第1次円売りブームを完結させた「リーマン・ショック」

「恐怖指数」と呼ばれるVIX指数は4月4日に45ポイントまで急騰した。これは2008年10月の「リーマン・ショック」や2020年3月の「コロナ・ショック」にも迫る動きだった(図表1参照)。4月2日にトランプ米大統領が発表した相互関税を受けた世界的な株価暴落という「トランプ・ショック」が、歴史的金融危機である「リーマン・ショック」などに迫るものと受け止められているのではないか。

【図表1】VIX指数の月足チャート(2006年~)
出所:マネックス証券「分析チャート」

2008年の「リーマン・ショック」は、為替市場において大幅な金利差(円劣位)をよりどころとして長く続いていた円売りトレードが完結するきっかけになったという面もあった。ここ数年も同じように大幅な金利差をよりどころに円売りトレードが続いてきたが、それが「トランプ・ショック」をきっかけに転換する可能性も注目される(図表2参照)。

【図表2】CFTC統計の投機筋の円ポジションと日米政策金利差(2005年~)
出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成

「リーマン・ショック」以前の円売りトレードは米ドル/円において、すでに2007年夏で終わっていた。「サブプライム・ショック」をきっかけに米国株が急落し、FRB(米連邦準備制度理事会)が利下げに転じると、米ドル/円も下落トレンドへ転換したためだ(図表3参照)。

【図表3】米ドル/円の推移(2000年~)
出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成

人気だった豪ドル/円も2008年夏頃から下落に転じた

米ドル/円の動きを尻目に、資源国通貨や新興国通貨に対する円売りトレードは2008年にかけて根強い支持を集め続けた。当時は中国を筆頭としたBRICSと呼ばれる新興国の台頭が注目されていた。こうしたことから、資源国、新興国の通貨に対する円売りトレードは引き続き有効であり、とりわけ日本の個人投資家、FXトレーダーの間で人気だったのが豪ドル/円だった。

ただ、その豪ドル/円も2008年夏頃から下落に転じた。きっかけは高騰してきた原油価格が急落に転じたことだった。そうした中で「リーマン・ショック」が起こった。「リーマン・ショック」の最大の下げ相場は2008年10月だったが、豪ドル/円はそれまでの約3ヶ月で100円から50円台への大暴落を演じることとなった(図表4参照)。これにより、長く続いた大幅な金利差をよりどころとした円売りトレードも、ついに完結となった。

【図表4】豪ドル/円の推移(2000年~)
出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成

「トランプ・ショック」が円売りトレードが転換するきっかけになる可能性

2024年7月に161円の米ドル高・円安を記録した背景にも、大幅な金利差をよりどころとした円売りトレードの拡大があった。それは同年8月にかけて、米ドル/円がほんの1ヶ月で約20円の大暴落を演じたことで、一段落した。

ただ、その後トランプ大統領の「復活」による米国株高や米金利上昇期待から、特に日本のFXトレーダーの間ではなお円売りトレードへの根強い支持が続いたようだ。今回の「トランプ・ショック」が、そのような円売りトレードが転換するきっかけになる可能性も注目されるだろう。