「推し活」人口は1400万人、経済規模は3.5兆円
いまや「推し活」は特別な「ハレの日」のような一時的な現象ではなく、私たちの毎日の暮らしの一部として、しっかり根付いています。
長引く物価の上昇によって生活防衛意識が強く働き、家計調査で見られる実質消費支出(物価上昇を加味した消費動向)が大きく落ち込んでも、毎月勤労統計で示される実質賃金の伸びがどれほど抑えられても、「推し活」に振り向けられる資金はびくともしません。
街角景気(景気ウオッチャー調査)で計測される暮らし向きが分岐点とされる「50」のレベルをどれほど下回っていても、好きなアイドルやキャラクター、コンテンツに費やすお金は微動だにしません。
低調な消費活動とは無関係に「推し活」が堅調な理由としては、ファン心理は「感情消費」に左右される点にあるとされています。オタク(コアのファン層)の主要16分野の市場規模は、コロナ禍の2020年→2024年にかけて+50%拡大したとされています。別の調査では「推し」を持つコアのファン層は人口の64.2%に達するそうで、「推し活」人口は1400万人、経済規模は3.5兆円にもなるそうです。
「骨太の方針」にIP(知的財産)やコンテンツが組み込まれる
「推し活」市場に向けて政策面も後押ししようとしています。2026年7月末に高市政権がまとめた「経済財政運営と改革の基本方針2026」、いわゆる「骨太の方針」では、重点的に推進すべき17の戦略分野と62の製品・技術が掲げられ、日本が強みを発揮できる分野としてIP(知的財産)やコンテンツがしっかりと組み込まれました。
「骨太の方針」には、2040年度までに官民合わせて370兆円を超える資金を呼び込むロードマップも作成されています。ゲーム分野では2033年に海外売上高で12兆円を目指します。同様に、アニメは6兆円、マンガも1兆円を目指します。
ゲーム産業は日本のコンテンツ経済の6割を占める大黒柱ですが、規模が大きくなるにつれて開発費が高騰しており、一方で賃金は、競合相手とされるコンサルティングファームやソフト開発会社と比べて低い水準にあります。
同じようにアニメ産業も、日本のコンテンツの海外売上の3割を占めていますが、配信の権利が固定的で、どんなにヒットしても十分な収益を取り込めないという問題を抱えています。アニメ制作会社は海外への積極展開を見すえた大型の投資や長期的な人材の育成に踏み込むことが難しく、ゲームと同様に低賃金に悩んでいます。
海外市場では海賊版の被害も広がっており、映像分野だけで年間2.3兆円もの被害が生じているとの試算もあります。
もはやブームとは言えないほど広がった「推し活」の華やかな表舞台と、その裏側で構造的な悩みを抱えるコンテンツ業界には、これまで以上に政策サイド面での後押しが必要です。高市政権が力強く進めるコンテンツ支援策におおいに期待したいところです。
コアなファンを呼び込む「推し活」銘柄4選
任天堂(7974)
日本を代表するゲーム開発会社。スーパーマリオブラザーズ、トモダチコレクション、ゼルダの伝説、星のカービィ、ピクミン、スプラトゥーンなど大量のIPを有する。データセンター向けに半導体メモリの供給が偏り「Switch2」も値上げを余儀なくされたが、その影響をソフト販売本数の増加で補った。第1四半期は営業利益が前年比2.5倍に拡大。業績面では今期が底となる見込み。来期の反転に期待。
サンリオ(8136)
いまや世界的なキャラクターとなった「ハローキティ」を有するIP企業のトップランナー。シナモロール、リトルツインスターズ、クロミ、ポムポムプリン、マイメロディ、ポチャッコ、タキシードサムなど、多数のキャラクターを育て上げる。ハローキティだけに頼らない企業として成長した。ゲーム開発のような巨額の制作費をかけずとも、文房具、衣料、化粧品、バッグ、食品、ゲームなどほぼ無限のカテゴリーへライセンスを供与できる。利益率も高く業績は今期も絶好調。
バンダイナムコホールディングス(7832)
バンダイとナムコが2005年に経営統合して誕生した。玩具分野では国内トップ。機動戦士ガンダム、ドラゴンボール、ONE PIECE、たまごっち、パックマン、アイドルマスターなど、世代を超えたヒットコンテンツを有するバンダイと、業務用ゲーム機やアミューズメント施設運営に長けたナムコの開発力が強みとなっている。ガンダムであれば、アニメ→ガンプラ→ゲーム→カード→映画→イベント→海外展開のように、同じIPから次々と収益を生み出す事業モデルを確立。2026年6月には渋谷に2,000人規模の多目的ホール「Shibuya LOVEZ(渋谷ラブズ)」を開業し、総合エンタメ企業へと飛躍を図る。
東宝(9602)
映画の興行会社。邦画の配給や興行収入では断トツの実績を誇る。2025年の「国宝」に続いて、この夏も「ブルーロック」「キングダム」「ちいかわ」「名探偵コナン」の映画がヒットした。これまでの「映画館と映画配給が中心で、ヒットすれば高収益、不調なら映画館の跡地を活用した不動産開発で補う」と評されてきたが、コンテンツ企業へと変貌しつつある。長期経営計画「TOHO VISION 2032」では、映画・演劇・不動産に加えてアニメを第4の柱に位置づける。IPの創出、育成、デジタル、海外展開を成長領域としてとらえている。
