ウラン採掘を中心に原子燃料サイクル全体に事業を展開
カメコ[CCJ]は、カナダに本社を置く、世界有数のウラン関連企業です。原子燃料サイクル全体に事業を展開しており、ウラン鉱山の運営から燃料加工、原子炉関連事業への投資までを一体的に手がけています。
事業の中心はウラン採掘であり、世界最高品位クラスのシガー・レイク鉱山(保有比率54.5%)、マッカーサー・リバー/キーレイク鉱山(69.8%/83.3%)、カザフスタンのインカイ鉱山(40%)などを主力資産としています。これら主要鉱山の認可生産能力は合計で年間約5,300万ポンドに達し、世界のウラン供給において極めて重要な地位を占めています。2024年における同社のウラン生産量は約2,700万ポンドに達し、世界全体の約17%を占めました。2024年のウラン生産量は世界全体で約1億6000万ポンドとされ、上位6社で78%を占める構図です。同社はこのうちカザフスタン国営のカザトムプロムに次ぐ第2位に位置します。
販売面では、ウランを核燃料に加工し、原子力発電所に直接販売しています。2024年における販売量は3,360万ポンド(lb)/ U3O8(ユー・スリー・オー・エイト)でした。前述の生産量を上回りますが、これは在庫や調達を組み合わせ、電力会社との長期契約を安定的に履行するビジネスモデルによるものです。
燃料サービス事業では、オンタリオ州のブラインド・リバー製錬所(世界最大級の商業用ウラン精製施設)や、カナダ唯一のポート・ホープ転換施設を保有し、燃料加工・部品製造まで対応しています。
さらに同社は、原子炉メーカーのウェスティングハウス・エレクトリック・カンパニー(持分49%)に出資しています。ウェスティングハウスは、世界で439基の商業用原子炉が稼働する原子力ネットワークに関与しており、原子炉の設計・建設だけでなく、燃料供給や保守サービスを通じて長期収益を生み出しています。
このようにカメコは、世界トップクラスのウラン供給力に加え、原子炉分野も展開する総合的な原子力関連企業として、安定性と成長性を兼ね備えた事業構造を構築しています。
強み:「高品位資源による世界有数の供給規模×長期契約×原子力インフラ」による事業基盤
同社の強みは大きく3つあります。
【1】資源の質と規模
同社が保有・運営するシガー・レイク鉱山やマッカーサー・リバー鉱山は、世界でもTier1(最高品位)クラスのウラン鉱山であり、低コストかつ安定した生産が可能です。2024年には2,700万ポンドを生産しましたが、その伸び率は世界全体では13%増だったのに対し、同社は22%の伸びを記録しました。高品位クラスの鉱山は、ウラン価格が回復した局面で早く、確実に生産を引き上げることが可能です。多くのウラン企業は品位が低く、価格が上昇しても採算確保が難しいという制約を抱えていると言います。また、過去のウラン価格低迷期に多くの企業が投資を縮小する中、同社は再稼働を前提に維持管理を続けてきました。その結果、市場環境が改善した際に迅速な増産が可能だったことも、生産量の伸びが市場を上回った勝因となったとみられます。
【2】長期契約を軸とした安定的なビジネスモデル
同社は長期契約を中心に販売を行っています。2024年には生産量を上回る3360万ポンドの販売を実現しています。これは、在庫や調達を柔軟に組み合わせ、契約を確実に履行する運営力の高さを示しています。
【3】燃料サービスと原子炉分野までの一体提供
精製・転換といった燃料サービスに加え、原子炉メーカーであるウェスティングハウスへの出資を通じて、ウラン採掘企業にとどまらない事業構造を構築しました。原発は一度稼働すると数十年にわたり燃料と保守を必要とするため、これは長期的で粘着性の高い収益源となります。
「新設+既存炉の長期収益」
ウェスティングハウスの原子炉技術は、現在、世界で約230基前後の商業用原子炉で採用・運転されています。既存炉の多くは1970~90年代に建設され、現在も運転・燃料供給・保守が継続しています。これに加え、AP1000などの最新炉が中国などで稼働・建設中です。ポイントは、建設済みの230基が、今後も数十年にわたり燃料・保守需要を生み続けることです。同社は、ウェスティングハウスが契約を持つ原子炉について、利益の一部を持分比率に応じて受け取ります。新たに建設される原子炉(AP1000など)が増えるほど、利益が大きく増えていく構造です。
これらを総合すると、「高品位資源による世界有数の供給規模×長期契約×原子力インフラへの関与」という構造になります。この点が、価格変動に左右されやすい他のウラン企業との決定的な違いと言えます。
原子力ルネサンスの中心に位置する企業として注目
世界各国で原子力発電が見直されています。既存原子炉の寿命延長や再稼働、新設計画に加え、小型モジュール炉(SMR)など次世代原子炉の開発も進んでいます。まさに「原子力ルネサンス」と言える状況にあり、ウラン需要は構造的に底堅い状況です。また、エネルギー安全保障の観点からも、原子力は安定電源として再評価されているほか、中長期的には国家安全保障の観点に加え、AIやデータセンターなど電力消費型産業の発展が需要を拡大させることが予想されます。現在31ヶ国が2050年までに原子力発電を3倍にするとしており、IAEA(国際原子力機関)によると、現在、世界で439基の原子炉が稼働しており、63基が建設中です。こうした流れの中、原子炉におけるウランの需要は、2030年までに28%増加し、2040年までに倍増すると予想されています。
一方、過去のウラン価格の低迷により、鉱山の操業停止や投資不足が続いた結果、供給能力は十分に回復していません。既存鉱山では埋蔵量の枯渇が進み、新規開発も遅れています。加えて、地政学リスクや貿易政策、輸送面の問題が供給不安を強めています。こうした状況下、電力会社は長期契約を通じて供給確保を優先する動きが強まり、ウラン生産者にとって有利な事業環境が形成されつつあると言えます。
ウラン市場は、2011年の福島事故以降、原発の停止や廃炉が相次ぎ、「原子力発電は減っていく」という見方が広がりました。その結果、ウラン価格は長い間とても安い水準が続き、電力会社はスポット市場で必要分を調達できていました。望むときにいつでも安く買えていたというわけです。また、本当に原発を長く稼働できるかどうかという不透明感から、長期契約は避けられてきました。
ところが、現在では原発は長く使う前提に変わってきています。とはいえ、ウラン鉱山は掘ればすぐ増産できるというものではなく、開発や再稼働に何年もかかるため、生産能力はすぐに増えません。当面は、稼働中の鉱山、既存在庫、過去に作られた余剰分で需要を賄える見通しですが、数年先~10年以上先に供給不足となる可能性が高いとみられています。
それでも現時点では、電力会社は、将来必要と分かっているのにウランが余っている前提だった昔の慣習で、まだ契約をしていない、という状況です。今後ウラン市場は需給がひっ迫していく中、一気に契約需要が拡大する可能性が高まっていると言えます。
短期的な割安感は乏しいが、中長期的な収益拡大と株主還元の継続を見込む
事業環境の見通しは明るいです。ウラン需要の構造的な拡大と供給制約が同時に進む中、生産者にとって有利な状況になってきています。また原子力発電のウェスティングハウスには、国策による追い風もあります。2025年5月、原子力エネルギーを米国エネルギー計画の重要な要素と定義する大統領令が承認されました。また10月には、米国政府、ウェスティングハウス、ブルックフィールド・アセット・マネジメント[BAM]の間で、少なくとも800億米ドルを投じて米国内の大規模原子力プロジェクトを支援する提携を結びました。ウェスティングハウスのAP1000原子炉技術を活用することが盛り込まれており、同社はウェスティングハウスの株主として、この国策に近い原子力インフラ事業の成長を間接的にではありますが、享受できる構造を手に入れたと言えます。原子炉・燃料・サービスまでをカバーする総合原子力インフラ企業として、今後高まるウラン需要を享受できる能力が高められたと考えられます。
また、成長と株主還元を両立する動きも評価できます。今期9ヶ月間累計の営業キャッシュフローは7億3100万カナダドルと前年からほぼ倍増しました。利益率の改善に加え、ウェスティングハウスからの現金分配が寄与しています。また財務内容も健全で、9月末時点では7億7900万カナダドルの現金を保有し、総負債は約10億カナダドルでした。配当利回りは0.2%と低いですが、今後は長期契約の増加と価格の上昇による貢献も見込まれ、増配継続の可能性も高まっています。
総合すると、現在の株価は短期的な割安感は乏しいものの、中長期の収益拡大を織り込む過程にあると言え、ウランというテーマを中長期で取りに行くための中核銘柄と考えることができると思います。
