米国売り?トリプル安懸念か
4月9日にトランプ大統領が報復関税を実施しない国に対し90日間の相互関税停止を発表したことで、下落が続いていた米国株はじめ世界の株式市場が大きくリバウンドしましたが、まだまだ市場では不確実性が高まっている状況が継続しています。10日の米国株市場は反落し、VIX指数は一時31台まで急低下しましたが、再び50台半ばへと反発上昇しており、ボラティリティの高い相場展開が続いています。
為替市場では、米ドル売りが鮮明となってきました。米ドル/円相場に対してだけではなく、対ユーロ、対ポンド、対オセアニア通貨に対しても米ドルが売られています。米国株下落、米ドル安、そして、債券市場では長期ゾーンの金利が上昇しており、米国債も売られています。つまり米国トリプル安、米国売りとなっているのです。
米国の信認低下に歯止めがかけられるか?米金利上昇の行方
トランプ大統領は、報復措置をとらなかった諸外国に対し90日の相互関税発動を停止し、交渉の余地を表明しました。一方で、報復に出た中国に対しては米国への敬意を欠くとして関税を125%に引き上げ、即時発効することも同時に発表しています。米中においては、貿易戦争が激化しているのです。
市場には中国が米国債を大量に売却しているとの観測が広がっています。一部、日本の金融機関による売却との観測もあるようですが、米国への信認低下で米国債保有を減らす動きが世界的に広がっているのだとすれば事態は深刻でしょう。
米国債の売却による価格下落で損失が拡大し、破綻する金融機関が出てくるリスクも警戒されはじめました。この場合、米金利が急騰したとしても、米ドル/円相場は米ドル金利上昇に相関することなく、リスクオフで円高が加速する可能性が否めません。
米国リセッション確率上昇、FRB利下げ加速の可能性
4月9日のBloombergの報道によるとジェイピー・モルガン・チェース[JPM]は、米景気と密接に連動する米株指数が織り込む景気後退確率が、80%近くに上昇したとレポートしています。
米中貿易戦争の激化も背景にありますが、トランプ氏の声明により相互関税の発動は90日延期されたものの、着地点がはっきりしないことには企業による積極的な設備投資は手控えられます。見通しが立てられないとなれば経済活動の縮小から景気が減速し、FRB(米連邦準備制度理事会)は早期の利下げを迫られるとの観測なのでしょう。
米国の政策金利が引き下げられることで日米金利差が縮小していくなら、米ドル/円相場の上昇の可能性は低くなると考えられます。
日米の関税交渉、為替への影響は?
日本と米国の相互関税交渉は、ベッセント財務長官とグリア通商代表部(USTR)代表との間で行われますが、ベッセント財務長官は4月9日、最近の円高について「自然な流れだ」と発言しており、日銀の利上げを支持しています。加藤財務相はこの発言について問われ、「交渉では為替がテーマに成り得る」と発言。さらに、日本銀行の植田総裁は9日、日銀の経済・物価見通しが実現していけば利上げを行う考えを改めて表明しており、利上げスタンスを継続しています。
日米貿易交渉において、米ドル/円相場は円高誘導されるリスクがあると考える金融関係者も少なくありません。米ドル/円相場は年初の高値158円から143円台へとすでに15円近く円高に動いていますが、さらなる円高への警戒が広がっています。