テラダイン[TER]は、自動試験装置(Automated Test Equipment:ATE)と先進ロボティクスを中核とする、電子機器テスト・自動化分野のグローバルリーダーです。事業は大きく、半導体テスト(Semiconductor Test)、プロダクトテスト(Product Test)、ロボティクス(Robotics)の3本柱で構成されています。2025年度の売上構成は、半導体テストが79%、プロダクトテストが11%、ロボティクスが10%でした。
自動試験装置(ATE)のパイオニア
自動試験装置(ATE:Automated Test Equipment)とは、半導体製造工程において、製造された半導体が設計どおり正しく動作するかを自動的に検査する装置を指します。
具体的には、シリコンウエハーや完成した半導体チップに電気信号を流し、演算結果や消費電力、動作速度などを確認することで、不良品を発見・除去する役割を担います。検査はウエハー工程(ウエハーテスト)だけでなく、パッケージ後の最終工程(ファイナルテスト)でも行われ、半導体の量産に不可欠な存在です。
このATEという市場を事実上切り拓いたのがテラダインです。同社は、電子機器の量産化が進む将来を見据え、「人手による検査ではエレクトロニクス産業は成長できない」という問題意識のもと、1960年に電子部品検査の自動化を目的として創業されました。当時の電子部品検査は、多くが熟練作業者による手作業に依存しており、品質のばらつきや処理能力の限界が量産化の大きな障壁となっていました。
こうした状況に対し、同社は論理回路を用いた検査装置をいち早く製品化し、さらに1966年にはコンピューターを搭載して検査プロセスを制御する自動検査装置を開発します。これは、今日のATEにつながる画期的な技術でした。これにより、電子部品や半導体の検査は「職人技」から「再現性のある工業プロセス」へと進化し、エレクトロニクス産業の量産時代が本格的に始まったと言えます。
同社はその後60年以上にわたり、ATE分野で技術革新を積み重ねてきました。現在、半導体テスト市場は寡占化が進んでおり、同社は世界トップクラスのシェアを持つ中核プレイヤーとなっています。
ATE市場を寡占する立場~事業構造の転換:モバイルからAIコンピュートへ
現在のATE市場は、アドバンテスト(6857)とテラダインで市場全体の約8割を構成する二強構造となっています。2020年前後には、両社がそれぞれ3割強のシェアを持ち、これにコヒュー[COHU]などの中堅企業が続く構図でしたが、その後の市場再編と技術高度化により、上位2社への集中度が高まったとみられます。特に近年は、AIデータセンター向けの高性能SoC(システム・オン・チップ、CPU/GPU/AIアクセラレータ)やHBM(次世代半導体メモリ、High Bandwidth Memory)といった高付加価値領域が成長の中心となっています。
市場では、アドバンテストが50%以上のシェアを獲得しており、特にHBM向けメモリテスタでは60%超のシェアを握ります。アドバンテストはSoCテスタや周辺機器まで含めた総合力を強みに、メモリテスタで存在感が強く、AIデータセンター投資の拡大によるHBM需要増の追い風を最大限享受する立場にあると言えます。
2025年第4四半期決算発表で判明した構造変化:AI関連売上が拡大
一方、同社に対しては、5Gやスマートフォン向け比率が高く、AIブームの恩恵は間接的という見方がありました。メモリテスタの存在感も相対的に小さく、主戦場はロジック寄りという棲み分けが語られてきました。
ところが今回の決算発表でこの見方は大きく変わりました。AI関連売上が拡大しており、その割合は2025年度第3四半期の45%から、第4四半期には60%超へ上昇しました。次四半期には70%超に達する見通しです。
伸びているのはスマートフォンではなく、AIアクセラレータ、GPU、ネットワークSoCといったAIデータセンターの中核を成すロジック・コンピュート分野(コンピューティング)です。
非メモリ領域でリード
ロジック・コンピュート分野(コンピューティング)の売上高は足元で90%の成長を記録しており、今や半導体テスト部門の最大の収益源となっています。構成を見ると、2023年にはコンピューティングが10%、自動車/産業機器が50%、モバイルが40%でした。2025年現在は、コンピューティングが50%を占め、自動車/産業機器とモバイルがそれぞれ25%となっています。
AIデータセンター向けの高性能SoCは、テストの難易度が極めて高く、高速デジタル、消費電力、並列性、システムレベルテストまで含めた総合的な対応力が求められます。この分野で同社はVIP(垂直統合型)顧客向けの実績が厚く、AIデータセンター向けロジックの主戦場で先行してきた歴史があります。
同社のAIロジック・コンピュート向けテスタのシェアは公式に開示されていませんが、おおむね45~55%程度のシェアを持ち、アドバンテストは30~40%程度と推定されます。なお、同社の資料によると、垂直統合型(VIP)顧客向けのAIコンピュート分野では、約50%という高いシェアを維持していると明示されています。
「デバイスから現場まで」をカバー:AI投資需要を複数レイヤーで享受
現在の同社の最大の特徴は、テスト対象が半導体チップ単体にとどまらない点です。AIアクセラレータやGPU向けのSoCテスト、HBMなどのメモリテスト、サーバー基板向けのプロダクションボードテスト、シリコンフォトニクスやCPO(光電融合)向けの光・電気テスト、データセンター内でのロボット活用など、AI投資の複数レイヤーから需要を取り込める構造を築いています。これは、AIデータセンター投資が拡大すれば、複数の需要が同時発生するということです。実際、同社のAI関連売上は2026年度には70%を超えてくる見通しとなっています。
さらに近年は、AIデータセンターの省電力化・高速化を支えるシリコンフォトニクス(光電融合)分野にも本格参入しました。Quantifi Photonicsの買収を通じて、同社は電気・光を一体で検査できる数少ないテスト企業となり、AIデータセンター向け投資の裾野をさらに広げています。これは、AIデータセンターの省電力化・高速化という中長期テーマと強く結びついています。つまり、AI投資需要の恩恵を直接享受できる絶好の立場にあるということができます。
フィジカルAI関連として、ロボティクス事業に注目:テスタ、ロボットアーム、自動搬送ロボットをセット提案できる稀有な存在
同社は半導体テスタ企業であると同時に、協働ロボット(コボット)分野の世界的リーダーでもあります。同社は2015年に、当時50%以上の世界シェアを誇るUR(ユニバーサルロボット)を買収し、協働ロボット市場においてトップポジションを獲得しました。
協働ロボット業界は、ファナック(日本)(6954)、ABB(スイス)、クーカ(ドイツ)、安川電機(日本)(6506)、そしてURを迎えた同社が複占する市場です。その中で、ATEとロボットを備えるのは同社だけです。
ロボティクス事業は単体でも収益を生みますが、本質的な価値は本業である半導体テスト事業との相乗効果にあります。同社は、URの協働ロボットに加え、自社傘下のMiR(モバイル・インダストリアル・ロボット)が手掛ける自動搬送ロボットを組み合わせることで、テスト工程と搬送工程を一体化したソリューションを提供できます。これは、テスト装置の性能を高めるだけでなく、工場全体の生産性や稼働率を引き上げる効果を持ちます。
テスト装置を購入する際にロボットも同時に導入できるため、顧客にとっては導入負荷が低く、完全無人化に近い生産ラインの構築が現実味を帯びます。フィジカルAIを軸に、半導体製造の現場そのものを変えていく点に、テラダインのロボティクス事業の戦略的な意味があると思います。売上規模は2026年に前年の約3倍に拡大し、黒字化するとの見通しも出されており、停滞期を抜けて成長再加速フェーズに入る可能性が高まっています。
高付加価値モデルへの変化、高いキャッシュ創出力と盤石財務、株主還元を評価
2025年度のEPS(1株あたり利益)は23%成長を記録
業績は好調です。2025年度は13%の増収となり、EPS(1株あたり利益)は23%成長を記録しました。特に第4四半期が強く、売上成長は加速、利益は倍増するという好決算でした。
事業構造が価格競争を受けやすい汎用分野から、AI向けロジック・コンピュートやHBM最終テスト、システムレベルテストといった高付加価値分野へシフトしていることで、利益率が押し上げられているのが印象的でした。見通しについても強気です。2026年第1四半期の売上高は過去最高水準が見込まれており、営業利益率は30%台前半まで改善する見通しです。
フリーキャッシュフローは過去15年プラスで推移
キャッシュフローは良好。過去15年にわたってフリーキャッシュフロー(FCF)はプラスで推移しており、2025年度のFCFは4億5000万ドルとなりました。同社は、成長投資と株主還元を両立させる資本配分方針を取っていますが、株主還元の水準には驚きます。同社は2015年から2025年にかけて、自社株買いと配当を通じて54億ドル以上を株主に還元してきました。これはFCFのほぼ100%に相当します。2025年度には、FCFの174%に相当する7億8500万ドルを株主に還元しました。これは安定したフリーキャッシュフローを継続的に生み出せるからこそできることです。さらに、AI向けロジック・コンピュートなど高付加価値分野の比率が高まったことで、利益率とキャッシュ創出力が底上げされることが期待できると思います。
財務面も健全で、2025年末時点で、現金等は4億4800万ドルを保有していました。一方、有利子負債は2億ドルでした。つまり実質無借金です。自己資本比率は67.0%と高水準で、流動比率は1.8倍と全体として健全な内容です。
数年先の成長を織り込み、株価は上昇
株価は、2025年4月の60ドル台から、足元では260ドルまで上昇してきました。この水準は数年先の姿まで織り込んでいます。売上規模が数年以内に60億ドル超へ拡大し、営業利益率が32~34%程度まで高まることを前提にすれば、現在の株価水準は概ね説明がつきます。
さらに、AIロジック・コンピュート向けを中心とした高付加価値分野の比率が高まり、フリーキャッシュフローの創出力が安定的に維持されるという見方も織り込まれていると考えられます。言い換えると、現在の株価水準は「今の好調な四半期」を評価しているのではありません。AI投資の中枢に近い位置で高い利益率を継続できる企業へ構造転換が完了する、という将来像を先取りした株価と言えます。そのため、今後の決算では売上成長以上に、利益率がこの水準を維持できるかどうかが、株価を左右するポイントになります。
