相場の重荷は米利上げ観測と米株市場の需給のゆがみ
先週の日本株市場は、その強さを改めて印象付ける一週間となった。6月5日夜の米雇用統計上振れを受けて米利上げ観測が高まり、SOX指数が10%超急落。その連鎖で週明けの東京市場でも日経平均が2,563円安と今年2番目、史上5番目の下げ幅を記録する波乱となったが、その後の回復ぶりはストラテジーレポート6月12日付け『急落のリスクはハイパースケーラーの過剰投資懸念』でも書いた通り、舌を巻くような強さだった。日経平均は6月3日にザラ場で付けた史上最高値68,786.49円から11日安値までの下落幅6,450.74円に対し、足元では3分の2戻しをクリアしており、押し目買い意欲の強さが改めて確認された一週間であった。
それでも7万円の大台が視野に入りきらないのは、相場の重荷が依然として残っているためである。第一に米利上げ観測、第二にスペースX[SPCX]上場に伴う需給のゆがみである。この二点が今週の相場を読むうえでのカギである。
大きなイベントは日米中央銀行会合だがサプライズは乏しい
今週の大きなイベントは日米の中央銀行会合である。15-16日の日銀金融政策決定会合では政策金利を現行0.75%から1.00%へ引き上げる追加利上げはほぼ確実視されており、市場はすでにこれを織り込んでいる。注目が集まるのは会合後の会見だが、植田総裁が入院中のため内田副総裁が代理で臨むことから、先行きを強く方向づけるタカ派的メッセージは出しにくいとみられる。国債買入れ減額措置を2027年4月以降に停止する方向で調整との報道もあり、これが市場機能や需給への配慮と受け止められれば、長期金利の上昇圧力をある程度抑制する材料となろう。利上げそのものは出尽くしと受け止められやすく、国内金融関連株には目先の達成感が先行する公算が大きい。
16-17日のFOMC(米連邦公開市場委員会)は政策金利の据え置きが想定されるが、ウォーシュ新議長の下での初会合という点が最大の注目点である。会見がハト派かタカ派か、そしてトランプ大統領への忖度の有無が意識される。
先週末に上場したスペースXは、初日に公募価格を約19%上回って引け、時価総額は米国企業で第6位の水準に躍り出た。穏便な初値形成で短期的な株価波乱の懸念は乏しいものの、問題はその後である。MSCIは上場後10営業日、ナスダック100は15営業日で指数に反映する方針とされ、他銘柄の換金売りとアクティブファンドのリバランスが警戒される。その換金対象として真っ先に挙がるのが、ここまで上昇を牽引してきたAI・半導体関連株だ。資金がスペースXへ吸い寄せられる構図は、AI一極集中相場のリスク要因として今週以降も意識しておくべきである。
短期的なAI関連主導のリバウンド展開を想定するが上値追いは慎重に
中東では、トランプ米大統領がイランとの戦闘終結合意が数日以内に最終決定に至るとの見通しを示し、楽観論が広がっている。状況次第では株式市場の一段高につながる余地は大きく、その際は引き続きAI関連株が主導役となろう。先週急落した関連株は短期的にリバウンド狙いの対象とされやすい。ただし、はしごを外された場合の反動と、スペースXのインデックス採用に伴うリバランス本格化を踏まえれば、AI関連の上値追いには慎重な対応が必要だろう。
一方、株主総会の集中日接近は、バリュー株を物色する手掛かりとなりやすい。日銀の利上げを背景に、ネットキャッシュ/時価総額が高くPBR(株価純資産倍率)が低位にとどまるキャッシュリッチ銘柄には、アクティビストによる資産効率改善要求も含めて関心が高まりやすい局面である。加えて、調整一巡感の強いグロース市場の宇宙関連銘柄は、スペースX上場を契機に再び上値追いの姿勢を強める余地があり、プライム市場の宇宙関連への波及も期待できよう。
総括すると、今週は短期的にAI関連主導のリバウンド展開を想定する。日銀利上げとFOMCはいずれもサプライズに乏しく、相場の地合いを大きく崩す材料にはなりにくい。3分の2戻しを達成している日経平均は全値戻し、すなわち再度高値を試しにいく展開もじゅうぶんあり得ると思う。
予想レンジは6万4000円-6万9000円とする。
