米ドル以上に上昇した高金利通貨

2022年は米ドルが大幅に上昇したが、対円での上昇率で見た場合、その米ドルをさらに上回ったのがメキシコペソだった。2022年の対円での最大上昇率は、米ドルの34%に対しメキシコペソは41%にも達した。

しかもメキシコは代表的な高金利通貨でもある。2023年2月末現在の政策金利は、米国の4.75%に対しメキシコは11%。高い金利と大幅な価格の上昇が重なった2022年のメキシコペソ/円は、「最強の通貨ペア」と言ってもよかっただろう。

そんなメキシコペソ/円も、2022年11月以降、米ドル/円が急落したことに連れた形で、最大で13%程度も下落した。ただ、2023年に入り、特に2月以降米ドル/円の反発が広がると、メキシコペソ/円も上昇が再燃し、あっという間に2022年10月に記録したこの間の高値まで戻ってきた(図表1参照)。まさに「最強通貨」メキシコペソの復活の様相となっている。

【図表1】メキシコペソ/円の推移(2020年1月~)
出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成

米ドル/円も最近にかけて大きく米ドル高・円安に戻したが、まだ2022年10月の米ドル高値は1割程度も下回っている。それに比べると、メキシコペソ/円の反発力の凄まじさが目立つだろう。これにはやはり、米ドルを大きく上回る高い金利の影響が大きいと考えられる。

こうした中で、メキシコペソ/円の90日MA(移動平均線)かい離率はプラス6%以上に拡大してきた(図表2参照)。経験的には、同かい離率がプラス10%以上に拡大すると、短期的な「上がり過ぎ」懸念が高まる。足元ではまだそうした段階には至っていないものの、さらに一段とメキシコペソが上昇するようなら、短期的な「上がり過ぎ」というリスクを警戒する必要が出てくるだろう。

【図表2】メキシコペソ/円の90日MAかい離率(2000年~)
出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成

一方で、5年MAかい離率では、記録的な「上がり過ぎ」警戒域での推移が続いている。同かい離率は、2006年以降で見る限りプラス20%を超えたことがほとんどなかったが、2022年以降は基本的にプラス20%以上で推移し、足元ではさらにプラス30%も超えてきた(図表3参照)。これは、メキシコペソ/円が7円を大きく上回っている最近にかけての状況は、中長期的にはかつてほとんど経験したことのないほどの高値警戒域にある可能性を示している。

【図表3】メキシコペソ/円の5年MAかい離率(2006年~)
出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成

このような中長期的な高値警戒に加え、2月以降の上昇再燃で短期的にも徐々に「上がり過ぎ」懸念が高まりつつあるというのが、最近のメキシコペソの客観評価と言えそうだ。それでも米ドル/円の円安傾向が続く中では、メキシコペソの急落も起こる気配はないものの、円安が一段落した後は、「上がり過ぎ」の反動が大きく入るリスクにも注意が必要になるのではないか。