株主優待の権利を取得できる企業が1年で一番多い3月は株主優待の最盛期。今回の記事では、マネックス証券が口座開設者を対象に実施した「株主優待と配当金に関する意識調査」で明らかになった株主優待の活用状況、配当金の用途など、今すぐ参考になる個人投資家のリアルな投資行動を紹介します。
アンケートに回答した個人投資家の8割が株主優待銘柄を保有
今回の調査では、36%の個人投資家が株主優待は日本独自の制度であることを知らないということが分かりました。日本独自の制度であるという認知の割合は過去に調査した2024年から変化しておらず、新しく株式投資を始めた個人投資家などには、より認知拡大の余地がありそうです。

上場企業の約4割が株主優待を導入しており、株主優待制度導入企業の数は2024年に過去最高となりました。アンケートに回答した個人投資家のうち、82%が株主優待がもらえる銘柄を保有していました(図表2)。また、79%の個人投資家が「株主優待が投資のモチベーションになる」(図表3)と回答しており、株主優待目当てで銘柄を選んだことのある個人投資家も76%いることから(図表4)、日本の個人投資家にとって、株主優待は投資行動に大きな影響を与えていることが分かります。



食事券・施設利用券などの優待券が人気最上位
株主優待銘柄を保有したことがある個人投資家のうち、最も支持を得た株主優待は食事券・施設利用券などの優待券でした。QUOカードなどの金券と自社製品がそれに続く形となっており、これらの優待を期待して個別銘柄への投資が行われていることがうかがえます。その他では「米」「地域の名産品」などが多く挙がりました。特に「米」という回答は増えており、昨今のコメ不足に関する報道が起因していることが考えられます(図表4)。

配当金の用途、再投資が75%
個別株投資をしている個人投資家のうち、配当金を受け取ったことがあるのは92%(図表6)。配当金をもらえることが、投資を継続する鍵となっていることがうかがえます。また、高配当を理由に銘柄を選んだことのある個人投資家は全体の76%を占めました(図表7)。


個人投資家の75%が受け取った配当金を再投資に回していることが分かりました。生活費などで使ういわゆる「配当金生活」をしている個人投資家は全体の約2割程度です(図表8)。しかし、配当金生活者は年齢が上がるとともに増加しており、資産をしっかり「使う」ことも意識しながら投資をしている個人投資家の行動傾向が見て取れます(図表9)。図表8の配当の用途「その他」という回答のなかには、「使い道を気にしていない」「配当金が少ないので口座内でそのまま」というコメントも多く見受けられました。


株主優待と配当金、「どちらも欲しい」が約6割
株主優待と配当金は「どちらも欲しい」という回答が61%で、「配当金がいい」という投資家が31%と、「株主優待がいい」の5%を大きく引き離しました(図表10)。株主優待はもらえる数量に上限があるため、株式を多く保有する場合は株主優待よりも、持ち株に応じて多く受け取れる配当金の方がありがたい、と感じているのでしょう。
「株主優待を家族用にして、配当金は自分の再投資用にしている」という個人投資家や、「地方在住なので株主優待だと恩恵を受けられる企業が少ない」「自分の生活圏内で活用できる株主優待がない企業は配当金の方がうれしい」というコメントも見受けられました。株主優待には、日常の生活圏が大きく影響していることも分かります。

つなぎ売りの認知度は約4割にとどまる
つなぎ売りとは、保有している株式の値下がりが予想される際に、現物株式を売却せずに信用取引で空売りすることです。価格の変動リスクを抑えて株主優待を取得できる「つなぎ売り」の手法を知っている人は37%にとどまりました。

マネックス証券での人気銘柄TOP10
株主優待銘柄では、高配当銘柄や日常生活で活用できる銘柄が人気
株主優待のある銘柄では、男女ともに配当利回りが高い銘柄が上位にランクインしています(図表12)。女性に人気の銘柄には、東京ディズニーリゾートの1デーパスポートがもらえるオリエンタルランドや、買い物をすると3~7%キャッシュバックの優待がもらえるイオンといった銘柄もランクインしており、生活の延長線で接点がある企業の銘柄保有傾向があることがうかがえます(図表13)。


単元未満株取引では、実績配当利回りが高いものがランクイン
株式の保有数が単元未満で、株主優待を受けられる銘柄があります。マネックス証券の単元未満株取引(ワン株取引)では金券や、幅広い内容で割引を受けられる優待銘柄が選ばれており、実績配当利回りが高いものが多くランクインしました。マネックスグループは2025年3月31日を基準日としてワン株からの株主優待を実施することを発表しており、ワン株での銘柄保有が増加していることが分かりました(図表14)。

日本株ではディフェンシブ・高配当銘柄が、米国株では高配当銘柄とハイテク関連銘柄が人気
日本株の取引では景気の動向に業績が左右されにくいディフェンシブ銘柄や高配当銘柄が多く見られます(図表15)。一方で米国株は高配当もありますが、マグニフィセント・セブンなど、値上がり期待の高いハイテク関連銘柄が多く、日米の市場で投資傾向が異なっていることがうかがえます(図表16)。


■調査概要と回答者の属性
調査方式:インターネット調査
調査対象:マネックス証券口座保有者
回答数: 7,994(うち、日本株(個別株)保有者6,336)
調査期間:2025年3月14日(金)~3月17日(月)