見学する際の一般的なチェックポイントは、次のとおりです。
・施設全体の雰囲気
・施設スタッフの対応や姿勢
・医療機関との連携体制
・入居者の表情が明るいか
・施設長の運営方針や理念
しかし、わずか1時間の施設見学で、これらすべてを見抜くのは困難です。入居者の表情は日によって変わるかもしれませんし、見学時の良い雰囲気が日常的なものとは限りません。
そこで私は、介護職の皆さんから評判の良い施設を教えてもらって、効率的に見学先を絞りました。盛岡市のグループホームは数十軒ありましたが、いただいた情報を基に4軒に絞って、そのうちの1軒に見学の申込をしました。
施設見学で確認したポイントと月額費用
グループホームを訪問すると、施設の管理者が対応してくれました。施設内を案内してもらいながら、一般的なチェックポイントである部屋や共有スペースの清潔さ、施設の雰囲気、スタッフの対応などを確認しましたが、全体的に良い印象を受けました。
また、現在家族中心で行っている介護やかかりつけ医などに相談している医療を、どこまでグループホームにお願いできるのか、今後も家族のサポートがどのくらい必要かについても聞きました。今後の生活に大きく関わる大切なことなので、その質問に多くの時間を割きました。
施設側からの返答を簡単にまとめると、介護はすべてグループホームが対応し、医療は連携している内科医が対応してくれますが、専門的な医療に関しては家族による通院が必要とのことでした。
私が見学に行った施設の場合、費用は要介護4の場合、食事代やオムツ代など全て含めると月額約18万円かかるそうです。現在も続けている遠距離介護は、交通費を含めて月10万円強なので、グループホームを利用すると介護費用は約1.8倍となります。
現在81歳の母の余命は分かりませんが、祖母が亡くなった90歳まで生きると仮定すると、あと9年介護が必要です。介護費用が1.8倍になれば、現在の母の預貯金だけではやっていけないと思います。
私が母の介護費用を全面的に負担するのは難しいので、グループホームを利用する場合は実家の売却を検討しなければならないかもしれません。
また、見学したグループホームはすでに数十人の待機者がいることもあり、入居申込書はもらいましたが、現時点では提出していません。
施設見学から学んだことと今後の介護方針
施設を見学することにより、今後の介護費用が明確になりました。母は認知症が進行しているとはいえまだ元気なので、介護費用を抑えられる在宅介護を継続するほうが、今は現実的だと再認識できました。
今後も月1ヶ所のペースで他のグループホームの見学を続けて、母に合った施設を見極める目を養っていくつもりです。
急にやってくるかもしれない介護施設への入居の準備を進めつつも、最期まで自宅で暮らしたいと願う母の思いは尊重したいと思っています。いざという時に慌てず、母と私にとってベストな選択ができるよう、これからもじっくり施設見学を続けます。